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214話:日々の鍛練

「デェリァッ!!セイッ!!」


レヴィの服を買った街、リングスの近くにある小さな森。そこで俺はお金稼ぎの為と自身の体を鍛える為に魔物と対峙していた。


「アキ、ラ…大丈、夫…?」


「問題…!無いッ!!」


狼型の魔物を[黒水(こくすい)]で造り上げた剣で弾き、別の個体に蹴りを入れて吹き飛ばす。


「伸び…ろッ!!」


「───ギャンッ!!」


形の無い水を最大限に活用した方法で、剣を伸ばして魔物の喉を貫く。残り3匹だ。

今の俺には相手の力を消す事も、傷を治す事も出来ない。そしてローザがいないから[皇帝(マジェスティー)]にもなれない。

唯一使えるのがこの[黒水]。可能性が大きい分、練習が切っても切れない。


「ガァァッッ!!」


「ッ…!」


3匹の狼達は1つに固まり、口を大きく開くと炎の球体が作られていく。火球魔法だろうか、本来なら[嫉妬罪(レヴィアタン)]で消す。だが今は使えない。今俺に出来る事で対応しなければならない。


「アキ、ラ…!今、消す───」


「大丈夫だ…!!」


レヴィが火球を消そうとしてくれていたが、俺はそれをやめるように声掛けして新たに[黒水]の壁を作り出す。

その黒水の壁で火球を受け止めた後、その壁の形状を変化させる。


「これで───どうだッ!!」


「ギャインッ…!」


黒水の壁を保ったまま、4つの先端が鋭利に尖った触手のように変え、3匹の狼を貫く。横腹を貫かれた狼達を黒水の触手で持ち上げ、近くの木へと投げ捨てる。


「もう…!限界……ッ」


「アキ、ラ…!」


造り上げた壁と触手、そして剣は形状を保てなくなり液体へと戻り、地面に吸われる。

[黒水]を維持するのはとても難しく、それは造り上げる物が大きく、細かければ細かいほど難しくなっていく。レヴィと契約した事で使えるようになったこの力は魔法に近く遠い存在だ。この力を大きく使えば、俺の力が抜けていく。


「無理、は……してほしく、ない…」


「でも…やらなくちゃ生けて行けない……夢も遠くなってくばかりだ、怠けてなんかいられない」


レヴィに支えられながら立ち上がった俺は、レヴィにお礼を言って離れる。そしてすぐさま黒水で剣を造り出して振るう。


『魔物相手なら兎も角、人間相手には俺はまだまだ弱い……早くメルムに勝てるようにならないと…!』


聖道協会のメルム……アイツは恐らく主人公勢のカモの…筈だ。負けるような事があってはいけないと言うのに…!


「───クソッ…!クソクソクソッ!!はあ…!はあ…!…………ちくしょうッ…」


力任せに振るった剣。負けた事が悔しい。レヴィの力を持ってしても勝てなかった事が恥ずかしい。レヴィに助けられなければ死んでいた事が情けない。


「アキ、ラ……大丈、夫…なの…?」


「…………平気だ。でも俺は弱い……このままじゃメルムは勿論、他の悪魔にも天使にも勝てない。コイツらに勝てなければ主人公達にも勝つなんて夢のまた夢。……だからもう1度、ガチで鍛え直す」


「わか、った。わた、しも出来る範囲、で協力…させて貰う。アキ、ラの…未来を、一緒に見たい…から」


「ありがとう…レヴィ」


俺の目を真っ直ぐと見つめるレヴィに、小さく笑みを浮かべて礼を言った瞬間、魔物の気配を感じ取り、剣をその方向へと向ける。


「この世界はレベル制じゃない。だけど…!こうして戦う事は絶対に無駄なんかじゃない!!」


「ガルルルッ…!」


茂みかを表したのは先程よりも大きな個体の狼の魔物。恐らく先程の群れのボスだろう。

その大きなボスに向けてそう叫びながら俺は走り出す。自分自身の成長(レベリング)の為に。


────────────


アキラと巨大な狼が激闘を繰り広げている場所から少し離れた上空。そこには2枚の純白の翼を生やした少女がアキラを見下ろしていた。


「テンドウ・アキラに異常はありません。はい、近くに“嫉妬“の姿も確認できます。いえ、“怠惰“の気配はありません。……了解しました、引き続き監視を続けます」


誰かと話すようにしていた少女は、話を終えるとがむしゃらに戦う人間、アキラを見つめた。


『異例の完全体である“嫉妬“と契約した人間、テンドウ・アキラ……か』


上司からは決して攻撃を仕掛けてはいけない、決して見つかってはいけないと警告された危険な任務。

だが地上の1人と1匹を見ていると、そう危険には見えない。


『何故そこまでラミエル様は警戒なさっているんだろう』


偉大なるラミエル様とウリエル様が2人揃っても救えなかった人間。そして何故か“怠惰“との関わりも報告され、一時は大罪悪魔を2匹宿していたとされる危険人物。

そしてそのテンドウ・アキラの契約した悪魔、レヴィアタン。リンガスという人間の王国をたった一夜で滅ぼした悪魔。


『……とてもそうには見えない』


まるで母親のように暖かな瞳でテンドウ・アキラを見つめる“嫉妬“と、その契約者とは思えない程未熟な人間、テンドウ・アキラ。とても地上世界並びに天界を脅かすとされる存在には見えない。


『でも油断はしちゃダメ…!』


少し前にテンドウ・アキラ並びに“怠惰“を監視していた同じ階級の天使が死んでいる。なによりラミエル様から最大の注意を払うようにと言われている以上、決して油断してはいけない。

そう意気込んだ時と同時に、地上ではテンドウ・アキラが大きな狼の魔物に勝利した。


「やっぱり危険に見えないんだよね…」


“嫉妬“と手を取って喜んでいるテンドウ・アキラ。どちらも嬉しそうに笑みを浮かべているのが印象的で、危険とはほど遠く見えて仕方ない。いくら油断してないとはいえ、気は抜けてしまいそうな程緩みきった笑みだ。


「というか何あれ……竜?蛇?よく分からないけどスッゴい嬉しそう……」


黒い水?出来た大きな3つの頭を持つ竜にも蛇にも見える怪物を産み出したテンドウ・アキラ。


「やっぱり油断出来ない……のかな?」


結局その答えは出ず、テンドウ・アキラについ訳が分からないまま監視を続けるのであった。

答え合わせは次の戦闘シーンで。もし分かっている人がいるなら……凄いと思います(小並感)

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