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211話:知らぬ場所で

「ふぅむ、それで?他に何か異常は無かったかなねぇ?」


「突然の吐血に倦怠感、ですかね」


「成る程ねぇ」


外の風を浴び終えた俺は、リドリーさんの元へと戻る。診断のようなものを受け、素人の俺にはよく分からない検査をされた。


「もしまた体に異常が出たら、この薬を飲みたまえ。鎮痛作用と症状を抑える効果がある。君の為に処方した」


「ありがとうございます。えっとお代は……」


「いやいらないさ、君がろくにお金を持っていない事は知ってるしねぇ?」


お恥ずかしい…!

……ん?この人…俺の持ち物漁ったの…?


「だが変わりに君の体から分泌される液体が欲しい」


「っ…!!研究者っていつもそうですね…!俺達男の事をなんだと思ってるんですか!?」


俺がこの世界に来る前まではこのコラばっかりだったが、そろそろ落ち着いただろうか。あんましこういう時事ネタっぽいのは危険なんだけどな、まあこれも【なろう】だからいいだろ。


「はぁ…?いやいや、変な意味じゃあないさ。君の涙から取れる黒い水が面白くてねぇ、それを少々欲しいんだよ」


てっきりエッチな路線かと思ったのだが……くっ…!久しく出ていなかった童貞妄想が出てしまった…!おのれリコス(飛び火)


「この水だけで治療してくれたお礼が出来るなら構いませんが……これ、取り扱いには気を付けてくださいよ?かなり危険ですから」


そう事前に危険性を示した所で、渡された瓶に[黒水(こくすい)]を入れていく。


「勿論分かっているさ。なんせ()()()()()()()なんだからねぇ」


「…!落ち着けレヴィアタン、やめるんだ」


何故俺の力の正体を知っているのか、そう考えた矢先に右腕がリドリーさんを殺そうと動いた。当然俺の意思じゃない。危険だと判断したレヴィアタンの起こした行動だ。


「ふふっ怖いねぇ。何故知ってるのかって顔だねぇ?君を診断したのはワタシだ、分からない訳がない。第一君達は悪い意味で有名人、知らない方が珍しいねぇ?」


「……やっぱり色んな所でバレてるんですね。ですが何故貴女は俺を助けたんですか?その言い方だと助ける前から知っていそうですが」


「なぁに、さっきも言っただろう?単なるワタシの気まぐれさ。ワタシは面白い事や不思議な事が好きでねぇ、多少危険でも飛び込まずにはいられない質なんだ」


まあ世界は広いからな、変な人がいるのも当然の事。勿論俺も似たような性質だから分からない所か共感しかないんだけどね。


「かなり危険な毒ですから…取り扱いにはホント気を付けて」


「どうもありがとうねぇ…!ふふっ」


俺の言葉が届いているかどうかは知らないが、渡した瓶をキラキラとした目で見つめるリドリーさん。この黒水を使って、毒薬やバイオ兵器を作ろうが俺には関係無い。それで悪さするなら全力で潰すけど。


『本当の主人公なら作られる前に止めるんだろうけど』


俺には生憎補正が無い為、自分で道を作らねばならない。こうして黒水を渡したのも、今後悪用して欲しいからであり、言うならば伏線?だ。


「俺はもう少し入院…と言うか、ここにいて検査をした方がいいですか?」


「いいんやぁ?ワタシの処置は完璧だからねぇ、残る必要は無いが…もう行ってしまうのかい?」


「少し……急がなければいけないので」


こうしている間にも寿命という名のタイムリミットが迫っている。うかうかしてられない、なんせ俺の体内年齢は70歳オーバーなんだから。



「宛はあるのかい?」


「ええ…精霊を探してみようと思います」


「精霊?なら【精霊国シルフィール】にでも行くのかな?」


「………はい」


ごめん、知らん。今凄い知ってる風に頷いたけど知らないんだわ。何シルフィールって。

……一先ずそれは置いといて、新たにゲットした情報はまさに今の俺の為に用意されたような情報だ。


『見た目が濃いからそうかなとは思っていたが……やはりリドリーさんはキーキャラだったな』


「ん…?何かなぁ?」


椅子に座って紙に何かを書いているリドリーさんを見ていると、早速バレてしまう。人の視線って結構分かりやすいんだろうか?それとも俺が『πも大きくて黒ストは反則だろ…』という邪の感情を抱いていたからバレたんだろうか。


「いいえ、なんでもないです。ホントありがとうございました」


「ああ、また体に何かあったらここに来るといい。ワタシは大歓迎だ、ふふっ…!」


次に体に何かあった時は手遅れのような気がするが、俺は少し引きつった笑みで頷き、リドリーさんの家から出た。







──アキ、ラ……次は、どうする…の…?


「これ以上能力が使えない使えないからな、精霊をこの体に宿す事が最優先だ。だからさっきリドリーさんが言ってた【精霊国シルフィール】に行ってみるよ」


ローザ達との合流を先にするという考えもあったのだが、彼女達は本来主人公の側にいる仲間ポジ。近くにいれば、当然イベントが起こる。本当ならそのイベントに飛び込みたいが、老死したら笑えない。


「もしかしたらローザ達、現在もイベントの真っ最中かもな」


そんな事を呟き、俺は情報を得られる場所を目指して空を飛翔する。

大精霊イフリートをこの身に宿す為に。


───────────


「はぁ…!はぁ…!くっ…」


燃え盛る城下町。普段の活気はそこにな無く、炎が建物を燃やす地獄絵図だった。


「なんだよ、もう終わりか?それでも聖剣士かよ、弱ぇな」


燃え盛る国で、ケラケラと笑いながら2本の剣を使用する()()()()()()()()()()()()。その視線の先にはレイヴとクエイ。そして少し離れた場所にはジェーンとミルがいた。全員満身創痍であり、いつも倒れてもおかしくない程に傷だらけだ。


「何故貴様が光の聖剣と闇の邪剣を…!それはお前の物ではない筈だ…ッ!!」


「あー…これな?奪ったんだよ、強欲らしくな」


レイヴの言葉にニヤっと笑った黒髪の男は、その両手に握られている光の聖剣と闇の邪剣を振るう。

対極する2つの属性が合わさり、それは圧倒的な力を生み出す。この場に4人の聖剣士がいるにも拘わらず、全く太刀打ち出来ない。



「助けて……アキラ…!」


下唇を噛みながらそんな言葉が出たミル。だが残酷な事に言葉にアキラが来ることは無ければ、ミルの存在自体を覚えていないアキラは決してこの場に現れる事は無い。




本来なら助け来る筈の主人公は、残念ながら来ません。残念な事に主人公補正が無いからですから。

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