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209話:急変

誰もが1度は言ってみたいセリフ、『演出ご苦労ォッッ!』くぅ~、言えて気分爽快だな。


「な、何で…!?何で無傷なのよ!!」


「クククッ、あははは!!あんなお遊びみたいな魔法で俺が傷を負うわけが無いだろ?」


「何ですって…!?」


何故俺が無傷なのか、そんなのはとても簡単な話だ。消した、たったそれだけ。あの[黒水(こくすい)]の球体は衝撃吸収目的であり、言うならばただの演出だ。


『どんな時代も大技を無傷で耐える奴は強いって決まっている』


そしてこれをやられた相手側は絶望感が凄い事だろう。主人公なら諦めたりはしないだろうが、コイツらは一始(にのまえはじめ)のカモ。そんな強い心は残念ながら持ち合わせていないだろう。


「どうした、怖いか?震えてるぞ」


「…っ!だ、誰がアンタなんか…!もう1発おみまいしてあげ────っ!?何で!?何で魔法が…!」


アカリの魔法を使えなくする。そうする事で更なる絶望感を味わっていただく。

更にもっとだ、もっと力を示す事で再起不能にする。


「俺の前では如何なる力も使えない。当然お前ら召喚された者のチートでもだ」


「俺の闘神化(とうしんか)が…!使えねぇ…!!」


「何でっ!何で出ないのよっ!!」


チートが使えなくなったコイツらただの高校生。右の男、ヒロト君はまだいくらか戦えるんだろうが……それでもそれは地球基準。この世界じゃとても生きてはいけない。その辺は俺も同じなんだがな。


「なんだか俺が悪役みたいになってるが……それはそれでアリ、かな?まあ俺は王道を征く主人公がいいんだけど───なぁッ!!」


地面を思い切り踏み込み、急加速。そしてそのスピードに乗ったまま、アカリの頭を鷲掴みする。


「痛っ…!離せ…!離してよっ!!」


「この野郎…!!亜香里を離せッ!!───アガッ…!!」


段々と涙目になるアカリさんと、それを助けようと接近してきたヒロト君。だがチートの無い彼では彼女を助ける事は不可能だ。


「力が無い奴には何も救えない。弱者はいつだって強者の食い物にされちまう……悲しいな、現実世界でも異世界でも、それは変わんないんだから…なぁッ!!」


「うぐっ…!!?」


アカリの腹へと膝蹴り放ったアキラは、歪んだ笑みで彼女を倒れているヒロト君へと投げ飛ばす。


「この国に来てから最初っから今までず~っと悪役ムーブなんだよなぁ……もうここまで来たら最後まで悪役で行こうと思うんだ。────てな訳でヒロト君、アカリさん、君達にはこの世界からご退場を願おうか」


どうせこの2人はハジメの強さを示す為のキャラだ。どうせ1クラス40人前後、2人くらい俺が殺してもアイツの物語に支障は出ないだろ。

そう考えて2人に手を向けた瞬間だった。


「───ガハッ…!!?ゴホッゴホ!!な、なんだ…!?」


突然咳が出た。それはまるで喘息のようにように何度も何度も咳き込む。とても苦しい。もはや目の前の2人なんかどうでもよくなる程に咳が止まらなかった。


「ゴホッ…!ゴホッゴホッッ!!………なんなんだよ…これ…!」


押さえた手にベッタリと付着した血。

何故俺が吐血なんかしているかは分からない。もしやこの2人の能力…?いやだがコイツらは2つのチート持っているタイプには見えないが……


「なんかよく分かんないけど……チャンス!!」


「なっ…!?ッッッ!!」


突然の吐血に意識が向き過ぎたせいか、2人のチートを消す事が出来ていなかったようだ。またしても抜かってしまった。


「…!何で…消せないんだ…!?ゴホッ…ゴホ……」


嫉妬罪(レヴィアタン)]がどういう訳か発動していない。放たれる魔法を消す事が出来ず、次々と被弾していく。

それどころか自己再生もされていかない。いや、厳密にはされている。が、今までと比べてあまりに遅すぎる。これは不味い。不味過ぎる…!


──アキ、ラ…!ここ、は引いて……!


「ッ…!分かった…!」


重傷の体に鞭を打ち、翼を広げて撤退を選ぶ。あれだけイキッといてこれザマはあまりに恥ずかしい結果だが、命あっての物種。仕方ない。


「誰が素直に逃がすかッ!オラァッ!!」


「グッ…!!こ、[黒水]ッ!」


ふらつきながらも必死に逃げる事を選んだ俺は、地上のヒロト君から投石を受けて翼にダメージを負う。

防御の為に張った[黒水]の壁も不安定であり、全てにおいて弱体化しているのが分かる。しかし解せない。何故突然弱体化した?


「近くには……やはり誰もいない…───うっ…!」


こういう場合は主人公が影から援護している場合が多い。だがそれらしい人物も無ければ、何か魔法陣や結界なんかも感じない。

そんな謎の現象に苦しみながらも、冒険者や兵士達がここぞとばかりに放ってくる魔法や矢をその身に受けながらオメオメと撤退した。


───────────


「クソ……回復が、追い付かない…!ゴホッゴホッ!!」


必死になって逃げ込んだのはどこかの森。木に凭れながらも受けた傷を確認し、吐血する。

久し振りにこんな重傷を負った気がする。


「レヴィアタン、答えてくれ……これは何かの呪いか…?それともお前の()()()()()か…?」


呟くようにそう小さく言うと、俺の瞳から垂れた黒い水が形となって、レヴィアタンへと変化する。


「残念、だけど……後者、だよ……」


「ははっ……そっか」


羨望(エンヴィー)]の頃からデメリットはあったんだ、完全体となったレヴィアタンの力を使っているのなら、当然更なるデメリットが存在するだろう。


「怒ってる、よね…?黙って、た事……」


「いいや、怒ってなんかないさ……ある程度覚悟はしてた、こうなるってな……この道を選んだのは俺だしさ」


「治し、てあげたい……でも、ごめん…ね…?出来ない、んだ……」


膝をついて俺の手を握るレヴィアタンは、とても悲しい顔をしてそう小さく呟く。


「そっか……レヴィアタン、お前のデメリットは蓄積してくんだな…?」


俺がそう言うと、レヴィアタンは肯定の頷きをする。以前のデメリットは一時的な激痛。だが今回のは蓄積していき、やがて内部から破壊するようだ。それが今回の吐血の原因だろう。


「死ん、じゃ……ダメ、だよ…?アキラ……」


「死なねぇよ……まだな。でも少しはしゃぎ過ぎたみたいだな……疲れて眠い…や…」


「わた、しも……一緒に寝る、よ……」


重くなってきた瞼。下手したらこのまま死んでしまうかもしれない。だけどそれで死んだのなら、高校生2人を嬲った罰だろう。

俺に凭れ掛かるように横になったレヴィアタンは、その体を黒い水へと変化させて消えてしまう。どうやら彼女も俺の状態とリンクしているようだ。


「あー……疲れた……」


最後にそう呟いて、俺は意識を失った。

次また目覚められる事を願って、、














「ふぅん?これはまた面白い子がいるねぇ?」


まるで死人のように眠っている黒髪の少年の前に立った1人の人物は、少し考えるように顎に手を置いて悩む。軈て小さく微笑み彼を連れていく事を選んだ。


「面白い拾い物をしたねぇ。たまには外の日を浴びてみるもんだ、ふふっ」

やっぱこうなってしまうのがウチの主人公って感じがして落ち着きますね、ははっ()

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