206話:嫌な予感
話が遅い系作者は万死です(過激派)
「ここは………うっ…」
ゆっくりと目を開けると、太陽の日差しをモロに受けてとても眩しい。危うく失明する所だった……
そんな冗談は兎も角、ここはいったいどこなんだろうか。見た限りとんでもなく広い平原なんだが……俺は死んだのだろうか。
「何でこんな所で…?…!傷が治ってる………そうだ、あの時レヴィアタンが助けに来てくれたんだったな…ありがとう」
自身の胸に手を当てて、そう小さく呟いて立ち上がる。レヴィアタンからの返事は無いものの、欠けていたモノが1つになった心地好さは感じる。それどころか、旧リンガス王国にて契約した時よりも深くレヴィアタンと繋がれている気がする。いや、レヴィアタンの方から俺を縛っているようにも感じるが……これは良い傾向なんだろうか。
「何はともあれ、生きている事に感謝しよう。はぁ……でも服がまたボロボロだ…」
ギャグ漫画の世界線なら、黒焦げた服なんかはすぐ再生するんだがな。俺も早く主人公達が着用している耐火耐刃防水etc……そんなチートな服が欲しい。じゃないと1戦闘の度に服を買い換えなくちゃいけないから……(圧倒的散財)
「さて、早く皆と合流したいのだが……うーむ、レヴィアタンと1つになったせいで方角が全く分からなくなってしまったな」
レヴィアタンに心の中で声を掛けても返事は無い。俺の傷を治すのによっぽど力を使ったようで、どうやら今は寝ているっぽい。
となれば、だ。自力で探すしか無い訳なのだが……如何せん方角がわからないから困ってしまう。
「まあ大丈夫だろう、なんせ俺はこの世界の主人公(志望)!!歩けば向こうからやって来てくれるさ!!あっはっはっは!!」
目指す方向を完全に見失ったアキラは、暫くの間空で迷子になるという未来があるのだが、この時のアキラは若干しか気にしてない。
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「……?」
「…?どうしたの…?」
列車に揺られるミル達一行。そんな中、静かに列車からの風景を見ていたローザの表情が変わった事に気が付いたミルが声を掛ける。
「いえ…アキラの生命反応が急激に下がったと思った矢先に、今まで以上に生命反応が上がったから不思議に思って……一体何があったのかしら…」
「うーん……あっ!もしかして、私達より先に行ったっていう“嫉妬“?がアキラ君の中に戻ったんじゃないかしらっ?」
顎に手を置いて少し悩んだルナはそう言うと、他3人を納得させる。
「早いな、もうアキラと合流したのか。拐われたと言っていたから心配していたが……その“嫉妬“って奴は強いんだろ?それなら少しは安心だな」
「ん……多分…」
ソルの言葉にそう言って頷いたミルだったが、少しの不安は残る。ミルが知る限り、“嫉妬“のレヴィアタンはアキラの体を何度か奪っている。ルナの言葉通り、アキラの中に入っているのなら…
「…大丈夫かしら?顔が青いわよ…?」
「…平気」
ローザの言葉に、ルナもソルも心配の顔を向ける。どうやら珍しく顔に出てしまったらしい。
「ったく…アキラの事考えてる時だけ分かりやすいよな、ミルって」
「ふふっ!ほんとねっ!大丈夫よ、あの時以上の絶望はもうきっと無いわ。だからそんな悲しい顔しないでっ?ねっ?」
あの時……
ローザが言うには、一応アキラは“嫉妬“と友好的な関係ではあるらしい。彼女は不安でしかないと言っていたけど……
それならそう簡単にアキラが死ぬとは思えない。もうあの時のように、アキラが死ぬ事は無い。そう願いたい。
「ん…そうだね」
──間も無く、ルミナス聖国です。お忘れ物の無いようにお気をつけください。
ルナの言葉に励まされたミルが、小さな微笑みを向けると同時に列車アナウンスが鳴り響く。どうやら話している間に到着時刻を迎えたようだ。
「ここまでかなりの長旅だったから、少しの間だけどボクの屋敷で休もう」
「なんだか久しく感じるわねぇ~、ミルちゃんの屋敷に行くのは」
「だな。なんせミルがやさぐれてた時以来だがら“ッ───!!?」
からかうように、少しニヤつきながらそう言った瞬間だった。
音を置き去りにして、ミルはソルの額にデコピンを放つ。こんな細身の少女ではあるが、決して忘れてはいけない……彼女が人間離れした身体能力を持つことを…!
「痛ッッッ!!ちょっ…!本気のデコピンするなよ!軽い冗談だってば…!」
「大丈夫、手加減してるから。本気でやったら………うん、ソル死んじゃうから」
「は、ははは…!ご冗談を…!」
威嚇のように指を弾くミル。それはもはやお遊びのデコピンの活きを越えており、風邪切り音が凄い。ソルは声と体を震わせながら小さくなると、ミルは指を弾くのをやめた。
「相変わらずその……強いよね」
「そう…?普通だと思う…」
微妙な表情を浮かべたローザが、言葉を選ぶようにそう言うと、ミルは不思議そうに首を傾げてそう小さく言った。
デコピンで男をビビらせる少女が普通…?という疑問がローザの頭の中で過ったが、そこは彼女の為にも黙るローザだった。
そしてそうこうしている内に列車は停車し、駅に降り立った。
「…?珍しい…」
列車から降りた瞬間、ミルが常に佩剣している銀零氷がカタカタと揺れている。まるで何か反応するように。
『最近は反応が無いと思ってたのに……何か感じ取ったのかな…』
不思議に思ったミルは銀零氷へと意思疏通を図るが、やはり答えてはくれない。
何か感じたのは確かなのだろうが、それを聞く術が無い。困ったミルは、仕方無く歩みを進めた。銀零氷が感じ取ったナニカを警戒しながら。
「………」
淀んだ空がミルの不安を煽る。
とても嫌な予感がするのは気のせいであって欲しい。そう願いながらミルは駆け足で3人の元へ急いだ。
そんなんフラグやん




