204話:アンチ
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ただの風邪だと信じていたいです……
「クソッ…!あのサイコ集団が…!ふざけんじゃねぇぞ!!」
無関係の人間を巻き込むのは俺の正義心に反する行為だ。ましてやそれが俺が原因ならば尚更。厄介事だと分かっていても、俺は中央広場へと走らずにはいられなかった。
だが俺がいた場所は中央広場から距離があり、空を飛んでも5分と少しの時間が出来てしまう。見方によってたった5分なのだが、奴らは1分おきに爆撃をする。到着する頃には5回は確定で爆撃されてしまう。
「……1分経ちましたね。では次の爆炎魔法を───放つ必要はないみたいですね」
「来てやったぞ。これ以上街を爆破するのはやめてもらおうか」
「勿論そのつもりですよ。我々も無関係の人間を傷付けるのは心苦しいですからね」
「ハッ!どの口がほざいてんだ。ふざけるのも大概にしろよ」
重々しく中央広場に鎮座している白いローブの集団。かなりの数であり、各々が中々の力を秘めているのを感じる。ラディウスは勿論、誰1人として知っている顔が無い事から、他の地域の者のようだ。
『あの中央の男……アイツはラディウスと勝るとも劣らない』
かなり若く見えるその男はラディウスと同じような豪華な作りの白いローブを着用している。そしてレヴィアタンと契約してから感じるようになった聖なる気配が飛び抜けている。
「おっと失礼、俺の名前を名乗っていませんでした。俺の名前はカルシフォン・メルム、西の聖道協会にて枢機卿を務めています。ああ、覚える必要はありませんよ?───テンドウ・アキラ、貴方はここで死ぬのですから!!」
「…!」
丁寧な挨拶という前フリの後、メルムと名乗った男はステッキを此方に向けた瞬間、ノータイムで水の波動を飛ばす。
それは[嫉妬罪]で消すには時間が足らない程高速であり、避けるので精一杯だった。
『早いな。あの手に持っているステッキから天使と同じ気配がする。コイツは天使を生け贄に武器でも作っていやがるのか?』
「心外ですね。俺はあの狂った老人とは違う。このステッキには天使の施しがされているだけですよ」
「ッ…!俺の心を………成る程、お前はそういうタイプか」
敵の思考を読む能力。流石は異世界、異能力バトルのお約束を持っているとはね。しかも中々のチート能力だ、どんな敵にも通じるのが強い。
「だが残念ながら俺には通じない」
「“嫉妬“の能力は相手の力を消す力……では試しては如何でしょう?」
「……成る程、なら確認も兼ねて攻撃させて貰おうか」
地面を強く蹴り、接近しつつ両手に作り出した水球を槍へも変化させメルムへと飛ばす。
だかメルムの言葉通り、[嫉妬罪]によって消している筈なのにそれは回避される。反応速度が異常なんじゃない、奴は目を閉じた状態で回避しやがった。
「貴方の能力は俺には効かない。…といっても、どうやら貴方は分かっていたようですが?」
「天使の施しを受けていると聞いた時から薄々分かっていた。お前、どの階級かは知らないが天使の加護があるな?それも俺のレヴィアタンの能力が効かない効果の」
「ご名答、噂通り一般の者が知らない情報をお持ちのようで。そう、俺の前では貴方の能力は効かない。本来なら、俺が“嫉妬“を討伐する予定だったのですが…どういう訳か、貴方が契約してしまったのでね。ここは俺が責任を盛って貴方を討伐させていただきます」
「ッッ…!!」
思わず見とれる程美しい空色をした水撃。だがその美しさとは裏腹に、中々の殺意が強い威力とスピードに苦戦する。
そして何より厄介なのは、俺の回避地点を読んでいるメルムが後衛に控えている者達へと指示をしていないのに攻撃が飛んで来る事だ。その攻撃は消せない訳でも特段早い訳でも無いのだが、それを消している内にメルムの次の攻撃が迫る。
「フフッ、テンドウ・アキラ、貴方が持っている能力はとても強力で唯一無二と言っていい程の力だ。だがその反面で攻撃面ではその汚らわしい黒ずんだ水しか無い。全て情報通りです…!」
「ウッ────!!がぁぁぁぁあああ!!」
1度相手の攻撃が届かない空中へと飛翔した瞬間、その上空からまるで滝のような威力の水によって下へと落とされる。
そして地上で待っていたのは不敵に笑みを浮かべ、輝くステッキを落ちてきている俺に向けているメルムの姿だった。
「終わりです──[終聖の光水]」
「────ッ!!」
地面から生まれた金色の水はアキラ目掛けて上へと上り、アキラを地上へと落とした水と挟まれたアキラ。
地上と上空の金色の水が重なると、ねたましい衝撃波と共に付近の建物を崩壊させ、中央広場に金色に輝く巨大な十字架が生まれた。
「へぇ?まだ息があるなんて思っても見なかったよ。やっぱり最上級悪魔と契約した人間は作りが違うようだ。あのラディウス枢機卿が聞いたら喜びそうな情報ですね」
小さく息を吐いてそう呟いたメルムは、全身が真っ黒に焦げたアキラを見下ろす。
「終わってしまえば呆気ないですね。やはり悪魔の力ごときでは天使の力にはかなわな───グッ…!!?」
持って数分の命。そう判断し、油断しきっていたメルムの腹部に赤い刃が突き刺さった。
それをすぐさま抜き去り、回復しながら距離を取ったメルムは思わず目を見開く。
「フッ……フハハハハ!完全に予想外の攻撃でした…!まさかそのダメージで反撃する者がいるとは……また1つ賢くなりました。ですが本当に最後の力を振り絞ったと言った所でしょうか?」
真っ黒に焦げたアキラの手に握られた、剣と言うにはあまりに歪な形状をした棒状の赤い刃。
「届かない……か…」
「ええ、届きませんとも。ですが貴方は私の体に傷をつけることに成功した。それだけでも偉業です、喜んでください」
「喜べる……訳無いだろうが………ゴホッゴホ…」
「それは此方も残念です。ではそろそろお別れといきましょう」
ステッキをこちらに向けたメルム。この窮地を打破する為の打開策を必死になって考えるアキラは、額に汗を滲ませながら[黒水]を発動させる。
「成る程、全方向に水の槍を飛ばしますか。確かにこれなら思考を読もうが対処が難しい。────ですが俺にはそれさえも通じない!」
「なっ…!?」
俺の全方向の黒水の槍。それを見て興味深そうに頷いたメルムはその身に水を纏い、螺旋状に上へと高速で移動した。
「今度こそ終わりです!!」
上空で停止したメルムは俺に向けて天使の力を帯びたステッキを向けると同時に魔法を放った。
──消せない
消せない消せない消せない消せない。
何度やっても消すことが出来ない。もう体の方は限界だ、再生が追い付かない。
『詰み…』
その言葉が頭を過った瞬間、中央広場に黒水よりも遥かに黒いヘドロのような水が大量に降り注いだ。
「ッ…!?何故発動しない…!」
その身に黒い水を浴びたメルムは混乱状態のままステッキを何度も俺へと振りかざす。
が、何度振っても魔法が発動する事は無い。
「わた、しのアキラに……何をして、いる…」
心臓を掌握されたような不快感が全身に広がる。それはまるでRe:ゼロの魔女の手のように玉の汗が止まらない。何をしても死ぬ。もう死ぬビジョンしか浮かばない。
「バカな…!あの男の情報では“嫉妬“は現れないと言っていたのに…!!」
震えるような声で、小さくそう呟いたメルムの視線の先にはボロボロの黒いドレスを纏った紺色の髪に、明るい青のメッシュが入った1人少女が滞空していた。
この世の憎悪を塗り固めたような表情をして
頭あんまり回ってないから誤字多かったかもです……体調が治ったら編集しておきますね、すいません。




