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199話:怪しい入国

アキラとメランコリーの絆レベルが上がった!

「またやってるのぉ~?飽きないのかなぁ~」


「反復練習は基本だろうが」


剣術の稽古を終えた次の日の早朝。朝日が登る時刻と同時に飛び立った俺は、空を飛びながらも常に水球作りの稽古をしていた。


「この水球作りはいいぞ。剣を作るにしろ、何を作るにしても、いい基礎練習になるからな」


「へぇ~?でも君じゃあ無駄な努力になるんじゃあないかなぁ?やって無駄な事なら、最初からやらない方が良くねぇかぁ?」


「…お前もしつこい奴だな、俺はこういう地味な事を繰り返すしか脳がないんだ。力も才能も無い俺にはこれが1番合ってんだよ」


怠惰の名に恥じぬ、俺を堕落させようとするメランコリー。遠回しにやめとけ、無駄だと言われているのは分かっている。それが本当になりそうだから怖くて仕方ない。

その負の感情を払う為にも、俺は一心不乱で水球作りや剣術の稽古に励んでいる。


「なぁ…お前の目的──いや、最終的な目的はなんなんだ?」


「ん~────あっ!見て見てぇ~!新しい国が見えてきたよぉ~?」


露骨に話を反らしたメランコリーは、見えてきた国を目指して先に飛んで行ってしまう。

普段通りのわざとらしい仕草。それが何を意味するのか分からない。俺に深読みをさせたいのか、隠すのが単純に下手なのか。だがアイツの性格上、後者はあり得ないんだろうが。


「おい止まれ、メランコリー」


「ん~?何かなぁ?」


先に飛んで行ってしまったメランコリーを俺は呼び止める。見えてきた新たな国は壁が高く、よく眼を凝らせば監視役の兵団が沢山いるのが分かる。警戒が高い。このまま空から入国すれば、間違いなく矢や魔法の一斉放射を受けるだろう。

無論俺は食らう事は無いが、入国する段階であの国を敵に回す事になる。それはあまりに厄介過ぎる。


「このまま空から行けば面倒な事になる。普通に門から入ろう」


「えぇ~?面倒だなぁ……まっ、仕方ないかっ♪」


面倒そうにしながらも承認してくれたメランコリーだが、全身黒尽くめに深くフードを被ったメランコリーは果たして検問を通れるのだろうか……








「おい、そこのお前!ちょっと止まれ!!」


「はぁい~?」


やっぱダメだった…!明らかに怪しいその風貌と、フードの中で常にニヤついている顔。逆にこの出で立ちで検問通れたら凄いわ。


「あははははは!!見て見て見てアキラ~、僕怪しまれてるよぉ~!」


「ええいっ!離せ!!俺を巻き込むな!!」


愉快犯め…!何故この緊迫した状況で俺を巻き込むんだ!お前のせいで俺まで疑いの眼差しを向けられたじゃないか!巻き込むならもっとイベントっぽい所でやってくれよ、検問で捕まるから始まるイベントって然う然う無ぇぞ。


「よく見たらお前も怪しいじゃないか!お前もちょっと来てもらおうか!!」


「見ろ!お前のせいで俺にまで飛び火したじゃないか!」


「いやいやいや、アキラも十分怪しいよぉ?ボロボロの執事服とかマジ無いわぁ~♪」


「お前らうるさいぞ!門の前で騒ぐな!!」


5人体制で槍を向けられた俺とメランコリー、大人しく連行される。訳もなく……


「あ~面白かったぁ♪お前らもういいよ」


「何…?うッ…!?」


「ガッ──」


笑いが収まったメランコリーが兵士達へと手を向けると、5人の兵士達はその場で次々と倒れていく。まるで気絶するように。


「…!息をしてない……殺すなよ、余計面倒な事になるだろうが」


「消した方が色々楽なんだけどなぁ~……」


酸欠で倒れたらしく、必死に空気を取り込もうとしているが出来てない兵士達。これがメランコリーの力なんだろうか。

だが殺しは不味い。今すぐこの場を離れるならいいが、今回は少しここで停泊する予定だ。殺しがバレればこの国で戦う事になってしまう。


「はあ……[嫉妬罪(レヴィアタン)]」


「消してもいいと思うんだけどなぁ?────もう僕達、行っていいよね?」


「はい、どうぞ。お通り下さい」


俺がメランコリーの能力を消した事で、息が吸えるようになった兵士達。そんな必死に呼吸を取り込んでいる兵士の1人に近付き、メランコリーがそう言うとあっさり入る事を許可された。


「だってさ、行こ行こぉ~♪」


「お前…今何したんだ?」


「ん~?何にもしてないよぉ~♪」


バレリーナのようにクルりと1回転して振り返ったメランコリーは、含み顔でそう言った。

嘘だ。コイツ……バレると分かってて、俺を嘲笑うように嘘をついた。


『コイツの全てが嘘に見えて仕方ない。どれがホントで、どれが嘘なのか……難しいな、コイツとの付き合いは』


レヴィアタンと同様の形式で契約ならば、メランコリー、いやベルフェゴールはかなり……いや凄く面倒になる。うん、絶対なる。こんなのがまだ5人いるってマ?


それは一先ず置いといて、無事?に入国。この国に寄った理由は様々だ。先ず服だ、いつまでの破れた執事服なんか着てられない。と言っても、これはランカスター家の備品だから無許可で処分はしないんだけど、流石に怪しいしな。


「お前も服装を変えたらどうだ?そんな黒尽くめの服装じゃなくてさ」


「えぇ~?僕あんまり顔バレしなくないんだよねぇ~。後日差しが眩しいしぃ~」


ダメだコイツ。

もう少し清潔な服装にしてほしいもんだ。今後イベントが起これば首を突っ込む俺にとって、怪しいメランコリーは足枷でしかない。


小さく溜め息を吐いた俺は、ここに来るまでの道中で狩った魔物の素材を売却。新人冒険者時代に少しだけやった技術だ。


『シアンは元気にしてっかな……ちゃんもご飯食べてるだろうか…』


“強欲“との契約者に襲われた際に、戦闘から離れていた俺の相棒シアン。結局その後は“暴食“の穴に呑まれて離れ離れだから心配だ。


「補正があればすぐに出会えるんだけどなっと…」


そんなこんなで新しい服を購入。中で着ていたシャツを新調し、ジャケットの代わりにフード付きのローブを羽織っている。

以前の町で冒険者ギルドに立ち寄った際、受付嬢が俺の名前を知っているようだった。もう既にレヴィアタンと契約したのが聖道協会を通じて漏れているのかもしれない。それ故にこうして素顔を隠せるローブを買った。


「あははははは!!僕の服装にとやかく言ったくせに、僕と同じ格好って!イヒヒヒヒ!!」


「うっせ!!仕方ないだろうが!」


安定のメランコリーからの弄りを受けつつ、俺とメランコリーは服屋をから出る。それと同時に国に大きな鐘の音が響き渡る。何か起こったらしく、住民達が大慌てで逃げ惑っている。


「皆逃げろーッ!!砂漠の死蠍(デザート・スコルピー)だぁッ!!」


どこから都もなく聞こえた状況説明モブの声。


「イベント発生だ…!」

物語に欠かせない状況説明モブ、又はキャラ。

複雑な技さえも初見で見抜いて解説する一般人とかヤバくね?

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