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193話:敵対

いぇい

男同士かつほぼお互い知らない同士で同じ部屋で一晩を明かした俺は、ゲンナリとしながら朝日を浴びていた。


『深夜までペチャクチャと……アイツ修学旅行で遅くまで起きてるタイプだな』


そう、昨晩隣のベッドで寝ているメランコリーに質問攻めに合うという地獄を体験。無視してベッドの中に籠っても、体を揺らして寝かせてくれないメランコリー……アイツいつか殴る。


「なぁ…メランコリー、アスモデウスは今どこにいるんだ?」


「あれあれあれ?僕が起きてるって知ってたのぉ?」


「知ってるも何も、ずっと俺に視線を向けていたのは気付いてたぞ。俺はそういうのには割りと鋭いんだ」


前世では周りの目を気にしつつ、敢えてそれを無視してバカをやる、そんな矛盾した事をしていた俺は、他の奴よりは視線に気付きやすい。

もっとも、【なろう】主人公は俺みたいに鍛えなくても必ず持ってる能力なんだけどな。


「んで?アスモデウスは今何をしてるんだ?まだあの“強欲“の契約者といるのか?」


「残念ながら、“色欲“もあの男から出ていってしまってねぇ~。僕も居場所は知らないんだよねぇ~♪」


悪魔2体でも耐えきれないのか。それじゃあ強欲の名が泣くな。

それは兎も角、アスモデウスともう1度契約出来れば大きな戦力アップだったんだがな。


『でもアスモデウスの噂や記事は見てない。レヴィアタンですら国を落としたってのに……まさかアイツ…ただの暴行事件レベルで止まってるんじゃねぇだろうな?』


アスモデウスは暴力が好きだった。特に女相手には無性の快楽を感じており、契約していた俺にまで被害が及んだ事を考えるに、かなり固執していると見える。


「まあその辺は追々だな。俺はもう宿を出るが、お前はどうする?」


「アキラに付いてくよぉ~♪」


「来んなし」


一応突っぱねてはみたものの、こんな程度ではへこたれないのがメランコリーだ。むしろ俺の反応を見て笑う狂人。……もしやコイツMか?


そんな考えをしながら宿を出た俺は、辺りをキョロキョロと見回す。


「ん、コウキはいないっと。んじゃ絡まれる前に行くとするか」


お互いに顔を知っているし、何よりアイツは俺にやたら話し掛けてくる。もうコウキの物語では俺はモブではないのだろうが、ヘタなネームドキャラになったら死んでしまう可能性がある。俗に言う主人公覚醒、または怒り…!的なあれだ。あれの死人役に選ばれる可能性があるから怖いんだよ、アイツといるのは。


「異世界はヒロインを殺さないってのがよくあるからなぁ…───ん…?あ、イベントだ」


「ありゃりゃ~、僕を置いて行ってしまったよ」










「もう逃げられねぇぞクソガキ!」


「散々手こずらせやがって…!そいつを返して貰おうか?」


「くっ…!絶対に嫌だねっ!これはもうワタシんだ!!」


薄暗い路地裏。そこでは2人の男によって壁際に追い込まれた少女が、抱えた物を抱き締める。


「チッ、ガキを嬲る趣味はねぇが……口で言ってもわかんねぇなら…──仕方ねぇよなァ!!」



「待てぇ!!」


拳を振り上げた男。その拳が振りかざされる前に、突如路地裏に響いた声によって止まった。

声のした方へと振り返ったら男達。そこにはボロボロの執事服を着た黒髪の男が立っていた。


「なんだ?誰だお前は」


「フッ…地獄からの使者!スパ──いや、お前らに名乗るつもりはない。子供相手に寄ってたかって、恥ずかしくないのか?恥を知れ恥を」


男達を睨み付けながら、少女の前に庇うように立った黒髪の男。


「なんだ?その盗人を庇うのか?」


「盗人?」


「そうだ、コイツは俺達から大事な宝を盗みやがったんだよ!」


男達の言葉を聞いて、数秒黙った黒髪の男は背後にいる少女へと振り返る。


「それは本当なのか?」


「うっ……コイツらが言っている事は嘘じゃない……け、けど!コイツらだってこの宝石を盗んでるんだ!それをワタシが盗んだって感じ……」


「成る程な」


口に手を当てて、少し考える素振りを見せた黒髪の男は、考えが纏まったのかゆっくりと口に当てていた手を下ろし、男達へと視線を向け、、


「分かってくれたみた───うッ!!?」


「お、おいゼル!?テメェ…!やりや──ガッ…!?」


一瞬だった。

黒髪の男が放った1発の拳で屈強な男達は膝から崩れ、悶えている。


「あ、ありがとうお兄さん…!お陰で助かっ──っ…!?」


助けてくれた謎の男に、お礼の言葉を述べようとした少女。だがその言葉の最中に突如男は少女の腹を蹴り、壁へと飛ばした。


「うっ……うぅ…」


「お前も盗人なら話は変わってくる。俺は女子供だからって容赦はしないって前世から決めてるんだ。今回は残念ながら、両成敗だな。この男達は勿論、お前も然るべき場所に連れて行く」


突然の蹴り。その衝撃によって大事に抱えていた包みを落としてしまった少女。その包みを拾いながらそう言った男は、ゆっくりと少女へと近付いて無理矢理立たせる。


「は、離せよ…!ワタシの事情も知らないで…!」


「知るかそんなもん。悪事を働くなら、それ相応の覚悟をしとくのが普通だろが。それのも何か?何か事情があれば犯罪を犯していいのか?」


「っ…」


「いいか?悪事を働くならキチンと隠し通せ。そして同時にいつか自分に返ってくる、そう考えて行動しろ。それさえ出来てれば文句は何も無い」


何を言っているのか理解出来ない。胸ぐらを掴んでの説教。そう思っていた少女の考えとは全く違う方向へと進みだした男の話。ただただこの男に恐怖心を抱くだけだ。



「ちょっと待て!」


「あ…?──ッ……やっぱ補正って怖いな」


背後から聞こえた正義感溢れる若い男の声。その声元へと振り返ると、そこにはコウキが立っていた。恐ろしいまでに補正がアイツに味方している。


「アキラ、君はそんな子供相手に何をやっているんだ…!」


「何って……お説教かな」


「…とてもそうには見えないが」


お説教ってのは本当だ。だが確かに他人から見ればそうには見えないのもまた事実……さて、困ったな。


「助けて…!」


「あっ…」


どうやって誤解を解くか、そう考えるがあまり、盗人の少女に籠めていた力が弱まって逃げられてしまう。しかもコウキの背中に隠れるように。詰んだか?


「アキラ、本当にこれはお説教なのか?そこで悶えている男達も何か関係があるんじゃないのか?」


「んー、そうだなぁ………………あー、もうめんどくさいわ、1抜けたっと」


どう弁解するか、それももはや面倒になった。どうせ今のコイツに何を言ってもダメだ。【なろう】の主人公は女の子に弱いからな。

ならばどうするか、そんなの逃げの1手に決まってる。


「ッ…!?逃がすか!!」


「おっ、やるね。でも俺とお前じゃ相性が悪いな」


翼を生やし、空へと舞い上がろうとした俺の片足を魔法の鎖で拘束。どこかで見た覚えがある。まあそんなのはどうでもいい。俺は[嫉妬罪(レヴィアタン)]を使ってその魔法自体を丸々消し去り、俺はその場から逃走した。



「あーあ、主人公を敵に回しちゃった。まっ、どの道俺はアイツらに勝たなくちゃいけないから好都合っちゃ好都合だな」


この異世界で俺はモブに近い存在。それはコウキを始めとした“主人公“という存在がいるからだ。ならいっそ、奴らを消してしまえばどうだろうか。そんな偉業を達成できたのなら……それはまさしく英雄であり、類を見ない主人公となれるだろう。


「元々アイツらの存在自体が嫌で嫌で仕方なかったんだ、丁度いい。全員ぶっ倒してやるよ」

いせかいてんせいしゃころし

ちーとすれいやー

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