191話:再開しちゃったなろう太郎
読者人気1位の男(大嘘)復活。
『レヴィアタンがいる方角は……向こうか。適当に空でも飛んでれば町や村に着くかな?』
「ねぇねぇねぇ、もう暗いよぁ?」
「うるせぇ、ちょい黙ってろ」
どんなに突き放した態度や言葉を言っても、メランコリーはめげる所かむしろそれさえも楽しんでいる。力じゃ勝てない俺には、諦めるか飽きるかで帰ってもらうしかない。
「ホントに辺境って感じだな」
「そりゃあわざと遠くに飛んだからねぇ~♪」
「マジふざけんなよお前」
森にいては、どこから襲われるか分かったもんじゃない。だから早速空を飛んでみたのだが、かなりの大規模な森。その先に僅かに見える場所も何もない。そう、村などの灯りさえも無いのだ。
「クソ辺境マジ勘弁なんだけど……あ、でも転移、転生、憑依系の令嬢や令息がいるかもな」
辺境での改革はもはやお約束……
どっかのピンク髪の娘も言ってたな、『時代は今、ノーフォーク農法でぇーーす!』って。ぶっちゃけ初見でスゲェ!ってならないと感じている。後昔気になって調べたら効率悪いらしい。なんでも、カブが大規模だと育てにくいそうだ。
「こんな知識があっても、土壌改革なんかしねぇしな……もっぱら俺は戦闘特化型だし」
戦闘特化型。それは【なろう】界隈で1番お馴染みであり、その名の通り、戦う為だけにあるようなチートを持っている。本来俺はこのジャンルなんだが……うーむ…
「何ブツブツ言ってるんだい?僕も混ぜてよぉ~♪」
「お前は黙ってろ!誰のせいでこんな所に───いや天使達に油断してた俺が悪いけど…悪いけどさぁ…!」
言葉に詰まった俺は、キッ!っとメランコリーを睨み付けた後に前へと視線を戻した。
隣からはクスクスと笑う声がして不快です。誰か助けて…
「ッ…!あれってまさか…!?」
「おやおやおや……あれは龍種じゃないかなっ?珍しいねぇ」
俺達よりも遥か上空を飛行する巨大なドラゴン。こっちの世界では龍種と言うらしいが、地竜とは比べ物にならない程巨体だ。
「なぁ~んか、こっちに近付いてないかなっ?あはははは!」
「笑ってる場合じゃないだろ!?」
余裕からか、愉快に笑うメランコリー。そんな笑える状況じゃないのは、その龍が俺達に近付いているから。
──ではなく、その龍が巨大なブレスを吐いた事が原因だった。たった1発の火炎球。それはまるで【厄災の十二使徒】が放つ隕石のようにとてつもなく巨大。
「くっ…![嫉妬罪]ッ!!」
視界内に入ったあらゆる異能を消し去る[嫉妬罪]。それは龍が放った火炎球にも有効であり、跡形も無く完全に消し去る事に成功した。
「お~~っ!まさかまさか、“嫉妬“の能力を完全に扱えているなんてねぇ…!」
「チッ…こうなるから隠してたってのに…」
能力を使った事で敵対されるにしろ、現状俺にプラスになる事は無い。案の定メランコリーは俺の能力に興味を持ってしまった。コイツが俺に飽きるのは当分先っぽいな。
「クソ、降りてきやがった…!」
今までの魔物とは格が違う気配に圧倒されつつも、[黒水]により黒い水の剣を作り出して戦闘体制に入る。こりゃあかなりの再生の寿命を使う事になりそうだ、そう考えた時、龍の背中から1人の人影が飛び降りてきた。
「ストップストップ!僕だよ、久しぶりだね!アキラっ!」
「お前は……なろう太──いや、コウキ…か?」
龍の背中から飛び降りてきたのは、まさかのなろう太郎こと、天草光輝だった。
「何でお前がここに……それに今火炎球撃たれたんだけど…お前の指示か?」
「ち、違うよ!?あれはセレナが勝手に……ごめんよ…?アキラ…」
「はぁ……別にいいよ」
捨てられた子犬みたいな顔しやがって……成る程、主人公にはそういう愛くるしさもいるのか、今度ローザにやってみよ。
「アキラ達はこんな場所で飛んでるなんて……どこに行くんだい?また会えたのは奇跡だ、よかったら連れていくよ。いいよね?セレナ」
コウキが緑色の龍、セレナへと確認を取ると、ギロッと巨大な瞳が俺を除き込む。何か不快な気配を感じた俺は、自然と[嫉妬罪]を発動していた。
「───ありがとう、セレナ。ほら、乗って乗って」
「いや俺はまだ乗るとは──」
「いいじゃんいいじゃんっ♪ここはお言葉に甘えて、乗っちゃおっ♪龍の背中に乗れるなんて滅多に無いゼ?」
「お、おい押すなよメランコリー!!」
こういう展開って普通、振り返ったらいつの間にか消えてるってパターンじゃないのか!?てか何でお前まで乗ろうとしてんだよ!
そんなこんなで乗せられた。
「という訳で、アキラとメランコリーだ。暫くお互いに仲良くしよう」
元気よくそう発言したのはコウキ。セレナの背中は案外快適で、風を一切受けない謎があるものの、風景を楽しむ。
「久しぶりね、アキラ。雰囲気変えた?」
「シアリーも久しぶりだな。この髪色はまぁ……触れないでくれ」
コウキの第一ヒロインであるシアリー。このパーティーはコウキも含めてコミュニケーション能力高いわ。
「私はトウカと言う。アキラ、メランコリー、よろしく頼む」
「おう、よろしくな」「よろしくねぇ~♪」
今にも『峰打ちでござる』と言いそうな格好をした艶のある黒髪美少女、トウカに挨拶をすると、メランコリーと俺の声が重なった。コイツ…わざとタイミング合わせたろ?ニヤニヤすんなし。
「にしても……仲間、増えたんだな」
「えへへ、まあね。僕達もアキラが旅立った後に国を出てね、色々あってトウカ達と旅をしているよ。あっ!この前も精霊国に行ってきたんだけど───」
楽しそうに旅の話を語るコウキ。ウザイと同時に重度の嫉妬心を抱きつつも、憧れてしまっている自分がいることに嫌気がさす。
そんなコウキの盛ってるだろって感じるような話を聞き専で聞いている最中、メランコリーが俺の手をニギニギしてくる事にとてつもない恐怖を覚えた。男同士でそれはちょっと…ねぇ?アレなので、潰す勢いで握り返すと、メランコリーは嬉しそうにニヤつく。なんだコイツ。……いやホンマなんやコイツ……
コウキのパーティーは割りとテンプレ。




