190話:異常者
ブックマークも順調に増え、閲覧数も十万を越えた……多分だけど初投稿でこれは凄い…と思う、多分。……凄い事だったらいいな…
「お~い、起きてよ~」
「ん、んん…………」
誰かに頬をペチペチと叩かれている。
どこかで聞いたことのある声だが……誰だったか…。ゆっくりと目を開ければ、ニュっと俺の顔を覗き込む2つの黒緑の瞳。
「ッ!!?なっ!?え、メランコリー!?」
「おーおーおー!覚えててくれたんだねぇー?嬉しいなぁ~♪」
すぐさま体を起こし、メランコリーから距離を取った俺は拳を構える。
即座に戦闘になってもいいような状況だが、当のメランコリーはニヤニヤと笑って俺を見ている。
「いやいやいや、僕に戦う気は無いから安心してくれよ?そもそも、あの天使達から君を助けたのは何を隠そう、僕なんだゼ?」
「何…?」
一体何の為にそんな事を……
俺の予想では、“七つの大罪“系統の能力を全て集めれば何かが起こると考えている。故に、レヴィアタンを助けるメリットがあっても、俺を助けるメリットは何も無い筈だ。ましてやメランコリーは(隠せてないけど)正体を隠している。それなのにわざわざ天使達の前に姿を晒すメリットはなんだ?
「何故って顔だね?そんな疑わないでよぉ~♪まぁ僕も善意で助けたって訳じゃあ…無いんだけどね?あはは」
「………まあなんにせよ、助けてくれた事は感謝する。じゃあな」
思わせ振りな発言。何かを考えているんだろうが、今は何を聞いても話すつもりは無い。そんな顔をしている。
それならコイツと一緒にいるのは時間の無駄だ。レヴィアタンが近くにいない今、同じ“七つの大罪“の怠惰を相手にするのは分が悪い。勝てる時に仕掛け、契約を持ち出すその時まではお預けだ。
「あれあれあれっ?何で僕が助けたのか気にならないのっ?気になるよねぇ~?ねぇ?」
「鬱陶しいぞメランコリー、着いてくるな」
歩き出した俺に着いてきたメランコリー。口元をニヤつかせながら何度も俺に声を掛けてくる。めんどくさい奴だな…
「大体さぁ?ここがどこか、分かってるのかなっ?分かるわけ無いよねぇ~?」
「チッ…!」
俺の前に立ち、行く手を遮ったメランコリーはそう言うと、口角を上げる。フードを被ってるから顔全体は見えないが、口元で分かる。楽しんでるな、コイツ……
「はぁ……ああ、お前の言う通り分かんないよ」
「あっはは!だよねだよねだよね!」
面倒だから素直に認めると、メランコリーは愉快だと言わんばかりに笑いだす。ちょっと腹立つな……
それは兎も角、確かにここはどこなんだ?見た感じ森だが…
「ここはね?リンガス王国からずぅ~っと西にある森だよっ!勿論魔物もうじゃうじゃいる♪」
「おまっ…!はぁ………何でお前ら悪魔達は俺を遠くに飛ばすんだよ…、帰るのクソ面倒なんだからな…?」
「あっはは!そういえば君は“暴食“に呑まれたんだったねぇ?それなのに生きてるって…君はそうとう欲望が強いと見えるよぉ~♪」
『うるせぇ』と小さく吐き捨て、俺は森の木々を見つめる。場所は違うが、ここが俺のゼロだ──
考えてみれば、槍や斧を作っていた頃が懐かしく感じる。あれから…約半年か、早いな。
「…なぁ、アイツは……あの“強欲“と契約していた男はどうなったんだ?レヴィアタンとは分離してたみたいだが…」
「あはははっ!気になる?気になる!?」
「ああ、気になる。教えてくれ」
あの男は俺と似ている気がする。もしまた今後アイツとぶつかる事があった時の為に、少しでも情報が欲しい俺は素直にメランコリーへと聞いた。するとメランコリーは一瞬驚いたような口振りの後に、笑いながら話してくれた。
「君が“暴食“の穴に呑まれた後、彼は意気揚々に君の仲間に手を掛けたんだけどね?そしたらアイツ…w体の方が耐えきれなかったみたいでねぇ~血反吐吐いて撤退したんだよっ♪」
お腹を抱えて爆笑するメランコリー。前に会った時も俺の事を笑っていた。もしかしたらコイツは人の不幸とかが好きなのかもしれない。
「人間が悪魔を複数宿すなんて、本来不可能なのは当然なのにねぇ~。流石“強欲“と契約しただけあって、欲深いよねぇ~w」
「…?おい待て、それなら何で俺は2匹の悪魔を宿せた?3体目から体に異常が出るのか?」
俺の当然の質問に、メランコリーは嬉しそうにニコりと笑って拍手をする。バカにされている……いや、バカにしてるんだろうが、腹立つわ。
「いいや?本来なら、悪魔を1匹宿すだけでも人間には辛い筈だよぉ?でもね?でもねっ?願望や欲望、目標なんかあまりに強いと、耐えられるんだよ。それが人間と悪魔が契約する始まりって感じかなっ♪」
「つまり…?」
「うんっ!君は悪魔を2匹宿していても、平常心を保てるくらい欲深い……いや、強い目標があるみたいだねっ♪あははははっ!!」
「成る程な、何となくだが分かってきたよ。教えてくれてありがとな」
聞きたい事は取り敢えず聞けた。そうなれば次に行うのは人がいる場所を探す事。こんな森の中で野宿で一夜明かすのは命を投げ捨てるようなものだ。危険なので皆さんもやめましょうね(実体験)
「…………」
そんな事を考えつつ、森を抜ける為に歩き出したアキラ。そんなアキラの背中を静かに、それでいて粘着するように見つめる黒緑の瞳。
『悪魔を複数宿すのは勿論、完全体となった悪魔を宿して平常心のままなんて本来異常なんだよ、君は』
あの場にいた聖道協会の人間が彼を欲しがる理由が分かる。こんな人間、今までに例が無いからだ。恐らくあの戦いでアキラは天使達に完全にマークされる事になる。あの頭が硬い天使達だ、アキラを救うと称して抹殺する事だって十分にあり得る。
『そうはさせない。彼は僕の目的の為の大事な駒だ、この人間は絶対に渡さない』
普段のふざけた仕草が嘘のように冷たい瞳でアキラを見つめるメランコリー。それに気付いたのか、アキラは一瞬ビクッと体を震わせて振り返る。
「な、なんだよ……」
「ん~?いやいやいや、何でも無いよぉ~♪さっ!行こっか!」
「だから着いてくんなし…」
目を細めつつ、小さく溜め息を吐いたアキラは何だかんだ言っても激しく拒否はしない。本人の中で、イベントが起こりそうだという考えと、危険過ぎると考え。その両方がぶつかっているからだ。
「あはははは!ホントは嬉しいくせにぃ~♪」
「うっせ…」
厄介そうにするアキラと、その反応を楽しむメランコリー。そんな2人は森の中を進むのであった。
まぁそういう事です。




