189話:聖剣と邪剣を扱う少女達
ヒロイン合流。
「やられ、た…!あのクソ、悪魔が…ッ!」
握り締めた拳から滴るレヴィアタンの血。そしてその体からうっすらと漏れ出ている青黒いオーラ。近くにいるだけでも震えてくる程禍々しい気配だ。
「まさか別の“七つの大罪“の悪魔がやって来るとは…!それを引き寄せる彼はやはり貴重な人間です……実に欲しい…!」
レヴィアタンの放つ威圧感がこの場を支配する中、1人の男が興奮気味に声を上げる。それはラディウス枢機卿だった。
「契約者には逃げられましたが、ある意味好都合です。契約した悪魔本体を消滅させられれば、彼は普通の人間に戻せますから…!!」
緊迫した状態を破ったラディウスを皮切りに、先が蒼く染まった翼を生やした少女がレヴィアタンへと高速で迫る。
「うる、さい…ッッ!!」
「─────っっ!!?」
まるで落雷のようなスピードで迫った少女だったが、レヴィアタンはそれを完全に捉えて少女の手足を黒い水の鎖で拘束。そして拘束された少女の腹に向けて、蹴りを放つ。
「ガっ……ハ…っ……………っ……」
拘束された状況による、回避不可の足裏面での蹴り。それは少女を拘束していた鎖がけたましい音を立てて千切れてしまう程の威力。建物へと吹き飛ばされた少女が五体満足なのが不思議な程だ。
「な、ぜ…ここまでの力が……!くっ…、私は…!!」
「………撤退よ、ラミエルちゃん。“嫉妬“はもはや私達だけでは相手を出来ない…」
「…!?何を言って…!私はまだやれます…!!」
「ダメよっ!今の攻撃で分かったでしょ!?“嫉妬“は相手の力を消し、一方的な力を示す……2人だけでは相手に出来ない…っ!」
「…っ………分かりました」
歯を噛み締め頷いたショートヘアーの少女は、金髪の少女と共に大きな4枚の翼を生やして飛翔した。レヴィアタンのような悪魔とは違った神々しさのある輝きを放つ。
「あれが…天使…?」
呆然と空へと舞い上がってっ行った少女達を見つめていると、同じくレヴィアタンも空へと高速で飛び上がった。一瞬少女達を追うと思ったが、レヴィアタンは彼女達とは反対側へと飛んでいってしまった。
「色々起こりすぎて、訳が分からない……」
でもアキラは生きていた。それだけでも知れた事が自分の中ではとても大きい。
「また会いたい…」
その言葉呟くと同時に思い出す。アキラが別の悪魔に連れ去られた事を。
ならば今度こそ、自分がアキラを守って見せる。その為にはあの悪魔を探さなくてはならない。恐らくレヴィアタンはアキラがいる方角へと向かったのだろう。
「方角は…あっち」
ボクもレヴィアタンと同じく、アキラの元へと急ごうとした時、誰かに肩に手を置かれて振り返る。
「はぁ…はぁ……やっと、追い付いた…!やり過ぎだぞミル…!後速いって…!はぁはぁ……」
「ソル……ごめん」
息を切らしてそう途切れ途切れに語ったのはソルだった。アキラがいるかもしれない、その事で頭が一杯になったボクは、彼達を置いていってしまった。
「今姉さんが氷漬けにされた聖道協会の奴らを解凍してるよ。………?なんかあったのか?表情が何処と無く明るいような…?いや、気のせいか?無表情過ぎてわかんねぇよ…」
「……そんなに無表情じゃない」
「いやどの口が言って……って置いてくなよ!」
ちょっとだけムッとしたからソルを置いてツカツカと先へ進む。一旦ルナの所へ戻ろう、2人には嫌な当たり方をして、迷惑も掛けてしまった。その事をちゃんと謝らなくちゃ……
「……!人…?」
ソルと共にルナの所へと向かっていると、向かい側から長い黒髪に紅い瞳をした同年代らしき少女が歩いてくる。
「聖道協会…では無さそうね?」
「うん、違う。貴女は?」
「私は……ローザよ。ねぇ、この辺で黒髪に黒い服を着た男を見なかったかしら?」
「…!それって……もしかしてアキラの事を?」
「っ…!何故それを……」
お互いに雰囲気が変わるのを感じた。敵意は無い。だけど警戒をされている。
でもそれはお互い様だ。何故アキラの事を知っているのか……この女、何者?
「…穏やかじゃないわね。その目、私を殺すつもりかしら?」
「殺しはしない。でも少し話をしたい。少し手荒になりそうだけど」
「別に私は構わないわよ?姉妹に逃げられて少しイライラしてたから」
お互いに剣を抜剣する。
向こうは漆黒の剣に、紅いオーラがうっすらと見える。グレイシャヘイルが反応してる…?これはコル兄様と同じ反応……。…!まさかあれは…
「邪剣…?」「聖剣ってやつかしら?」
その瞬間、お互いの言葉が重なりあった。
そしてお互いに動揺の表情をして、『『え…?』』とまたしても重なりあった。
「ふふっ…」
「何がおかしいの?」
「別に可笑しくないわ。ただ戦う気が無くなっただけよ」
「…?」
突然笑い出したと思った矢先、彼女は剣を鞘へと納めて手をヒラヒラと振るう。まるで降参だと言わんばかりに。
「もしかして貴女がアキラの言ってた記憶の中に出てくる子かしら?」
「…?………??何の話?」
「あぁごめんなさい、突然過ぎて分からないわよね。どうやら向かう場所は同じみたいだし、話ながら行きましょ?」
「…?う、うん…」
よく分からないけど、アキラについて話してくれるようだから着いていく事にした。敵意も感じないし……
そしてボクがローザと共に歩き出すと同時に後ろから息を切らした声が聞こえた来た。ソルだ。
「お仲間さん?」
「うん。ソル、遅いよ」
「お前が速いって…!言ってんだろうが…!はあはあはあ……何で早足まで速いんだよ…!」
「ボクは普通に歩いてる。ソルが運動音痴なだけだよ」
「い、言いやがったな!?僕が1番気にしてる事を───ってだから置いてくなって!!」
隣を歩くローザは、楽しそうにクスクスと笑いながらアキラについて話し出してくれた。
その間もソルは必死になって後を追いかけていた。やっぱり遅い気がする……
作者的にヒロインな2人が合流。
アキラを巡って、ギスギスは絶対にさせない。アキラが調子に乗るから(鉄の意思)




