18話:ゼロから始める異世界生活(偽)
投稿遅いぞ定期
テーレーレーレ↓レッテッ→テ↑ー♪
そんな音が聞こえてきそうな朝。時刻は午……えっと…朝6時だ。
「絶対この世界に現代のアナログ時計作る…っ!」
分かりにくいったらありゃしない。
仕組みは簡単。この世界の魔時計の文字を変えればいいだけ。絶対やろう。
「って違う!こんな事を考えてたんじゃないんだよ!」
誰に言っているのかもわからないセリフを吐きながら手を振る。
何が言いたいのか、それは…
──俺、実は強いんじゃね?
である。
何を隠そう、俺は複数匹のゴブリンを、蹴りや拳で、言い方を悪くすれば暴力で解決。確認してないけど、多分殺したと思う。首の骨をへし折った感覚はあったし。
そして、だ。最近戦った大物…そう、熊だ。
熊を俺は殺した。しかもトドメは己の拳でだ。
「熊を素手で殺すなんて前代未聞だろ…!」
地球育ち、ましてや他国と比べて安全な日本で育ってきた俺が熊を殺した…。武術に覚えがあっても普通不可能だ。これって勲章物ですよ。
案外チート無しでもやっていけるかもしれない。現代知識はあっても、それがどうやれば作れるかなんてわからないけど。せいぜいライターぐらいだろうか?でも火の魔石があるから別にいらないよね。
「そう言えば…なんで異世界でウォシュレットトイレを作れるんだ?」
賢者の孫や軍オタハーレムだとウォシュレットトイレがある。…何故作れる?
お前ら科学系の本作ってる社会人と、ホントの軍オタで工場務めてた社会人だろ…?何故作れる?(大事な事は二回言う)
えっなに?社会人は皆ウォシュレットトイレの知識があるの?いいや無いね(即答)
例え知識無しでも仕組みさえ分かれば作れる?はぁ~?だったら異世界の人でも水で洗うなんて簡単に思い付くわ。
はぁ…!はぁ…!……ふぅ
失礼、チート持ってる奴を考えると怒りがね…。俺もホントはそのステージにいた筈なんだけどなぁ…。
「…ん?軍オタリュート君はある意味無能力…?あれ…?確か……重火器の作り方や組み立てかた、パーツを知ってるから無双してる…?あれ?俺と立場同じ…?」
………あれ?
「い、いやいや!リュートは転生してるし!?でもあの重火器は自分の知識だったな……っ」
額に汗を浮かべ、早足で自室の扉を開ける。
認めたくない現実に俺は逃げる為、外の空気を浴びに行く。
「あら、アキラ君おはよう」
「お、おはようございます…」
「どうしたの?そんなに急いで」
「ちょっと…怖い夢を見まして…」
夢と書いて現実、いやぁ…キツイッス。
兎に角俺はそれだけ言って外へと出た。今日は少し曇っていて涼しい。
取り敢えず昨日使った薪割り台の上に腰掛け、空の雲を見上げる。
「………本格的に考え直さないとダメなのかもな」
別に無双したかった訳でもハーレムを築きたかった訳でもなければスローライフを送りたかった訳じゃない。
ただ、憧れた主人公のような生き方を、カッコいい生き方をしたかっただけだった。
その為には大きな力が必要だ。異世界はスローライフ物でも手厳しい世界だから。
もし本当に……本当に俺が無能力だったら…
何の為に俺は…
「……………」
「どうしたんだ?ボケッとして」
ボケッと空を見て黄昏ていると、俺の近くにルオンさんがやって来る。
「ルオンさん…いえ特に」
「そうか?何だか諦めた顔してたけどな」
「そんな顔…してましたか?参ったな~あはは…」
「何かあったんだろ?どうしたんだ?俺に言ってみ?」
俺の肩に手を置いて、優しく話し掛けてくれるルオンさん。
俺は自分を少し笑うように口を開いた。
「俺…凄い力を貰う筈だったんです。それがあれば通常じゃ体験出来ないような人生を送れる、カッコいい人生を送れる程の力を。…でも俺にそんな力は多分…無いんです。ちょっと戦える程度の凡人……今思えば、楽に手に入れられるなんて甘いぞ!っていう天罰だったのかもしれないですね…。自分が強いと勘違いして、盛大にイキがって…あはは…俺カッコ悪」
そう自虐気味に話す俺に、真剣な眼差しで見つめてくるルオンさんは、やがて口を開いた。
「…それは──」
ルオンさんが何かを言い掛けたその時、近くの草むらが揺れ、何と4本腕の熊が飛び出し、現れた。
どうやって村のバリケードを越えてきたか分からないが、この状況はとんでもなくヤバい。
「っ!ルオンさんは家の中へ!早くっ!!」
咄嗟にルオンさんの前に立ち、熊公の視線を俺に集める。
「あの時の熊公…じゃなさそうだな」
足が震える。あの時殺され掛けた事を思い出すだけで心臓が握り締められるような苦痛が襲う。今すぐ逃げたしたい。
それでも…
「俺の恩人には絶対に手出しはさせない!!絶対にだっ!!」
「グルルル…!」
熊公が構えに入る。それを見て俺もポケットから石ナイフを取り出して構える。
「行くぞ…!熊こ──「おらぁぁぁぁ!!!」っ!!?」
俺の横を何が雄叫びと共に駆け抜けていき、それは熊公を殴り飛ばした、素手で。なんとそれは家へと逃がした筈のルオンさんだった。
「さっきアキラ君は自分をカッコ悪い、そう言ったね」
「え…?」
熊公を殴り飛ばしたルオンさんは、俺に背を向けたまま話す。
そしてゆっくりと振り返り、再度話を続けた。
「俺はそんな事ないと思う。俺を咄嗟に庇った時、アキラ君の足が震えていた。怖かったんだろ?アイツが」
「それは…」
「それでも俺を守ろうとしてくれた、戦おうとしてくれた。そんなアキラ君は、俺はカッコいいと思うよ」
そう言い終わると、ルオンさんはゆっくりと近付き、俺の頭を優しく撫でる。
「アキラ君の人生はまだ長いんだろ?なら鍛えていけばいいんじゃないか。見てたぞ?朝体を鍛え、魔法を練習してるの。アキラ君はちゃんと強くなろうとしてるじゃないか。今だって強くあろうとしていた」
そしてルオンさんは優しく微笑んだ後、『そんなアキラ君がカッコいいよ』
そう言ってニカッと笑う。
その言葉を聞いて、俺の今までは無駄ではなかった、そう思えた。
……でもこういうカッコいいセリフは俺がヒロインに言いたかった。
「そう、ですね…!折角若返ったんだ。無能力だって関係ない!ここから始めよう、イチから──いや、ゼロから!」
ここから。ゼロから始めよう。テンドウ・アキラの物語を
「──ゼロから始める異世界生活を…!」
………あ、これやべぇわ。
流石に怒られそうだよ。……Re:が無いから…まだセーフ、うん…セーフセーフ。てか俺のせいで感動も台無しだよ。恥を知れ恥を。
その後、何故素手で熊公を殴り飛ばせるのか気になった俺は、直接ルオンさんに聞いてみた。もしかしたらここの人は強いのかもしれない。たとえばラストダンジョン前の村なのかも。
「あぁ、あの熊はデスグリズリー。おっかない名前だけど、いうほど強くはないんだ。弱点が多い上に打撃に弱いしな。ここの村の近くだとそうだな…ゴブリンの2つ上程度の強さだよ。それがどうかしたのかい?」
「………」
無表情で体をプルプルさせる。
なら…俺があんだけ死闘した熊公は…
いや確かにアッパーで死んだのはおかしいと思っていたが……この仕打ちはねぇだろ…。
「伏線回収早いんだよバカヤロォォォァォォォ!!!!」
異世界生活で1番の雄叫びを上げ、目尻に涙を貯めて俺は家へと逃げ込んだとさ、めでたしめでたし。
主が知ってる異世界ラノベをぶっ混んでくるのはご了承下さい。異世界パロディーネタ小説なので、多少はね?(許して)
なお、全ての異世界物はリスペクトしております、はい。




