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188話:砕け散る復讐心

「あの男は……どこにいる…」


「あの、男…?誰の、事?」


「とぼけるなっ…!!」


会って早々、誰かも分からぬ男の居場所問われ、困惑の表情をわざとらしく浮かべるレヴィアタン。そのとぼけ顔のせいか、はたまた心に余裕が無いのか……彼女は憎しみに染まった瞳を浮かべて吹雪を強める。


「知らない、事は…知らな、い。誰の事、かな…?」


「決まってる……黒髪に橙色の眼をしていたあの男だ…!!」


「橙…………あぁ…“強欲“、と契約した…彼、の事か」


弟子であるアキラを、あの男に殺されたと勘違いしていると悟ったレヴィアタンは、必死になって笑いを堪える。

まだだ、まだバラしてはつまらない。


「復讐、その為に…ここ、まで…?それはそれは……ご苦労様、だね…」


少しだけ遊ぶ為に浮かべたレヴィアタン笑み。

その瞬間には右頬を氷の刃が掠めていた。反応出来る上に、消すまでの威力では無かった為、レヴィアタンは少し頭を傾けて回避する。


「御託はいい、その顔は知っている顔。洗いざらい吐いてもらう」


「ふふ、ふふっ…!丁度いい…機会、ここで君を……消す、としよう。───アキラの望む未来の為にも」


光が抜け落ち、まるで氷のような冷たい瞳で聖剣を構えるミル。その刃はかつての輝きは消え、まるで所有者であるミルを写したかのようにくすんでいる。


────────────


「っ…!」


「ほら、ほら……どんどん行く、よ…?」


全方向から放たれる黒い弾丸。それら全てを人間離れした動きで弾き飛ばし、その間に隙を見て氷の刃を飛ばす。

だがその氷の刃は、レヴィアタンに届くほんの僅かな所で突如消滅。それはアキラが使っていた能力を消すモノとそっくりだとミルは理解した。


「やっぱり、ね……君、弱くなって…るよ」


「…!」


「覇気、共に…剣幕は凄い……でも、弱い。復讐……それ、に囚われ…過ぎてる、ね」


「黙れっ……お前に何が分かる…!!」


もう自分にはこれしかない。あの日大事なアキラを守る事が出来なかった自分に出来るのは、アキラの無念を晴らす事だけだ。

今自分から“復讐“を取ってしまったら……ボクには何も残らない……


「お前、の心境…なんか知らない、よ。やっぱり……君の存在、はアキラを…惑わせる……───だから消えて、ね…?」


黒い水を巨大な爪のように纏ったレヴィアタンと、ボクの聖剣・銀零氷(ぎんれいひょう)グレイシャヘイルが火花を散らしてぶつかり合う。


「──っ!!そんなっ…!?」


まるで川を流れる水の如く、その水力に押されたボクの聖剣が競り負ける。宙を舞った聖剣へと視線を向けた瞬間、首に巻き付く黒い水。そのまま背後へと引っ張られ、石畳の地面へと背中を強打する。


「サヨナラ、ミル・クリークス」


「────っ」


無表情に死んだ眼したレヴィアタンは、そう最後に呟くと同時に黒い爪をボクの首へと振り下ろす。


ダメだった。

アキラの命を奪った張本人であるあの男どころか、アキラが宿していた悪魔によってボクの命は奪われる。無念だった。だけど……ほんの少し、ほんの少しだけ嬉しくも感じていた。


『これで……アキラの所に行ける…』


もう家と国に縛られて剣を振るう事も無い。

そしてなによりも、大好きな彼の元へと行ける。きっと彼の事だ、死んでしまったボクの事を笑い飛ばしてくれるだろう。





「…?」


だがいつまで経ってもレヴィアタンがその黒い爪を振り下ろす事は無く、ゆっくりと瞳を開けば黒い爪が首に触れるか触れないか付近まで迫っていた。


「な…んで……?」


そんな言葉がが漏れ出てしまったが、レヴィアタンはそんな言葉も聞こえてないかのように、まるで石像のように硬直している。


「………アキ、ラの…生命反応、が……下がって、いる?」


「っ…!?それはどういう意味───」


ポツリとこぼれ落ちたその言葉は、まるでアキラが今現在も生きているかのような言い方だった。まさか──そんな想いが汲み上げてくるのを感じたボクは、残る力を振り絞ってレヴィアタンの爪を退け、すぐさま体制を整えてグレイシャヘイルを手に取った。


「やられ、た…?アキラ、が…?だ、がこの…反応は…………」


とても小さな声でブツブツと呟くレヴィアタン。耳を済まして漸く聞こえる程小さなその言葉に、ゆっくりと1歩…足が前に出た。


「アキラが…生きているの…!?」


「………………」


何かを考えるかのように、聞き取り不可能な言葉を発しているレヴィアタンにボクがそう声を掛けると、一瞬瞳が此方を向いた。


「───行かなく、ちゃ…!」


「…!ま、待っ────くっ…!」


黒い爪を消滅させ、その背中に大きな2枚の翼を生やしたレヴィアタンは、反対方向へと高速で飛翔する。

ボクもその後を全速力で追い掛ける。走力には自信のあったボクでも全く距離が縮まらない。それどころか少しずつ離されていく。だがそれでも必死になって走り続けた。糸のように細い可能性の為に、、














「いやいやいや、危ない所だったねぇ?間一髪って感じかな~?」


独特の喋り方をする黒尽くめに、深くフードを被った男が瀕死のアキラを抱え立つ。そのフードの中から僅かに見てる口元は、嘲笑うようにニヤけている。


「そんな……何故…っ何故ここに“七つの大罪“怠惰のベルフェゴールがいるんですか…っ!!?」


「ありゃありゃありゃ……折角顔隠してるのバレてんだね。僕って案外有名人っ?」


ケラケラと笑い、抱え上げているアキラの顔を見て小さく笑う。


「底が無い、闇のように深い“欲望“……うん、やっぱりアキラ君はいいねぇ~♪」


嬉しそうに、それでいて無邪気な笑みの筈なのに、とても嫌な気配を帯びているフードの男、メランコリー。改めてベルフェゴール。


「彼は僕の方で預かるね~♪ここにいたら、天使(君達)に殺られちゃうからさぁ?」


アキラを抱えたまま、黒い翼を生やしたベルフェゴールは宙へと浮く。

隙だらけの動きにも拘わらず、2人の天使は攻撃をしない。否、出来なかった。


「おっ?おっ?おっ?レヴィアタンじゃんか~!──彼は僕が貰ってくよぉ?バイバーイっ♪」


一瞬視界に映ったボロボロの布を纏った女と、薄灰色をした長い三つ編みの少女へと手を振って、ベルフェゴールは黒い穴の中へと消えていった。アキラを連れて、、



「あのクソ、悪魔(野郎)がァァッッ…!!」


拳から、血が滴り落ちる程に強く握り締めた レヴィアタンは、ベルフェゴールに向けて最大級の殺意と憤怒を向ける。

そしてその瞬間、レヴィアタンの隣に立っていた少女もその一部始終を見ていた。


「………今のって………アキラ…?」

やっぱヒロインはアキラだったのかもしれない。(ベルフェゴールにお姫様抱っこされた姿を見ての感想)

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