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181話:嫉妬の悪魔・レヴィアタン

「ここは……ははっ、入れてくれたのか」


「いきなり走り出さないでよ、もうっ……」


黒のドーム内に入れた俺とローザは、石レンガの地面に体を打ち付けながらも立ち上がる。ローザが少し不機嫌になっているので、ここは素直に謝罪をしました。


「はぁ、全く。ホントアキラは向こう見ずに突っ走るんだから」


「あはは…いつもすいません」


なんとか謝罪を受け入れて貰った俺は、ドーム内を見回す。闇のように黒かったドームだが、内部は案外明るく、空に浮かぶ雲までハッキリ見える。まるで黒のドームが無いようだ。


「が……惨劇があったのは確かだな」


リンガス王国の大通りに出ると、荒れ果てた街並みに溜め息が出る。壁にこべり付いている赤黒い血の後。場所によっては人形(ひとがた)の影もある。


「この国で何があったのか……考えたくもないな」


「ええ……」


大通りで行われたであろう殺戮。どう考えてもレヴィアタンが起こした事で間違いない。そんなのと俺が関わりがあるとはな。


「ねぇアキラ…これを引き起こした張本人である悪魔の居場所、分かるのかしら?」


「ええ、あそこです。あの城に…います」


俺が指差す先にあるのはリンガス王国中央に佇む大きな城。そこから感じる強く、それでいて歪んだ気配。さっきの聖道協会の老人と同格だ。ハッキリ言って化物だ。


「でも…なんだろう、スッゴいドキドキする…!これって恋っ…!?」


「おバカ」


ゴミを見るような冷たい視線でそう呟いたローザは、俺を置いて先に行ってしまう。おいおい、突っ込んでくれなくちゃ。……突っ込んでよ。突っ込め(豹変)


─────────────


「不気味な程仕掛けて来ないわね」


「ええ…もう城前ですよ。しかも開いてるし…」


これは入って来いという意味なのだろうか。元々俺とローザを入れてくれたんだ、歓迎とまではいかなくても、許可をしているのだろう。

そしてそのまま巨大な扉を潜れば、大広間のような場所に出る。





「ま、さか……また君、に…会えるとは、ね……」


「「ッッ!!」」


か細い女性の声がどこから都もなく聞こえた。

その瞬間、まるで押し潰されるような威圧感(プレッシャー)によって膝を付く。一瞬にして心臓を掌握されたような嫌な気配がこの空間に漂う。


「アンタが“嫉妬“のレヴィアタン、だな?」


少し笑いながらゆっくりと立ち上がった俺は、上へと顔を向ける。そこには黒いボロボロのドレスを身に纏った、紺色の髪に明るい青のメッシュが入った美少女が此方を見下ろして立っていた。


「へぇ…?相変わらず、の愚者……蛮勇が過ぎる、よ……アキラ。他の者、なら…殺されて、いる」


ハイライトが消えた瞳をうっすらと開けて、小さく笑みを浮かべるレヴィアタン。

溢れ出る威圧感は強いが、敵対心は今は感じられない。本題を切り出すなら今だろう。


「なぁ、お前は……レヴィアタンは俺の事を知っているんだよな?だったら教えて欲しいんだ、過去の俺を」


「…?ま、さか……記憶が無い、の…?」


「ああ…気が付いたらアルテルシア魔大陸にいてな」


「へぇ……それ、は…“暴食“に食べられた、影響……だね」


「…!暴食……詳しく教えてくれないか……!?」


ニコッと笑ったレヴィアタン。笑顔の向けてくれたレヴィアタンに、俺を友好な関係を築けると思っていた。

だが記憶を取り戻したいが一心だった俺は、レヴィアタンがどういう悪魔か忘れていた、、




「嫌だ」


「ガッ───!!?」


「アキラっ!?」


レヴィアタンが笑顔を浮かべた次の瞬間、突如俺の目の前に出現したレヴィアタンは、俺の腹部に重い拳を沈めた。


そう、忘れていたのだ。目の前でうっすらと笑っている悪魔が、今俺達がいるリンガス王国を滅ぼした張本人である事を、、


「アキラ!しっかりして!」


「大、丈夫です……何故だレヴィアタン、何故突然攻撃を…ッ!?」


かなりの距離を吹き飛ばされた俺は、城の壁にぶつかる事で止まる。瓦礫が崩れる程の威力を受けた俺は、ローザの[治癒(ヒール)]を受けながらレヴィアタンへとそう叫ぶ。


「何、故…?そん、なの決まって、る…───わた、しに無い、モノを……持っているからだ…!!」


蒼黒い瞳で鋭く睨み付けたレヴィアタンは、手を翳すと黒い液体を飛ばす。


「…!!くっ…!俺はただ記憶を取り戻したいだけだってのに…!」


「やるしかないみたいね」


いち早く反応し、回避したにも拘わらず進路を変えて俺の頬を掠めた黒い液体。

ローザの言う通り、戦うしかないようだ。


「仕方ない……俺達が勝ったら、お前が知っている俺の情報を話して貰うぞ」


「わた、しに……なんの得もない、けど…いいよ。君達、じゃ勝てない…から」


うっすらと笑みを浮かべてそう小さく呟いた瞬間、レヴィアタンが消える。

どこへ消えたのか、そんな事を考える間も無く後頭部に走る衝撃。


「グッ──!!蹴りだと…!?速いとかの次元じゃねぇぞ…!」


「実力が違い過ぎる…!このままでは負けてしまう……アキラ、血の交換をするわよ!」


受ける攻撃を少しでも減らす為に、全身を蝙蝠へと変化させてローザの元へと急ぐが、レヴィアタンはただそれを見ているだけ。完全に舐められている。が、これを逃すのはあまりに惜しい。


ローザ隣に着くや否や、すぐに首筋へと噛み付いて血を吸い出す。そして受けた傷から剣を造り出そうとした瞬間だった。


「…ッ!?な、何でだ…!?」


「そんな……力が…使えない…?」


本来ならお互いの血を交換した俺達は一時的に能力が飛躍的に上がる。だが変化をまるで感じない。それはつまり“皇帝(マジェスティー)“と“女帝(エンプレス)“になれていないという事になる。


「ふ、ふふふふふっ…!気付い、た…?わた、し…の前、では……──あらゆる異能は使えない」


「そんな…バカな……!そんな出鱈目な能力はまるでチートじゃないか…!!」


「そう、だね……君の言う、通り“チート“ってやつ、だね……。誰もわた、しよりも優れた者はいらない…!!だから……消す」


黒の液体をネットのように展開した攻撃に、回避する為の場所が無い。そのまま捕獲されるように壁へと吹き飛ばされた俺は、見てしまった。




「かはっ………」


ローザの腹部に突き刺さったレヴィアタンの腕。首を掴んで固定するレヴィアタンは、俺を見せ付けるように俺の前へと放り投げた。


「ロー…ザ…?──ッッ!!ローザッ!!」


無我夢中で黒のネットを引きちぎり、ローザへと駆け寄る。止血の為に傷を圧迫して止めようとするが、止めどなく溢れる赤い血液。


「ダメだ…ダメだダメだダメだ…!こんな、こんな事あっちゃダメなんだよッ…!」


ローザの物語はまだ始まったばかりだ。彼女はまだ16年しか生きていないのにこんな事、あっては絶対にダメなんだ…!


「頼むっ!止まれ!止まれよッ!!……止まってくれよ…」


頭が真っ白になりかけたその時、俺の腕を掴むローザ。口から血を垂らしながらも、ローザは笑みを浮かべている。何故だ…何故笑える?


「私は……大丈夫っ…だから、そんな泣きそうな顔をしないで…?ごほっ……私には[治癒]がある……これくらい治せる…。だからアキラは…!」


強く俺の手を握り、強い意思の宿った瞳でそう語ったローザ。言わんとしている事は伝わった。なら俺にすべき事は決まっている。


「分かりました、戦います俺!だから見ていてください…!」


「うん…!」


ゆっくりとローザを隅へと置き、俺はレヴィアタンへと振り返る。気まぐれか、余裕か、或いは両方か……レヴィアタンは小さな笑みを浮かべたまま俺を見ていた。何かを期待しているかのような瞳で、、


「もういい、かな…?」


「ああ、いいよ。俺の全力で潰す」


能力を消される?上等だ。俺は今までそうやってこの異世界を生きてきたんだ、チート無しでな。その為に今日まで鍛えて来たんだからな。


「…!ふふっ…いい眼、だね……アキ、ラはやっぱり…その眼、じゃなくちゃ、ね…」


瞳は死んでいるが、会ってから1番の笑みを浮かべたレヴィアタンを強く睨み、俺は走り出した。

ある意味親子対決…?

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