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180話:聖道協会からの逃亡

やっとここか……

「うーむ……まるで鉄の壁だな」


「グラッジゾークで殺しても小さな穴しか出来ないなんて……」


黒いドーム前に到着した俺達は、中に入る方法を手探りで探していく。俺やローザの如何なる攻撃も通じない、まさに要塞のように硬い壁だ。


「…!そこのお前ら!!何をしている!?」


「チッ…またかよ…!」


これで3度目だ。毎回捕縛してもすぐに自爆をしてしまうので、目的などの情報も引き出せない。聖道協会の連中は死ぬ事を恐れていないのか?


「くっ…!ただでは終わらない…!!──[命を灯火(バースト・ライフ)]」


術者である男がそう言った瞬間、体を淡いオレンジ色に発光。刹那超高温の爆炎が綺麗に円形状に広がった。


「流石に3回目となれば俺でも対応出来るようになるな。ローザの方は……平気みたいですね」


「勿論よ。でも心配なのは2回目の爆発音と今の爆発音でこの場所が特定される事ね」


そう、ローザの言う通りかなりの爆発音と爆煙でこの場所が見付かってしまう可能性がある事だ。見回りに出ていた者が戻らなければ、当然警戒はする筈だ。


「確かに……いくらここが木々に囲まれているからと言って、油断は出来ませ────ッ!!」


俺がそう話していると、俺とローザを狙った広範囲光弾が放たれる。いち早くそれを察知した俺はすぐさま光弾を全て弾き、放たれた方角を睨み付ける。


「これはこれは……どこの汚ならしい魔族かと思えば悪魔宿しではありませんか。久しいですなぁ」


「誰だお前。俺はアンタのような爺さんに知人はいないぞ」


「それは悲しい事ですねぇ」


『ホッホッ』と笑い、顎髭を撫でる老人。先頭に立ち、他の者とは違った白いローブ。そして何より、その老体からは考えられぬ程の魔力を感じる。全く油断出来ないその気配に、俺とローザは額に汗を浮かべて戦闘体制に入る。


『強いな、この爺さん。側近らしい奴もかなり強い……コイツらが聖道協会のトップか?』


そう感じてしまう程圧倒的な力を持つ老人に、俺は玉の汗を流す。

例えあの老人から逃れられても側近の者達が残っている。溢れ出る気配で分かる、俺とは比べ物にならない程の殺人経験がある連中だと、、


「私達を覚えていないという事は…記憶が無くなったのですかな?それはとても残念な事ですなぁ」


「嘘をつくなよ、ちっとも残念そうじゃないじゃないか…!」


「ホッホ、バレてしまいましたか」


楽しそうに笑う老人に、俺は舌打ちをしてゆっくりと後ろへと下がっていく。後ろは黒い壁であり、周りは聖道協会の者に囲まれている。

だがここで戦うのはあまりに愚策。そう判断した俺は、アクエリアス戦のように全身を小さな蝙蝠へと変化させ、ローザと共に逃亡を図る。


「逃がしはしない」


「なッ──!?ッッ…!!は、はは…!速いな、お前…!」


目で追えなかった。

音速、いや光速のように一瞬にして俺の心臓部分を貫こうとした黄緑色の髪をした青年。紙一重で心臓を回避したが、左肺をやられた。


「お前が覚えていようがいまいが関係無い。あの日受けた屈辱を晴らさせて貰う…!!」


「ガッ───グ…ッ……」


憎悪にまみれた瞳を向けた黄緑色の髪をした青年、グラトスはまたしても目に追えない速度で加速。太もも、腕、横腹などを浅く切る。同じ剣を扱う者として、奴が意図的に痛め付けている事はすぐに分かったアキラは、苦し紛れに剣を横一線に振るう。


「遅い、遅すぎるぞ。悪魔の宿っていないお前程度の速度では決して届かない!一方的な“力“をお前に見せてやる」


全身に増えていく剣による傷。ローザに手を出されていないだけまだマシだと感じるのは、自身の再生能力のお陰か。


「グラトス司祭、それまでにしなさい。そこの女魔族はどうでもいいが……この男は使い道があるのでね、フフフッ」


「了解しました。喜べ、お前の女は俺が殺してやる。勿論守ってもいいぞ?まぁ…お前は何も出来ず、ただ黙って見ている事しか出来ないだろうがなァ!!」


「………」


顔をニヤけさせてそう言ったグラトスは、またしても視認不可の速度で動き出す。

攻撃を仕掛けようにも速すぎて捉えられない。このままではローザが殺されてしまう。


「……甘いな」


「ガハ…ッ……な、何故だ…!?何故反応出来る…!?」


が、俺には異世界で戦う為の知識がある。それこそグラトスのように規格外の速度で動く奴なんかは当然シミュレーション済み。


「お前は速いからな、逆にその速度を利用させて貰った」


相手が速すぎて捉えられないのならば、トラップを仕掛ければいい。ローザを狙うと分かっているのなら、ローザを囲うように剣を生やせばいい。グラトスが俺を切り刻んで遊んだ時に流した血が効果あった。あの速度だ、どうせ気付けても止まれやしない。


「腹に突き刺さってて痛そうだね。ま、ここには聖職者しかいないから回復なんてお手の物なんだろうが……少しは見返してくれたかな?」


「貴様ァ…!!」


「イキれる時にイキっとかないとね」


グラトスの笑顔でピースして煽る。戦い方や言動、仕草なんかで大体分かった。コイツはバカだ、しかも激情するタイプの。そんなバカは煽られたらもっと粗くなる。プライドも高そうだから尚更効くだろう。


「ホッホッ、相変わらず面白い事をしますなぁ。1度ならず2度もグラトス司祭を返り討ちにするとは」


「……何で笑ってんだ?アンタの部下が瀕死なんだぞ?他の奴らも何故コイツを助けようとしない?───…成る程な」


他の者とは明らかに強さのレベルが違うグラトスが瀕死になっても焦る事なく、笑っているのが気味が悪かった。

だが腹部に負った傷が少しずつ再生していくグラトスを見て、理解した。


「最初っから勝てるように仕組まれてたのか。……逃げますよ、ローザ」


「えっ?えっ!?」


ローザの手を掴み、俺は黒の壁へと走る。

話の流れに着いていけていなかったローザは、突然手を握られた事で驚いている。安心してくれ、正直コイツらの言っている事は俺にも分からない。面識はあるのだろうが、どうせ教えてはくれないだろうし。


「ホッホッ、無駄ですよ。貴方は貴重なサンプル…!逃がしはしません!」


背後から老人の声が聞こえた瞬間、次々と放たれる白い光線。見ただけで分かる、あれに当たったら蒸発してしまう。それ程までに危険だ、絶対に当たれない。


「はははっ…!」


「何でこんな時に笑ってるのよ!?頭おかしいんじゃないの!?──ってちょっと!前は行き止まりよ!?」


「大丈夫です、()()()通れます…!」


突如壁に向かって走り出したアキラと、背後から迫る即死光線に頭が追い付かないローザは、珍しく焦りの声を上げて叫ぶ。

が、それはアキラに届く事はなく、アキラは地面を強く踏締める。手を繋がれたローザはそのまま引っ張られ、壁にぶつかる───と思われたが、アキラとローザは黒い壁へと消えた。


「…逃しましたか。ホッホ、まぁいいでしょう。術式はもうじき出来上がります、その時があの男、そしてレヴィアタンの最後です。クククッ……」

色々頑張ります。

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