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176話:戦いの後の船内

船内ッ!

「ふぅー、間一髪だったな」


そう言って額の汗を拭ったハジメ。

ただ今船内であり、船の損傷は【星屑の厄】から受けたもののみ。アクエリアスの最後の自爆で受けた損傷も、死人も誰もいない。何故なら、、


「まさか船ごと浮かばせてしまうなんて……」


若干呆れ気味でそう呟いたのはローザ。彼女の言う通り、ハジメは丸々船を竜巻に飲ませて空中へと飛ばしたのだ。それもアクエリアスの爆発が届かない範囲まで、、


『これが出来るなら空飛んで行けばいいのに……どうせバカデカイ鷲の背中に乗れるんだから』


どうせ力を隠したいとか厄介事に巻き込まれるのが嫌だとかの理由だろう。大体の主人公は目立つのが嫌いな奴ばかり。何故目立とうとしないのか俺には分からないな。大体主人公が行く先々で事件が起こるんだから無駄な心掛けなんだがな。


「ハジメ、魔力の方は平気なのか?確かもう魔力が無いと言っていたが……この高度で落ちたら海の藻屑だぞ?」


俺とローザは飛べるからいいが、船員達が不憫過ぎる。ただでさえ【星屑の厄】と【厄災の十二使徒】に襲われたのに、更に落とすとか鬼畜過ぎるわ。


「いや、さっきマジックポーションを飲んだから平気だよ」


「……そっか」


ハジメの肩に乗っている小さなスライムが吐き出した瓶を見せるながらそう言ったハジメ。

はい出ました、チートスライムね。異世界のスライムは物理無効の化物ってそれ1番言われてるから。しかもコイツはお腹の中に貯蔵出来るヤツだし……便利だな。


『あれ?てかあのスライムって前に……──あー、俺が怪しくて偵察してたのか』


見覚えのあるスライムを見て、すぐに思い出して即理解。まぁわざわざ言う事でもないな、俺が怪しい事を言ったのが原因だし。


そんな事を考えながら黙っていると、船員達がハジメ達を讃えて騒ぎだす。まあ船を守ったのも、アクエリアスを倒す鍵になったのはアイツらのお陰。甘んじて邪魔者は消えるとしよう。



「お疲れ様です、ローザ」


「ん…ありがとう。って…また敬語が混じってるわよ?」


船の端の方で静かに海を見ていたローザへと声を掛けると、儚げな顔をしていたローザは俺の方へと振り返ると柔らかく微笑んでそう言った。


「あはは……どうしても混じっちゃうや…」


「戦いの最中は普通に話してくれたのに……」


少しムッとした顔に、超至近距離でジト目で覗いてくるローザ。はえ~…これがガチ恋距離ですか。


「どうしたの?顔がどんどん赤くなってくけど」


「なっ、何でも無いです!」


何故ローザはこんだけ男の顔を自身の顔を近付けられる…!俺がちょっと動けばキス出来てしまう距離なんだぞ!?ローザはウブなのか積極的なのか分からない……。いや、純粋なだけか。


「向こうは随分盛り上がっているようね。アキラは行かなくていいの?」


確かに向こうではハジメが英雄だの恩人だの言われて盛り上がっている。俺もローザも活躍したつもりなんだがなぁ……俺達の雰囲気が怖いとかか?俺左袖無いし、ローザはゴスロリチックな服装だし……あ、絶対これだわ。変な格好で言えばハジメも学生服だから大概だと思うけど。


「俺は……まぁハジメのように主人公に、英雄になりたいとは考えますが……今回のはアイツがいたから勝てたようなもの。なら俺が混ざるのは違うかなって。それに……」


「それに?」


「ローザが1人寂しそうに眺めていたので……──あ、あはは、なんてね!俺なんかいても邪魔で気不味いだけですよね…!」


俺の勝手な想像の域を出ないが、ローザは──いやランカスター家は俺を婿養子にする予定の筈だ。そこに彼女の意志が無くても。

つまり、男性慣れしていないローザが俺といるのは不快だろうって訳だ。後ハジメに惚れられても困る。色々気不味いし、そういうのからも守れと言われたしな。


「ん…?」


ローザにハジメが近付かぬよう、監視目的で賑わっている方へと向かおうした俺の袖を掴まれる。振り返ればローザが可愛らしく袖をちょこんと掴んでいた。


「別に…邪魔でも気不味くもないわよ!その…気に掛けてくれてありがとう…っ」


「お、おうっ!」


あら可愛い……

ローザは背丈が小さくて、無敵のロリフェイスだからこういう可愛らしい事をされるとマジでくるな。どうしよう、顔ニヤけてないよな?


「だから、その……もう少し私の相手、してくれる…?」


「も、勿論…!お話しましょうか!あ、それともまたチェスします?」


「そうね、両方やりたいわ。アキラの事、もっと詳しく知りたいから」


可愛い……16歳の少女って皆こうなのか?俺が高校の頃は──あ、そういう想い出が無いや……


「行きましょう」


「はいっ!」


袖から俺の手へと掴む場所を変えたローザは、俺を引っ張るように部屋へと向かう。なんだか嬉しそうな顔をしているし、あの戦いの後なのに元気なのは年相応かな。可愛らしくていいじゃないか、やっぱ子供は元気に笑顔が1番だね。


───────────


お互いに赤面した男女、密室……だが何も起こる筈もなく、俺はチェスで5試合したけど完敗した。ハンデを貰ってこのザマだと…!?これじゃあプライドが傷付いたぜ…!


「ふふっ、アキラは弱いわね。せめて3手先は考えなくちゃ」


「いや、考えてるんすけど……」


クイーン無しというハンデを貰い、少ない頭をフル回転させてこの結果って……ステルメイト(引き分け)に持ち込もうとしても完璧に狩られるんだから恐ろしいわ…


「それにしてもアキラは変わってるのね。幼い頃から体を鍛えるなんて。聞いた限りじゃ育ちは良い筈なのに…何故そんな事を?」


「主人公……いや、英雄と言った方が分かりやすいですかね。物語に登場する者達に憧れてしまったんですよ」


6試合目をしながら質問に答える。

俺の過去なんて大した事ない地味な話ではあるが、確かに小学生の頃には軽く腹筋付いてたっての俺の少ない自慢だ。


「確かに男女関係無く英雄には皆憧れる。それでもアキラのやって来た事は少々狂気的よ?友達に石を投げさせたり、高所から飛び降りるなんて……」


「あっはは、そうですか?石を投げて貰ったのは反射神経を鍛える為ですし、高所から飛び降りたのだって色々理由があっての事ですし」


懐かしいな……あれは確か中2の頃だったか、転生する為に三階から飛び降りて大怪我したのは。あの後両親にスゲェ叱られたっけな…


「普通はそんな事しないわよ……やっている事は自殺と何にも変わらないじゃないの。それと、単騎で前線に出過ぎよ」


「ん?あっ!?俺のナイトがァァ!!」


俺のナイト様がポーンごときに殺られた…だとッ!?

そしてそこから流れるようにポンポンポンポン駒は取られ、キングだけになるという事態が発生。に、逃げ場が無い……


「チェックメイト、よ」


「舐めプせずに一思に殺して……」


「弱者には死ぬ権利さえも握られるものよ」


「ぐっ…!」


ローザのドヤ顔は可愛いし、言っている事も案外正しいから何も言い返せない…!チョー悔しい何も言えねぇ…


丁度6試合目が終了した所で、部屋の扉がノックされる。誰だ?と思い、扉を開ければそこには何とハジメ君がいました。


「ちょ、ちょっと!?何で閉めるんだよ!?」


「すまん、条件反射で」


「何で俺が来たら条件反射で扉閉めるんだよ…!」


「まぁいいや、それで何か用か?」


「酷い対応だなオイ!まぁいいやってセリフ言うとしたら俺じゃねぇ?はぁ……あ、船港に着いたぞ」


ウッソ……3日掛かるんじゃなかったっけ?何でそんなに速いんだ──ってのは愚問だな、どうせハジメが風魔法で加速したからだろ。


「随分と速いのね…」


「元々危険な海域を避けて通る予定だったんだが、空を飛んでしまえば関係無いからな。……な、なんだよアキラ…」


「いや、別に」


ローザの呟きに答えたハジメ。当然俺はその間に入ってハジメに細目向ける。なろう主人公っての喋るだけで女を落とせる謎技術がある。後は適当にチンピラでも追い払ったら惚れられちまうんだから怖いよね。


「んじゃ伝えたら俺は行くぞ、またな。………あ、そうだ、忘れる所だった。一緒に戦ってくれて、ありがとな」


背を向けて歩いていたハジメは1度止まってそれだけ言うと、再度歩きだす。今度は止まる事無く、階段を登って消えていった。


「全く…去り際まで主人公ってか?コンチクショウ」


「ほら、訳の分からない事を言ってないで私達も行くわよ」


俺の背中をポンっと押してそう言ったローザは、先に行ってしまう。また置いていかれる前に、俺は駆け足でローザの後を追い、共に階段を登る。


「まっぶ……」


手で傘を作って日差しから目を守りながらそう呟く。やっと人間がいる大陸までやって来た。後は俺の記憶を取り戻せるかもしれないリンガス王国へと向かうだけだ。

次の話から章が代わり、そこでは再度悪魔関連をやる予定ですのでよろしくお願い。

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