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175話:割れる水瓶

…勝ったな

ああ…

「さて、どうしようか…」


カッコつけて『大丈夫だ、お前も俺が守る。だから成功させろ、その2属性魔法を』とか『…!ふふっ…了解、主人公(ハジメ)』って言ってしまった。流れ的に言わずにはいられなかったからつい……


「だが1度言った言葉を守るのも主人公への道……なら守り通さなくちゃな」


本当はヒロインを守る時に言いたいのだが……生憎俺の周りには惚れている子はいない。唯一俺に着いてきてくれるローザくらいなもんだ。しかもローザは俺より強いし……


「やれやれ…ホント、アイツ(ハジメ)の補正が羨ましい──なァッ!!」


アクエリアスが放った連続光線を全て弾いてハジメを守る。質の悪い攻撃ばかりしてくるアクエリアスの事だ、アイツもハジメがヤバい事をしていると分かっているんだろう。攻撃の7割がハジメを狙ったモノばかり。


「私達は恐れるに足らないと思われてるのかしら、それは節穴が過ぎるんじゃないかしら?」


「ホントホント、妬けちゃうじゃないか。なぁ…?アクエリアス」


ローザが放った黒の斬撃と俺の放った赤の斬撃が重なり、クロス状となってアクエリアスへと突き進む。


──ギィィィィゥゥゥアアアアア!!??


1つの水瓶から放った水撃を突き抜け、水の壁を破壊し、触手の盾さえも貫いたその攻撃は、アクエリアスに大量の出血をさせ大きなダメージを与える。

すぐさま再生するとはいえ、あれほどのダメージを食らっては俺達を無視できないと認知する筈だ。


「───っ!そう来るか…っ!」


開眼したアクエリアスは水撃ではなく、俺達を囲うように黒い穴を出現させ、そこからバランスボールサイズの隕石を放った。

成る程、これならハジメも狙え、邪魔な俺やローザを狙う事が出来る。だがこの展開も大方予想通りだ。


「全員頭を下げろッ!!」


2本の剣を重ね合わせ、双頭刃を造り出す。そしてそれを回転させ、赤い円形の斬撃を全方向に飛ばす。その赤い斬撃は1撃で全ての隕石を破壊し、俺はニヤける。


「1度こういうのやってみたかった…!」


「また訳のわからない事を…。でも流石ねアキラ」


やはりローザの理解は得られないが、これも慣れた事。何度同じ反応をされた事か…

アクエリアスからの攻撃に警戒しつつ、俺はハジメへと視線を向ける。


『苦戦してるみたいだが……ま、どうせ成功するから心配はいらねぇな』


周りを全く気にせず、魔力を練る事だけに集中しているハジメ。多分俺かローザ、或いはミザリーがピンチになったら技を放つ事だろう。全く…確約されてる成功って強いよな、羨ましくて仕方ないよ。


「しっかし…あの水瓶を使った放水を仕掛けて来ないな」


「あれだけ弱点の水瓶を狙ったのだもの、警戒されて当然ね。先の攻撃のお陰でアクエリアスは警戒をしている」


「だな。何か特に俺に強い視線を感じるし」


隕石を1度に大量切断した俺を警戒し、強い敵意を向けているのは感じていた。今攻撃が少ないのは俺を潰す方法を考えているとかか?


「──ッッ!!?くっ…!!」


そう考えた矢先、俺の周りのみを囲う黒い穴が出現。そこからとても細い水のレーザーが放たれる。実に細かく速い、そして数が異常に多く、回避出来る場所が極めて少ない。


「アキラっ!!」


「平気だ…!また厄介な攻撃を──ガァッ……!?」


ローザやハジメではなく俺だけを集中的に狙うアクエリアス。速すぎるそのレーザーを受け、腹を貫通。回避は勿論、部分的な蝙蝠への変化の時間も無い。

俺の体を貫通したモノも、回避出来たモノさえ黒の穴へと消え、違う場所から放たれる。永久機関且つ殺意が強い。


「ウグッ…!──ガ…ッ…!」


右肩、左太腿、横腹に左胸。次々と貫通していく水のレーザー。左肺を貫通した事で肺がまともな機能を失う。息がまともに吸えず、肺に液体が入っていく不快な感覚が襲う。


「アキラ!今助けるから!!」


ローザがグラッジゾークを振るい、黒の穴自体を殺していく。が、消す度に新たな穴が生まれ、アクエリアスはその間を狙ってローザを水瓶の水を放水。俺をジワジワと痛めつつ、助ける為に動いたローザを狙う……実に陰湿で性格の悪い奴だ。


『不味いぞ…ッ!このままじゃ俺が死ぬ…!いやそれだけじゃない、俺達が死にそうになってはハジメが助けに入る…!そうなったら2属性魔法が完成しない…ッ!』


それだけは絶対にあってはダメだ…!俺のせいでフラグが折れてしまう。

だがどうする!?俺にはこの状況を打破出来る力も方法も無い…!


「力も方法も無いだぁ!?ざけんな…!やれなくてもやるんだよッッ!!」


全身に力を込め、指先から体を分解していく。

今の俺に出来る事でこの状況を打破出来る方法。それは体を数多の蝙蝠へと変化する事だ。


「出来る出来ないじゃねぇ、やるしかねぇんだ!!」


一部分だけの蝙蝠化ではなく、全身が段々と小さな蝙蝠へと変化していく。それはまるで鳥の群れの如く一塊になっている。


「いったい何が──きゃあっ…!?」


突如アキラが蝙蝠の大群になったと思った矢先、その蝙蝠の大群が自分の元へと向かってくる。そしてその蝙蝠の大群に拐われるように、強制的に移動をさせられた。


何故そんな事を…そう考えた瞬間、私が先程までいた場所にアクエリアスの水撃が放たれた。あの黒い穴を消す為に意識を向けていた私は、危うく直撃する所だった。


「ふぅ…危なかった……間に合って良かったよ」


「あ、ありがとう…」


私を拐った蝙蝠の大群は少しずつ人形(ひとがた)となり、それはアキラへと変わる。もしやと思っていたが、まさか本当にアキラだったとは……


──ギィィィェェェェウウウウァア!!!!


連続水レーザーを打破され、ローザを狙った攻撃を攻撃さえも避けられたアクエリアスは激怒したのか、3つの顔全ての口を開けて咆哮を上げる。


「──!!今度は何だッ!?」


次は何が来るのか、そう考えた瞬間下の海水が迫り上る。それは100mを越える優に海水の壁が円形に広がる。


「まさか……俺達ごと飲み込むつもりじゃねぇだろうな…?」


俺の予想ではこれから俺達を囲う海水の壁が崩れる。まるで津波のように、、考えたくない最悪な事態だ。


「っ…!う、上…!」


ローザの指差す先である空を見れば、中心を埋めるように展開されるおよそ1000を越える隕石と水の塊。


「逃げ場が……無い…!?くっ…!!」


蝙蝠へと変化させても回避は出来ない。真下の海へと逃げてもあの津波に飲まれるだけ……最悪だ、最悪すぎる…!!


「アキラ……」


「分かってる……」


震えるローザが俺の手を握る。俺も分かっている…“死“が目の前まで迫っている事に。

ダメだ、納得出来ない。まだ死ねない。俺の死ぬ場所は断じてここじゃない。


「まだだ……まだ死ぬには早い。まだ()()は死なない…!そうだよなァ!!───ハジメ!!」







「勿論だアキラッ!!──氷滅の雷帝(ヘル・ケラウノス)!!」


背後からハジメの声が聞こえた瞬間、海水の壁へと向かう紺碧(こんぺき)の氷竜が一瞬にしてその壁を凍結。そして空には荒れ狂う金色(こんじき)の雷竜が隕石共に水の塊を消滅させていく。その姿は双竜。


「凄い…一瞬で状況を変えた…!」


「はぁ……マジチートだわ」


俺達に“死“を悟らせる程の強大な障害を一瞬にして破壊した氷と雷の双竜は、ハジメの周りを浮遊する。

とんでもない魔力を帯びている。見ているだけでゾクゾクしてきやがる。


「完成したんだな。思ってたのとは大分違うがぁ……まぁいいか」


「2人のお陰だ、ありがとう。───この双竜でトドメを刺すッ!2人共、俺に合わせてくれ!!」


「へいへい…主人公様(ハジメ)の言う通りに。───やるぞ、ローザ」


「ふっ…任せなさい」


小さく微笑んだローザはグラッジゾークに力を籠めると赤黒い光を放ちだし、小さく黒いプラズマが弾けだす。

片や俺はハジメからの言葉に一瞬ピクッとしたものの、滴る血を次々と剣へと変えて、円形のアーチを造り出す。


「消し去れッ!!ヘル、ケラウノス!!」


ハジメが腕を振るうと同時に動きだした2頭の竜。それに続いて俺の剣のアーチとローザの赤黒い球体を放つ。



──ギィィィアアァァァウゥゥゥゥゥッッッ!!!!


全ての瞳を開眼し、大咆哮を上げたアクエリアス。そして3つの水瓶と自身の3つの口から巨大な水撃を放つ。6つの水撃が全て重なり、俺達の攻撃とぶつかり合う。


「敗け、ない…ッ!!俺は絶対に──!!」


「当然だ!これだけして敗けたら一生怨むぞ…!──リコスを」


「訳の分かんない事を言ってるな!!──決めるぞアキラ!!」


「言われなくてもやってやるよッ!!──デェリァァァッッ!!」


ハジメの竜巻と俺のクロス状の斬撃が合わさり、刃を纏った大竜巻へと進化する。それはダメ押しの追撃だ。


「「これでッッ!!終わりだァァァッッ!!」」


──ギィィィィゥゥゥアアアアアッッッ……ァァァ…!!


双竜が海水の壁を破壊し、赤黒い球体は触手の全てを腐食させ、大量の紅い剣がアクエリアスの全身を汲まなく切り刻む。そしてそれら全てが合わさりあい、アクエリアスの水瓶に届く。

1つ、また1つとアクエリアスの水瓶を破壊し、そして、、



─ギィィィィィイイイイイイッッ───────


身を裂くような断末魔の後に、アクエリアスの水瓶を全て破壊する。

そして瞳から光を失ったアクエリアスはそのまま後ろの海面へと倒れた。


「勝っ…た…?」


「……いや、まだだ。見ろ」


俺は倒れたアクエリアスへの指を指す。

その先では倒れたアクエリアスの体で光る水色のラインが点滅を開始した。


「まさか…!全員逃げろ────!!」


俺と同じ予感を感じ取ったハジメは、俺とローザの手を掴み、巨大な鷲の背中に乗せたと思った矢先、竜巻を鷲に纏って加速する。

後方のアクエリアスへと視線を向けると、光の点滅が消える───瞬間に一瞬眩い光を輝かせた。


「やっぱただじゃ終わらねぇよな……!」


俺がそうポツリと呟いた瞬間、夜を昼へと変える程の光の後に、鼓膜を破るような大爆発音が響き渡った。



こんな面倒な奴がまだ10体もいるとかヒデ。


次の次から新章です。この辺で中盤…いやチュートリアル的なのが終わった……かも…(長げぇよ)

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鳥頭の人の赤青緑とかのクソモスに似た匂いがする
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