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173話:最終形態

「体が熱い……力が溢れてくるのを感じる…」


ローザの血を飲んだ事で、早速体に変化が表れた。ジギタリス戦でもそうだったが、特別な血だと改めて理解する。


「おっ……月が…」


段々と沈んでいった太陽はやがて月へと変わり、大きな満月が海を照らしている。

もう月の形が1周したのかと染々に眺めていると、俺の体にアクエリアスの光線が貫通した。


「あ、アキラッ!?」


その姿を見ていたハジメが声を上げるが、俺は平気だと言わんばかりに手を上げて答える。

俺だっていつまでも弱者じゃない。いつも俺より上だと認知した存在から技術を盗んできた。今だってそうだ。


「ちょっと調整が難しいが……なんて事ないな」


体を一部分だけ小さな蝙蝠に変えて攻撃を回避する技術。これはジギタリスが“キング“になった時に使っていた技だ。


「俺はまだ吸血鬼族(ヴァンパイア)の血に慣れてない。が、ローザの血を飲んだ俺は───強いぞ」


剣の形状を変化され、命を刈り取る為だけにあるような大鎌を大きく振るう。それは降り続ける隕石を切断し、赤い斬撃がアクエリアスへと突き進む。


──ギギギィィイイ!!?


巨大な水の壁を瞬時に作り出したアクエリアスだったが、それさえも二つに切り裂く赤い刃がアクエリアスを襲う。

流石は世界から恐れられている怪物だ。驚愕の声を上げつつ、瞬時に自身の触手を分厚く重ね合わせて守りの体制に入った。


──ギィィィィイェェェェアアアアッッ!?!?


触手の壁をまるで豆腐でも切るかのように切断されたアクエリアスは理解が出来ないといった声上げ、切断された触手から真っ赤な血を飛ばす。


「5本、か。まあ重畳だな」


ローザの血を飲む事で身体能力と共に、再生能力を始めとしたその他能力も底上げされている。今の斬撃だってそうだ、切れ味が先程とは比べ物にならない。


「1/2、か。どうせ俺は運が悪いから──なぁッ!!」


5本の触手を失ったアクエリアスはすぐさま再生を始める。が、一気に再生は出来ぬようで、再生が先程と比べて圧倒的に遅い。読み通りだ。

そしてその間を逃す程余裕の無い俺は、大鎌を再度槍へと変化。先程とはサイズ感が違う、どこか見覚えのある捻れた二又の紅い槍になってしまったが気にせずすぐさまそれを投げる。


「ハジメッ!!」


「分かってる!」


再生しきれていない触手の壁を抜け、残る3本の触手で防ごうとするアクエリアス。だが水の壁に5本の触手を犠牲にして守った俺の攻撃を防げる訳がない。

残った3本の触手を突き破り、水瓶に一直線に迫る紅い槍。だが、、


「おぉ……そう来るか」


何としても水瓶を守ろうとするアクエリアスが取った行動。それは自身の口から放った放水。その威力は水瓶4つ分の放水レベル程あり、最終兵器といった感じだ。それを出しただけあり、俺の槍は弾き返して逆に放たれた水が俺とローザを襲う。


「流石全世界の厄と言ったところかしら…しぶといわね。でも──」


だが俺の隣で滞空しているローザがグラッジゾークを切り払うと、赤黒い光が強烈な水撃に触れた瞬間モーゼの如く2つに割れる。


「私の邪剣の前では無力よ」


「ヒュー…カッコいい~……」


ぶっちゃけ俺よりも強いローザに震えながらも軽く拍手をする。

アクエリアスもまさか今の水撃を2つに割られるとは思っても見なかったのだろう、俺達ばかりに視線が向いている。




砂塵の大竜巻(ストーム・ダスト)ッッ!!」


アクエリアスの視線外から放たれた奇襲。それは横にうねる大砂嵐であり、それを放ったのは勿論ハジメだ。俺が槍を放った瞬間に叫んだのはこの瞬間の為だ。


「どうせ補正の無い俺の攻撃が防がれるなんて分かりきった事だ。だったら盛大にヘイトを集める役割ってのもありだろ?」


「よくわからないけど…多分そうね」


パチンッ!っと指パッチンしてローザへとそう語ったが、どこか冷めた目で見られた。うんまぁ……異文化交流って事で!


「やっぱハズレ、か。こういう時は主人公補正って邪魔だよな」


「でも残り1つ最後。残る水瓶は右上だけよ」


ハジメの不意打ちの大砂嵐によって割られた左下の水瓶。だがアクエリアスは咆哮を上げるだけで、倒れる様子は無い。つまりはハズレという事だ。

主人公は物語を長引かせる為に確率を大きく外す……メタい発言だが、主人公のハジメは3つ破壊するまで倒せないように仕組まれている。恐ろしや主人公補正。


──ギィィィィアアアアアアアッッッ!!!!


「うっ…!またこの叫びか……来るのか?」


「え?一体何が来るって言うの?」


またしても大絶叫を上げたアクエリアスに、俺は冷や汗をかきながらも見つめ呟くと、隣のローザが疑問そうにそう言った瞬間だった。


「こ、これは…!」


「そりゃああるよな、ボスだもんな──最終形態が」


暗闇に落ちたこの海峡を昼間のように眩く光るアクエリアス。進化か或いは……どのみち俺達を苦しめる形態にはなるだろう。


そして光を発してから1分も経たぬ内に光はやがて落ち着きだす。その間ハジメや魔物達は攻撃を仕掛けていたが、無駄な事だ。逆にハジメがいる事で攻撃が通らないんだから。


「何なの!?これは…!」


「気味が悪いな…」


光が収まった事で姿を漸く捉える事が出来た俺達は、変わり果てたアクエリアスの姿を見て恐怖に近い感情を抱く。

それはまるで人間の女性のような上半身に、下半身はタコ。そして顔は三面、巨大な人間の腕が6本上に上げているという異形な姿をしており、その手には破壊した筈の水瓶が3つ持たれている。


──ギィィィィィィィウウウッッッ!!


人間の顔と変わりないアクエリアスは、その3つある顔全ての眼を開眼し、それぞれハジメ、ローザ、俺を血走った眼で睨み付けてきた。

そして金切り音のような、女性の悲鳴のような声を上げた瞬間、全ての水瓶から一斉に水が発射された。


「ッ!?マジかよッ…!」


一直線に飛ばされた水撃は距離があった為、かわす事は簡単だった。にも拘わらずその水撃は進路を変えて俺を追尾した。


「アキラ!下がって!!」


俺に水撃が当たる瞬間にローザが割って入り、水を殺して事なきを得る。やっぱローザは強い……完璧に邪剣を使いこなしている。


「しかし……弱点はどこへいった…?」


漸く道が見てたと思ったのにこの有り様は酷いぞ……まさかまた破壊しろってのか…?どう考えても強さが上がってるってのに…!


「鬼畜過ぎんよ…アクエリアス……」


俺はそんな泣き言を小さく呟き、月を見上げた。

進化したアクエリアスは阿修羅を想像をしてみてください。顔は人間のお面のように無表情かつ眼は閉じている……そういった設定です。

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