165話:危険視
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「ふぅ~、疲れたぁ…」
「お尻が痛いですね…」
港町リベローラへと到着した俺とミザリーは、すぐに宿を取ってベッドに倒れこむ。もうミザリーとの同室は慣れたもので、お互いに気を使う事もない楽な空間だ。
「………」
「…?どうしかしましたか?ご主人様」
「あ、いや…なんでもないよ」
少し考え事をしていると、不思議そうに覗き込んできたミザリー。俺はそれになんでもないと伝えるとニコッと微笑んだ。
「なぁミザリー、悪いんだけど買い出し頼めるかな?リンゴが食べたくなっちゃった」
「はいっ、わかりましたっ!」
笑顔で出ていったミザリーを見送った俺は、ポケットから初めてテイムし仲間にしたスライムのオネストを手の平に乗せる。
「さっきの黒髪の青年と少女、アキラとローザは覚えてるよな?多分この辺にいる筈だから探して監視しててほしいんだ。頼めるか?」
テイマーである俺の言葉を魔物に届く。それは最弱種と言われているスライムにだって有効で、オネストはプルプルと揺れると窓の外へと向かっていった。
『あの連中…特にアキラの方は危険だ』
確かに俺はクラス転移された勇者だ。
だがこれは極秘に行われた事であり、城の者しか知らない情報だ。民間人はおろか、このアルテルシア魔大陸で知っているのはミザリー以外いない。どう考えても怪しすぎる。竜車の中では情報を聞き出そうとしたが、うまく流されていた気がする。
『まさか俺を連れ戻しにきた城の者なのか?だとしたら行く先々で2人がいる事にも理由がつく……』
俺の目にはテイムした者が見ている風景も見れる。小さく音もしないオネストは偵察にもってこいだ。
「っとと…ミザリーが帰ってきてる」
宿の階段を上る映像が映し出される。どうやらミザリーが帰って来たようだ。
俺はオネストとの視界を共有したまま、ミザリーが買ってきてくれたリンゴを食した。
『ん…?アキラの方に動きがあった…』
翌日の早朝、オネストからの反応で目を覚ました俺は、早速視界を共有して確認してみる。どうやらアキラはリベローラ近辺の森に向かうようだ。
『こんな朝早くから何の為に…』
疑いの眼差しでアキラの背中姿を見つめ、俺はコップ1杯の水を飲む。暫くすれば森に到着したアキラは走り出す。まさか尾行している事に気付いたのかとハラハラしたが、どうやら魔物を発見したようだ。
アキラは自身の腕を少し切り、滴る血を剣へと変化させて戦い始めた。
『は、速い…!山田や水本よりも速いんじゃないか?』
最速剣士の称号を掛けて争っていたクラスメイトを思い出したが、すぐにその思考をやめる。思い出すだけで腹が立つ奴らだ。
そんな事を考えている間にアキラは複数の魔物を殺し、素材を剥いでいる。その動きは何度もやってきたかように手慣れていて、瞳は赤く染まっており、何かとても強い感情を感じた。
『恐ろしい…野心にまみれたあの瞳、アキラが一般人の可能性が消えたな』
寒気がしてくる瞳に萎縮した俺は、オネストが殺されぬように透過魔法と隠密魔法を施す。アキラ達もガンナード人大陸に行くと言っていた。要注意してオネストには監視を続けてもらおう。
「……!誰だッ!」
魔物を倒し終えたアキラは、石に腰掛け休んでいると油断した瞬間、突如飛び退き低い声でオネストが隠れている茂みを睨み付けるアキラ。
『そんなバカな…!透過と隠蔽魔法を施してるんだぞ…!?見付かる筈が──』
「いるのは分かってる。3つ数える間に出てこい。さもなくば俺は攻撃を仕掛けるぞ───1つ、2つ、3──」
手に持つ剣とその瞳を真っ赤に輝かせ、攻撃体制に入ったアキラ。その禍々しくも美しい剣から漏れ出るオーラからは、オネストが隠れている一帯を消し去る雰囲気を漂わせていた。このままでは初めての友達を失う事になる。
最後の3を数え終えるギリギリでオネストを茂みから出るように指示を飛ばす。
どんな反応をするのだろうか。場合によってはオネストを介して攻撃魔法を放たねばならない。
「転スラ……いや転生賢者…?」
キョトンとしたような顔をしてブツブツと知らない言葉を言い出したアキラ。先程の表情とは打って変わって、言い方は悪いがとても間抜けな顔をしている。敵意も完全に消えていた。
このチャンスを流しはしない。なるべく野生のスライムと思わせる為に、暫く見つめ合った後に森へと逃げる。そして加速魔法を施して俺の元へと帰還させる。
「はぁ…はぁ…はぁ……っ、怖かった~…!」
「だ、大丈夫ですか…?」
「あ、ごめん起こしちゃったか」
オネストとの視界共有を解いた俺は、疲労と恐怖から解放された事でベッドへと倒れ込んだ。そのせいでミザリーを起こしてしまい、少し申し訳無い。
「凄い汗…本当に大丈夫ですか…?」
「ん、ありがと。でも平気だよ」
アキラの危険性をミザリーに話してしまっては、ミザリーを怖がらせてしまうだけでなくアキラに感ずかれる可能性もある。せめてガンナード人大陸に到着し、別れるまでは黙っておこう。
「そうですか…?あっ!そろそろ朝食の時間ですねっ!着替え終えたら行きましょうか!」
「そうだね」
アキラには警戒しつつ、それを表に出さぬように心掛けた後、俺はミザリーと共に宿の朝食を食べに向かった。
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魔物狩りや変なスライムとの遭遇から暫くして、俺はローザと共に宿の朝食を食べていた。近くの席にはハジメとミザリーがおり、時折視線を感じる。
「今日は天気が悪いわね…明後日の出港日は晴れるといいけど」
「そうですね…」
どんよりとした曇り空で、港町故か風が強い。海からの風って俺スゲェー嫌いなんだよな、髪の毛ゴワゴワしだすし。髪の毛の手入れを欠かさない俺にとっては最悪だ。
『ま、出港日は海荒れるだろうな。アイツらもいるし』
チラッと後ろの方に座っているハジメ達へと視線を向ける。その瞬間たまたまハジメと目が合ったのだが、すぐに逸らされてしまった。なんやねん、恋してる奴の反応じゃん。やめてくれよ…俺に恋してるいいのはヒロインだけだぜ?
──は?
「今日はどうします?」
「そうね…風が強いし天気も悪いから宿でゆっくりしましょう。………後でアキラの部屋、行くわね」
「え…?あぁ……いいですけど…」
流石にこの前のような変な空気になる事も、ローザが覚悟を決めるような事は無い筈だ。特段警戒なんかはしたくても良さそうだな。
……ならなんで来るんだ?
「……1人部屋にいるのはつまらない、から…何かしましょ…?」
「あー……じゃ、じゃあチェスでもします?確かこの宿で貸し出してましたから」
「そう、ね…やりましょう」
1人で部屋にいたくないとか可愛すぎるだろ。可愛いは立派なチートだよな、羨ましい。
……いやいらねぇな、戦闘系のチートが1番だわ(脳筋)
そしてお互いに何故か恥ずかしがりながら食事を終えた俺達は、その後俺の部屋へと向かう。
ナニがあったのか、それはとても簡単だ。
その後滅茶苦茶チェスした。
はい、やましい事は何もしてません。俺はチキン潔癖童貞だからなっ!!はっはっは!はぁ……
怪しい行動をするアキラが悪いってそれ1番言われてるから。
次回っ!出港&地獄
お楽しみは!これからだ!




