表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/392

161話:素の君が可愛い

定期的に増えてくれる評価とブクマ、そして外さないでくれてる人々のお陰で、この小説は続いていく……ホント感謝です。

「長期休暇が欲しい?」


「はい、実は俺の記憶を取り戻せるかもしれないんです」


ジギタリスとの戦いから1週間程経った頃、俺は当主であるエルザさんへと長期休暇のお願いを言いにやって来た。


「確か記憶喪失、だったよね?そっか、手掛かりが見つかったんだねっ!それは良かった!勿論いいよ!」


「本当に申し訳ありません、ありがとうございます…!」


無事に許可を貰え、一安心した所でエルザさんは笑顔から何かを思い出したかのように表情を変えた。


「あっでも……記憶は戻っても、またここに戻って来てくれる…?」


「どう、でしょう……ローザさ──様に拾って貰えたのは本当に感謝してますが…俺には元々この世界で達成したい夢もありますから、約束は…正直難しいです……俺なんかの代わりは沢山いるのに、何故ですか…?」


「と、とんでもないっ!アキラ君の代わりなんていないわよ!?王家の血に完全適合し、“キング“を越えた君がっ!」


あ、いかんいかん。無能期間が長過ぎて、俺が“キング“になった事をすっかり抜け落ちてた。


「それにローザと()()()()をしたのよ?吸血鬼(ヴァンパイア)族の王家が1度しか出来ない大切な儀式を…!それはつまり───」


「余計な事を言わないで下さいっ!お母様!!」


エルザさんが最後に何かを言おうとした瞬間、物凄い音と共に扉が開かれ、ローザさんが入ってきた。何やら焦っているらしく、普段は見せない年相応の顔をしていた。


「ちょっと来なさい、アキラっ!」


「え、え、え…?」


少し赤面?しているローザさんは、俺の手を掴んで廊下へと引っ張っていく。

いまいち理解が追い付かない状況で、スッゴいバカそうな声を出してしまった俺は同じく赤面。


「ふふっあらあら。アキラ君、とにかく長期休暇は大丈夫だからね~っ!」


「あっ、ありがとうございます!」


可愛らしく手を振っているエルザさん。嘘みたいだろ…?経産婦なんだぜ…?そんなエルザさんに感謝の言葉を述べ、俺はそのまま部屋を出る。否、出された俺は廊下に出ると、ローザさんの見つめた。


「えっと……エルザさんが言ってた事って──」


「だ、黙りなさいっ!お母様の言っていた事は全て!忘れなさいっ!良いわね!?」


「えっ……」


こんな顔初めて見たぞ……。いつもは凛としているエルザさんが、こんな赤面してビシッと指を俺に向けるなんて……まだ1ヶ月程だが信じられない。可愛さのバーゲンセールやん。


「あ──」


「う、五月蝿いっ!これ以上私に質問したらその口縫うわよっ!?」


何も言わせて貰えない…!凄いテンパりよう……俺が何か喋るとすぐ赤面し、目がグルグル回ってそうな程慌てている。


『よく分からないけど、血の交換…?は多分吸血鬼族の王家にとってはとても大切なモノなんだろう。1回しか出来ないって言ってたし』


「はぁ……、はぁ……と、兎に角忘れなさい。良いわね?」


「は、はい……」


息切れをし、深呼吸をしたローザさんは最後に確認し、俺は少し苦笑いで頷いた。


「そ、それでっ?長期休暇なんか取ってどうしたのよ」


「はい、実はリンガス王国という場所に行けば、俺の記憶を取り戻せそうなんです。ガンナード人大陸まではかなり遠く、時間が掛かりそうなので」


「そう。………貴方1人じゃ心配ね。私も着いて行ってあげる」


「えっ?ローザさんが?」


おっとこれは意外な展開だ。

ローザさんからはヒロイン特有の香りがプンプンするが、ローザさんはここのお嬢様。しかもエルザさんから“クイーン“を授かったと聞いた。ヒロイン&主人公っぽさも感じるから、一緒にいれば何かイベントが起きそうだが……


「そうよ、私が着いてきては都合が悪い?」


「い、いえそんな事じゃなくてですね……俺の記憶を取り戻すのが目的なので…多分つまんないですよ?」


「別に…構わないわ」


なんか……ツンツンしてね?俺と視線を向けると逸らすし、そのくせして俺が逸らすと視線を向ける……なんだこれ。

俺がさっき質問しようとしたから怒ってる……とか?


「なんだかローザさん……可愛らしいですね!」


「なななっ…!?何バカな事言ってるのよっ!!」


「そっちが素、ですか?普段よりもそっちの方が可愛いですよ、ホント!」


「~~~っ」


俺がそう言うと、ローザさんは顔が真っ赤っかにして黙ってしまう。なんな頭から湯気出てね?ちょっと調子に乗り過ぎたかも……


「あの、ローザ…ちょっと調子に乗り───」


「か、可愛いだなんてバカじゃないのっ!?バカっ!バカバカバカ!!と、兎に角私も着いていくから!」


俺の謝罪を遮って、ローザさんはやたら早口でそう言うと駆け足で去って行った。ローザさんが廊下を走るなんて初めてみたぞ……


「うーむ……急にヒロイン感出してきたな」


薄々分かってたしな。本来ローザさんはヒロイン級の可愛さを持ってるって。

でもぶっちゃけると、異世界の人って殆どが日本人より美形なんだよな。鼻高いし。


取り敢えずその話しは置いといて、俺の休憩時間はそろそろ終るので廊下を歩きだす。

最近はエルザさんの命令で、ヴィノさんから貴族とかがやってる礼儀作法を叩き込まれてる。俺が“キング“になったかららしいが……


『正直困るんだよな……展開的言うと、俺はここの屋敷に婿入りさせられるだろうし…』


最近ローザさんが俺に対する態度が変わった事が証拠だろう。素を出してくれる事が多くなった。それはとても嬉しいし、考え過ぎじゃなければあんな美少女が妻になるなんて信じられないような事だ。だが俺は世界を旅して主人公になる夢がある。


「さっきのエルザも戻ってこいって言ってたしな」


外堀が埋められている気がする。

……てかあれ?なんか俺がヒロインみたいじゃね?元々ジギタリスが狙ってたのはローザさんだし、俺がこの屋敷に来なくても結果はそう変わってないだろう。主人公は必ず勝つからな。つまりローザさんは主人公……うわ、俺がヒロインかよ。


「ローザさんに申し訳ねぇよ……好きでもない奴が夫になるなんて…」


でも貴族や王族の娘は大体そうだったっけ(異世界本知識)俺個人の意見なら、性格面じゃジギタリスよりはマシだろう。……顔面偏差値は負けてるけど。


そんな感じで困り顔をした後すぐにニマニマし、そしてすぐに申し訳ない顔をする。かと思ったら急に凹んだアキラ。

そんな時、窓ガラスに映った自分を見て、急に真顔になるアキラ。


「…………キモ」


まだ『婿入りしてね』なんて言われてもないのに、なんか勝手に妄想を始めた自身を急に気持ち悪く感じたアキラは、自分の事ながらドン引き顔をする。


「いかん、未来予想をするのが癖になってやがる……今のがネットに晒されたらコメント全てが『は?』で埋まるだろうな」


冷や汗を浮かべてか苦笑いをしたアキラは、踵を返して歩きだす。ヴィノが待っている部屋へと急ぎ足で向かった…!何故なら怒られたくないからだ!


てな訳で駆け足で急いだアキラだったが、時間を僅かにオーバー。ほんの僅かのオーバーも許さないヴィノさんによって、アキラは礼儀作法を通常の1.2倍の厳しさで教え込まれたとさ。

普段凛としている子が素を出した瞬間が好きです。後アキラが可愛いって言うと腹立つ。何故でしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ