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158話:闇を払って

「消え消え消えロロロロロッッ!!!!」


激情したジギタリスはもはや俺やローザさんなど視界に入っておらず、目に写る全てが憎いと感じているかのように無差別に即死光線を放つ。


「ッ…!す、凄い…あの光線を弾けた…!」


先程までは当たった瞬間砕けていた血の剣は、なんとジギタリスの光線まで弾けるように進化していた。


「これなら…!───デリャアアアアアアッッ!!」


天高くへと飛翔した俺を狙う無数の黒の腕。俺は体を捻って縦回転をしながら高速落下と共に黒の腕を切断していく。まるで豆腐のように柔らかく切れる事に驚きつつ、俺はそのままジギタリスの数ある目の内の2ヵ所に剣を刺しこんだ。


「ギャアアアアアアアアアアッッッッ!!!!」


深く刺した剣はそのままに、暴れているジギタリスから離れる。そして俺が刺した剣へ手を翳し、力を込めると、、


「ッッ!?!?───────!!!!」


剣は形状を変え、それはトゲトゲしく紅く輝く水晶へと変化した。

体を内側から貫く血の水晶に、声にならない絶叫を上げるジギタリス。


「はああっ!!」


絶叫を上げているジギタリスへと、回復を許さぬローザさんの閃光が走る。ジギタリスの体を突き破って生えていた黒の腕を複数切断。切断箇所はすぐに腐敗を開始し、再生不可能な状態へと持っていく。これでジギタリスは遠距離かつ小回りの効く技が使えない。


「凄いなローザさんは…!まるで女帝だ。ランカスター家風に言うなら“エンプレス“だな!」


「訳の分からない事を言ってないで前を見なさい。あの男のしぶとさは尋常じゃないわよ」


ローザさんのそう言う通り、ジギタリスは聴こえぬ声でブツブツと何かを発しながら、その巨体に黒のプラズマを走らせる。


「僕は“キング“、なンだ…!こんな、こんな所ジャ死ねねねね……ない…!」


僅かに聞き取れたその言葉。少しずつではあるが、本来の喋り方への戻っている。

俺の勘と血による本能が警鐘を鳴らすと同時に、俺は走り出す。少しでもダメージを…!()()()()()()()()()()…!!


新たに造り出した剣を2本、ジギタリスの奥深くへと突き刺す。そしてもう1度水晶のように形状を変化させようとした瞬間だった。


「僕が、僕ガ…!───世界で1番強いんだああああああッッ!!!!」


「───ッッ!!?」


蝙蝠型怪物であるジギタリスが一瞬輝きを失った瞬間、叫び声と共にその身を再び眩く黒色に光らせる。

事前に何か来る事を察知していた俺は、翼で自身を包み込むようにして防御体制へと入る。


刹那。その翼さえも焼き尽くす程の火炎と共に、俺は鼓膜を突き破るように響く爆発音と共に吹き飛ばされる。


「アキラ!!」


「大、丈夫です……ですが今のは…!」


空中へと飛ばされた俺をキャッチしたローザさん。俺は翼を再生させながら滞空し、地上で起こった惨状を見下ろす。

まるで隕石でも降ったかのように円形のクレーターが出来ている。砂埃でよく見る事が出来ないが、間違いなくジギタリスに異変が起こった事だけは分かった。


「何も見えな───」


「危ないッ!!」


ローザさんが何かを言おうとした瞬間、砂埃の中から超高速でローザさん目掛けて光線が放たれた。

俺はそれをギリギリで防御壁を張る事で防いだが、かなりの威力を感じる。それは俺の嫌な予想が的中した事を表していた。



「あ~あ、折角痛みなく終わらせようとしたのに……本当余計な事しかしないよね、君は」


砂埃が晴れ、クレーターの中央に立っていた1人の男。その表情は自信に満ちており、全てを見下すような嫌な顔。間違える筈がない、正真正銘ジギタリス本人だった。


「あの怨念達さえも取り込んだっていうのか…?」


完全に元の姿と変わらないジギタリス。あの深い怨念達を自らの力に取り込み、黙らせたと思うだけで嫌な汗が額に浮かんでくる。パターン的に言えば奴はさっき以上の力を持っている。俺も進化したとはいえ、勝てるかどうか心配になるほど、ジギタリスからは禍々しいオーラを放っていた。


「大丈夫、私達は負けないわ。私は貴方を信じてる。だからアキラ、貴方も私を信じて?」


弱気になった俺の左手を掴んだローザさんは、そう言いながら優しく笑う。

バカだな俺は……信じてるくれる人がいるのに勝てるかどうかの心配をして。


「信じてます、俺もローザさんの事を。───行きますよ…ッ!」


「ええ、勿論!」


俺もローザさんと同じように、信頼の笑みを向けて剣を構える。するとローザさんも同じように構え、そして地上のジギタリスに向かって降下を開始。


弾幕のように展開された黒い光線や紅蓮の炎。光線は枝分かれのように複数分かれ、炎は回避しても追尾してくる。

先程まで怪物状態だった頃とは大きく違い、コントロールが可能となった即死攻撃。だがお互いを信頼し合う俺らには恐るるに足らない。

片方が攻撃すれば、もう片方が守る。お互いに言葉は無いが、何年も昔から一緒のような連携を取れていた。


「気に入らないよお前ら…!僕が1番なんだ…僕より上の存在なんて許せない!!」


ジギタリスは手に闇のように暗い剣を造り出すと、翼を広げて俺達に向かってくる。それを俺が受け止め、その間にローザさんが邪剣を振るう。だがそれ弾き、ローザさんへと牽制を放つジギタリス。


「消えろよ人間…ッ!お前が僕の全てを狂わしたんだ!!お前のせいで僕はローザを殺さなくちゃいけなくなった!!」


「勝手な事を言うな!敵対しているお前の邪魔するのは当然だろうがッ!そしてローザさんを殺す権利はお前なんかに有りはしない!!」


鍔迫り合いのようにお互いの剣を重ね合う。俺は背後に6本の剣を生成し、それを全てジギタリスに向けて放つ。


「ナメるな!この程度でやられる僕じゃない!!」


俺の放った6本の剣を、ジギタリスは自身の左腕を魔剣のような口へと変化させて飲み込む。予想外の能力だが、俺は次の手に賭けてある。

それは、、


「ガ、ハッ……ろ、ローザぁ…!お前ぇ…!!」


背後から密かに接近してきたローザさんの一撃によって、胸を邪剣で貫かれたジギタリス。

“死“を冠する剣だけに、刺された部分から体全体を破壊していく。


「終わりよジギタリス。貴方は進化をし過ぎた……体の方が着いてこなかったようね」


「バカ、な…ッ!僕は…誰よりも1番強、い…魔族なんだぞ…!?」


邪剣を刺されたジギタリスは体の崩壊が始まり、少しずつ灰になっていく。その目は殺意にまみれ、何故こうなったかも理解出来ていない顔だった。


「せ、めてローザぁ…!お前だけでも取り込んでやる…ッッ!!」


「っ!!?」


ローザさんへと向けた手を魔剣の口へと変化させたジギタリスは、そのままローザさんを飲み込もうとした。


「させねぇッ!!」


俺はジギタリスの胸に刺さった邪剣を左手で抜き、右手に握っている剣と共に腕を切断した。


「最後の、最後までぇ…!!ああああああ!!!!」


最後の力を出して、俺を丸々飲み込んだジギタリス。暗く、身を溶かす酸に体を傷付けられながらも、俺は2本の剣を振るった。


終焉月食(ジ・イクリプス)ッッ!!」


ジギタリスの全てを切り刻むつもりで上下左右、まるで太陽コロナのように全ての方角へと剣を振るった。邪剣を握っている側の手に異常を感じながらも、俺は一心不乱に剣を振り続けた。その数実に27連撃。


「───こんな人間ごときに僕は…!僕はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


塵さえ残らない剣閃の連撃によって体を切り刻まれたジギタリスは、最後の最後まで変わらずに消滅した。


「これで終わ…り………だ」


突然体から力が一気に抜け落ち、極度の睡魔が俺を襲う。両手から剣が落ち、俺は翼を広げる事も不可能となって落ちていく。

紅く染まった満月を視界に、俺は笑う。最高に主人公が出来た、これで終わってもいい。本気でそう思えたから。


『───いや、まだだ。まだ目標の全てを達成していない』


1つの山を登れば次の山が目標となる。

俺はまだ記憶だって取り戻していないし、やりたい事はまだまだ山積み。死ねる訳がない。

新たな目標が出来た事に、再び笑う。そして俺はそのまま意識を失った。

貴様ごときが皇帝と女帝に勝てると思うな!


※ジギタリスを消滅させられたのは、“キング“の力を宿したアキラと、ローザの邪剣が合わさった事で可能となりました。話で伝わってなかったらすいません…

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