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155話:王は1人でいい 後編

どこかで聞き覚えがあっても、それは気のせいです。……気のせいです(大事に事なので二回言う)


評価&ブクマ感謝です!

紅い光と黒の光が上空で激しくぶつかり合う。やや紅い攻撃を放つアキラが劣勢ではあるものの、そこまでの差を感じされないのはアキラの覚悟の故か。


「………」


それを地上の木の影からローザは、目元を腫らしながらアキラとジギタリスの死闘を見ていた。

涙は一時的に止まったとはいえ、今にも涙が溢れそうな程目尻には涙が溜まっていた。


「お父様……」


思い返すはローザがまだセルリア程幼かった頃。その頃はまだ父であるエルフィンが生きていた。だが今はもうこの世にいない。

それはエルフィンが王家の血を飲んだ故に寿命が縮んだからだ。


「同じ理由でまた誰かが死んじゃうなんて嫌…!でも私には何も…出来ない……」


強く握り締めた拳からは数滴の血が滴り落ちる。何も出来ない悔しさと確約されたアキラの“死“……重なってしまうアキラとエルフィンの姿。


「何も……私には出来ないの…?」


小さく溢れた言葉と共に、目尻に溜まった涙が一滴頬を流れ落ちた。


「…………っ!まだ手は残ってる…!私が…、私が新たに“クイーン“になればアキラは助かる…!」


昔お母様の書斎で見た覚えがある。前代の“クイーン“の時代が終わり、新たな“クイーン“が生まれた時、その時代に“キング“がいるのなら……“キング“と“クイーン“が手を取り新たな時代が始まる。と、、


「きっとお母様もお父様を救うために探していたんだ…!人間が“キング“となってしまっても、生きて行ける道を…!」


ローザは急ぐ。ウルフベインズ家の屋敷にいる母、エルザの元へと。

お母様から“クイーン“を授かり、そして私が新たに“クイーン“へとなる。そうすればお父様と同じ道を辿る事にはならない!


──────────────


「デリァアアアアッッ!!」


血から生み出された剣をヴィノさんの武器のような大鎌へと変化させ、それを大きくクロスに切り裂く。X状に飛来する紅い刃が真っ直ぐジギタリスを狙う。


「所詮はお前は人間!“キング“となろうがその程度が限界だッ!!死ねェッッ!!」


「ッ!!?」


だがジギタリスが俺と同じく剣をクロスに振るうと、漆黒の刃がX状に放たれ俺の斬撃と衝突する。だがジギタリスの刃が消える事はなく、俺の右腕を切り裂き、吹き飛ばされた。


「グッ…!!やはり根本的に力の差がある…!」


受けた傷はすぐさま再生されるが、激痛は続く。そして奴と同等の力を持ち、“キング“を殺せる力を持ってしても奴を倒す事が出来ない。俺には“キング“となった事で得たランカスター家の秘術しか無い一方で、ジギタリスは魔法やスキルを持っている。根本から俺とは違う。


『そして何より、あの魔剣が厄介過ぎる…ッ!』


俺の遠距離攻撃や、隙を突いた剣撃は全てあの魔剣によって飲み込まれる。俺の血で作った武器はその度に破壊され、新たに作る。その時間と隙があまりに大きく、被弾するダメージも自然と増えてゆく……


「君には過ぎた力だったんだよ!所詮は人間、どんなに強い力を持った所で僕には勝てない!!」


「だからと言って、まだ負けた訳じゃない!俺は最後まで絶対に諦めず、お前を倒す!」


諦めるのは全力で足掻いた後でいい。

俺は弾幕のように鋭く細かい血の弾丸を一斉発射。だがそれを嘲笑うかのように、全てジギタリスの魔剣によって飲み込まれた。

だがそれでいい。近付く為にほんの少しでも時間があるのなら…!


「チィ!懲りずりまた近接か?本当に君はバカな奴だなァ!!君の剣術は通じな───!?」


俺の剣を弾いたジギタリス。だが右からの追撃に防ぐ時間を与えずに切り裂く。そして切られた事で生まれた時間を逃さずに左からの攻撃を更に続ける。


「ディリァアアアアッッ!!」


俺の隠し球。それは両手に剣を持って戦う、通称二刀流。先程右腕を吹き飛ばされ、再生した事で右腕が完全に使えるようになった事で久し振りに右手に剣を持つ事が出来た。

完全にお互い予想外の事態を利用し、俺は戦う。


「グゥ…ッ!!まさかまだ力を隠してたとはなァ…!!僕にまた傷を付けやがって…!!」


「ッ…!」


魔剣を盾のように横にし、俺の剣を受け止めたジギタリス。お互いの視線がぶつかり合い、両者が押しきる為に力を込め剣からガチガチと鳴る。


お互いに押しきれぬ膠着状態が暫く続き、それを打開したのはアキラ。アキラは前蹴りを放ってジギタリスを吹き飛ばし、距離を開けた。そして翼を素早く飛ぶ為に動かし、一気に加速。そして俺は両手に握る剣を振りかぶり叫ぶ。


星光連(スターバースト)流撃(ストリーム)ッッ!!」


「ッ!!」


素早く2本の剣を振り、ジギタリスの全身を切り刻む大技。その数実に16連撃であり、若い頃から何度も鍛えたきた技。

遂に使える時が来た事を喜びを感じるが、デジャブを覚えたのは気のせいだろうか。


「ガアアアアアッッ…!!─────人間風情が調子に乗るなぁぁあああ!!」


「ッ!!────はああああッッ!!」


反撃と言わんばかりに放たれたジギタリスの一撃。魔剣が剣先から2つに割れ、牙が生え揃った鋭い口で俺の右肩を喰らう。腕が体から別れるが、右腕が落下する前に右手に握っていた血の剣をすぐさま再生した新たな腕で掴み、連撃を続ける。


「バカな…ッ!?こんな、こんな事があって堪るか!!俺は…!俺は“キング“の力を手に入れたというのにこんな…ッ!!」


「これで…ッ!────終わりだああああああッッ!!!!」


最後に上へと舞った俺は、ジギタリス目掛けて高速落下。紅い月の光を背中に浴び、ジギタリスへと紅く光輝く一撃を交差するように放つ剣撃。それはジギタリス肉を少しずつ切り裂く。再生による抵抗を、俺は落下スピードで押しきる。そしてそのまま地上へと押しきり、落下と同時にジギタリスの体は4つに切断される。


その瞬間、ジギタリスの体内から溢れ出た紅い握り拳サイズの輝く宝石のような物。 本能が語り掛ける、『それを壊せ』と。

俺はその宝石から視線を剃らさず一撃で粉砕。すると再生を試みていたジギタリスの体が少しずつ崩壊していく。


「こんな…筈じゃ……!僕は絶対的な力を手に入れたというのに…!こんな人間なんかにィ…!」


「はあッ…はあッ……決着は付いた…!俺の、勝ちだジギタリス…ッ!!」


時間経過と共に黒く、そして脆くなった血の剣を消しながらそう言うと、ジギタリスは俺を視線だけで殺せる程睨み付けた。その目は憎悪の塊であり、思わず1歩下がってしまう程鬼気迫る顔だった。


「お前さえいなければ…!お前さえあの屋敷にいなければ僕は…!僕は何もかも全てを手に入れられたんだッ!!」


「………」


口から血を出し、咳き込みながら強い意識の籠った声で俺へと怒鳴る。俺はそれをただ黙って聞いていると、俺とジギタリスの間に剣が降ってくる。それはジギタリスが振るっていた禍々しい魔剣だった。


「僕はまだ戦える……いや戦ってやる…!この人間を殺すまでは死ねない…!」


ジギタリスはその執念からかコアである心臓を破壊され、体を4つに切り裂かれたにも拘わらず這いつくばって魔剣へと近付く。

そしてどこにそんな力を残していたのか、上半身を少しずつ再生させた右手で魔剣へと手を伸ばした瞬間だった、、


「なッ!?やめろ!離せ!!このッ……言う事を聞けッ!!」


ジギタリスが魔剣へと手の伸ばした瞬間、鋭く尖った口から真っ黒な腕が何十本も現れ、ジギタリスをその剣へと引きずっていく。


「やめ…ッ!!おい助けろ人間…!頼む!助けてくれッ!!」


「ッ……」


どうするべきなのか。手を差し伸べるべきか見捨てるべきか……俺の中で2つが浮かび、思わず動いてしまった手を引っ込めた。


「あ、ああああ…!嫌だッ…!死にたくない死にたくないッッ!うわあああああッッ!!!!」


ジギタリスの他の体の部位まで飲み込んだ魔剣。最後に悲痛な叫びと共に飲まれたジギタリスに、俺はただ黙って見ている事しか出来なかった。悪は消えて当然。そう考えて生きてきた俺でも、思わず手を差し出そうとしてしまった。


「本当にこれで……よかったんだよな…?」


ジギタリスを喰らった魔剣を見つめ、誰に言うでもなく1人で呟いた言葉が森に響いた。

いつまでもここにいても仕方ない。俺は踵を返して屋敷へと向かおうとした瞬間、突風が背中に当てられた。


「…?一体何が────ッ!!」


魔剣が突き刺さる方角へと振り返った瞬間、身がすくむような気配に俺は後ろへと跳び、距離を取った。


「まさか…第2形態───いや、第3形態か…!」


俺を除き込むように魔剣の口から見える2つの眼。それは憎悪と殺意に満ちた瞳で、今にも逃げだしたくなる程禍々しい……


そして様子を窺っていた俺へと、衝撃波を放った魔剣。それは地面に踏ん張る事も出来ぬ程強烈で、俺はそのまま吹き飛ばされ木に体を殴打する。


「そう簡単には終わらない、か……」


これもお約束。

敵はそう簡単には死なない。これは決まっていると言っても良い程のものだが、今回ばかりは正直勘弁して欲しい。

そんな泣き言も投げ捨て、俺は再度出血箇所から血を集め、剣を作る。


「今度こそ、決着の時だ…!ジギタリスッ!!」

ちょっとヤバいかも……どうか怒られませんように……

し、仕方ないのさ!作者は悪くない…!これも全て、天道明星って奴の仕業なんだ。

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