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144話:当主はロリババア

この屋敷に来てから早いもので1ヶ月経った。もう既に完璧な執事への進化した俺は、スカしながらベッドメイキングをしていた。


「アキラ君、そこがまだですよ」


「あっ……すいません」


嘘ですごめんなさい。

ホントはまだまだ見習いのレベルから出ていないクソダメ執事なんです、俺……


「今日は我々の主である、当主様が帰ってきます。失礼の無いようにお願いしますよ」


「はいっ!」


そう、今日はこの屋敷の当主が帰ってくるとの事で、屋敷内の使用人達は大忙しだ。最終チェックとして、屋敷内の隅から隅まで大掃除。はっきり言って忙しい。


なんでも当主は仕事で遠出しており、久々に戻ってくるとかなんとか。

護衛としてブロンさんやヴィノさんとは違う人が付き添っているそうだ。今日の朝、ブロンさんから聞いた。


「明確な時間は分かっておりませんが、いつでも迎えられるように準備をしておきましょうね」


「はいっ!」


紳士的に微笑むヴィノさん。マジでこの人カッケェわ。おじさんっぽくないって言うか、渋くてカッコいい。若い頃絶対イケメン。


「よしっ、これでこの部屋の掃除は完了ですね。後は……」


俺はメモを確認しながら次に取り掛かる仕事を考える。部屋の掃除や大広間の掃除、玄関前の掃除などは他の使用人達がやっている。となると……


「自分は門の前を掃いてきますね!」


「ええ、そちらはお任せました。では私はローザ御嬢様の元へと向かいます。何かあればお呼びください」


「了解です!」


俺は返事をし、急ぎ足で掃除用具入れから箒を取り出して門へと向かう。


「あっ、どうもです…」


「………」「………」


門の前に立っている“ルーク“の双子、ヘルトさんとエルトさんの2人に挨拶をする。背丈は小さく、童顔でまるで小学生。だが20歳を越えるちゃんとした大人だ。その2人は俺の顔を一瞬見た後、小さく会釈をした後に視線を剃らした。


「……」


「………」「………」


背中に2人の視線を感じる……

別に何か言うでも、何かするでもない。ただ会話が無いだけだ。正直キッツいわ……


「あの…何か…?」


視線だけは強く注がれているので、何か用事があるのでは?と思って振り返って確認をする。だが2人はプイッと急いで俺から逃げるように視線を剃らす。なんやねん……


そんな感じで時々振り返っては視線を剃らされるを数回繰り返しながらも掃除を続けていると、、


「あらっ?君はー……ごめん、誰かな?」


「恐らく新人の使用人かと」


「あっ、そっか!」


豪華な竜車が止まり、降りてきたのは銀色の髪に数ヶ所黒のメッシュが入った元気な女性。そしてそれに続くように降りてきた、金髪に蒼瞳という清潔感の溢れる美青年。ブロンさんと同じくイケメンだな。


「よろしくねっ!」


「あっ、はい」


とても若く見える……と言うよりもローザさんと対して歳が離れていないように見える。

が!俺の勘が言っている。この人が屋敷の当主であり、ローザさんの母親なのだと……


「私はエルザ・ランカスター。この屋敷の当主をしてます!よろしくね」


「此方こそよろしくお願いします」


やっぱりな。

同じ名前で若いから、ローザさんのお姉さんという可能性がある。だが俺は事前にローザさんは妹しかおらず、更に長女だという事を同僚から聞いた。そこから弾き出される答えはそう!


『ロリババア…!……ん?ロリババア…であってるか?』


見た目は完全に子供だ。ハッキリ言えばローザさんよりも幼く見える。でも喋り方や表情は子供っぽいから……相応なのか…?


「久しぶりの我が家で、ゆっくり休もーっと!じゃあね!」


そう言って屋敷へと向かって言ったエルザさん。そしてその後をしっかりと着いていく金髪の青年と、眼鏡を掛けた茶髪のメイドさん。


『う~ん…あの青年もメイドさんも強いな、絶対。青年は王道の剣士って感じで、メイドさんは……アサシンだろ、多分』


異世界のお屋敷で、上の立場にいるメイドと執事は戦闘できる。てか強い。これ、あると思います。


そう考えながら、俺は門前の掃除を再開した。


─────────────


ローザさんの母、エルザさんが帰って来た事で屋敷は一段と明るくなる。元気のある綺麗な方なので、使用人達にも自然と笑顔が浮かんでいた。


エルザさんと久しぶりに会ったローザさんは、いつも以上の笑顔を浮かべて楽しそうにお話していた。その時チラッと見たのだが、ローザさんの妹さんの姿も見えた。俺は雑用が殆どなので、妹さんには専属のメイドさんが着いているので会う機会が無かったのだが、エルザさんそっくりの可愛らしい少女だった。てか幼女だったけど。


「~♪」


そんな中、俺は口笛交じりに皿洗いをしていた。本来ならローザさんと俺の関係を母親に聞かれる~的な展開がお約束なのだが、補正の無い俺にはそんなラブコメみたいな展開は無かった。ま、家族水入らずって事で。


「アキラ君、こっちのお皿もお願いしていいかしら?」


「あっ、はい!」


同僚から追加のお皿を置かれ、俺はそれをゴシゴシと洗う。大広間では現在、エルザさん、ローザさん、そして妹さんの他にヴィノさんやブロンさんを始めとした重役の方々が久方の談笑中だ。


ヴィノさんと、エルザさんの側で控えていたメイドさんが“ビジョップ“。

ブロンさんと、金髪蒼瞳の剣士が“ナイト“。

門番の双子、ヘルトさんとエルトさんが“ルーク“。

そして当主のエルザさんが“クイーン“。


完全にチェスの大事な駒が揃った。“キング“と“ポーン“がいない事が少々気掛かりだが、そろそろ()()()筈だ。


『何が起こるにしても、俺が活躍する。絶対に……』


…?何故俺はここまで固執しているのだろうか。いや、確かにこの世界に来る前から主人公になるために様々な事をしてきた。だがここまでの()()感情は無かった筈だ。


『何に焦っているんだ…?俺は……』


そう自身に質問した所で、答えは決して返ってくる事は無い。時間が限られている訳でも、誰かに横取りされる訳でもない。にも拘らず、俺の心は強くなる為に、夢を叶える為に焦っていた。

俺は自分でもよく分からない感情を抱きながら、執事見習いとしての仕事に専念した。


─────────────


特にイベントも無いまま夜を迎えた俺は、いつも通り左で剣が持てるように稽古を1人でしていた。


「はあっ……はあっ………よし」


1ヶ月掛かったが、長々いい具合に立ち回れるようになった筈だ。脳内でのブロンさんとの試合も、かなり食い付けるようになった。後はこれが魔物に通用するか、そして強者に通用するかどうかだ。


「こんな時間まで稽古をしてるいるの?」


「え?───ってローザさん!?ど、どうしてここに!?」


息を整えて、額の汗を拭っていると突然背後から声がした。その正体はまさかのローザさんだった。何故にここへ!?


「あそこの窓から貴方の姿が見えたから……何してるのか気になって来てみたの」


「そ、そうなんですか……いや恥ずかしいなぁ、あはは…!」


何か恥ずかしい…!確かにローザさんが指差す窓からここは丸見えだ。いやはや完全に隠れられていると思っていたのだが、、


「何故恥ずかしいのかしら?」


「いや…こういう努力って言うか何と言うか……内緒でやるから良いんですよ」


「そう…なの?私にはよく分からないわね」


共感は得られなかったようだ。


「…今度街に出るの。その時は私と動向しなさい」


「えっ!いいんですか?」


「その…頑張ってる……から」


嬉しくて思わず積めよってしまった。そのせいでローザさんは少し頬を染めて顔を剃らした。やはりこの人はヒロイン臭いな。にしても綺麗な顔立ち、、


「ローザさんって……もしかして吸血鬼ですか?」


「…!よく分かったわね……そうよ、私達は吸血鬼族(ヴァンパイア)


やっぱりな(2回目)

色白い肌に日傘。そしてゴスロリと八重歯ときたらもう…ね?【なろう】とか関係無く、ラノベ読んでたら大体分かる。


「近い内に必ず行くから」


「はいっ!楽しみにしてますね!」


「……そ、そう」


顔を剃らしたローザさんは、それだけ言うと屋敷へと戻っていった。

俺に惚れている!……って思いたいけど、あれは男に免疫が無いだけだな。とてつもなく残念だけど、可愛いからいっか。

近い内にミル達が何をしているのかを書こうと思ってます。

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