141話:奴隷、雇われるってよ
評価とブクマが貰える、増える度にニヤけてしまいますね(笑)
ブクマ100まで後15!マジで頑張りますね。
PS.ブクマ&評価してくれた人、小説をここまで見てくれてる人には感謝しかありません。ありがとう。
黒髪美少女に買われた俺は、早速手続きをしなくてはならないらしい。
「は……本当によろしいのですか?」
「ええ。そんな契約、要らないわ」
契約と言えば聞こえはいいが、言うなら制約の方が近い。奴隷が主に逆らわないようにするもので、命令などを反すると激痛が走るらしい。
んー……盾の勇者感ハンパネェ。
だがその契約は要らないらしい。確かに俺はこの子に買われ、実質助けられたようなもんだから反抗などはしないが……ちょっと無用心だよね。
「さあ、行くわよ」
「あ、はい…!」
奴隷商との話が終わったらしく、ツカツカと先に歩いて行ってしまった黒髪ちゃん。俺は慌ててそれを追った。
『気まずい……』
知らない街中を黒髪ちゃんの後を追うように歩いているのだが、全然会話が無い。お陰で周りを見れる時間があるのだが、皆に物珍しそうに見られているから恥ずかしい。
「……ねぇ」
「あ、はいっ!何でしょうか」
「私の事……覚えてるかしら?」
黒髪ちゃんは立ち止まり、振り返ると俺を顔を真っ直ぐと見ながらそう聞いてきた。だが生憎今の俺は記憶が抜けている。残念ながら覚えていないのだ。
「えっと…初対面、の筈ですが……すいません、今の俺…ちょっと記憶が曖昧で……」
「……そう」
「あの…!以前お会いした事ってあったんですか?もしかした思い出せるかも…!」
それを切っ掛けに別の記憶も甦るかもしれない。黒髪ちゃんは少しの間を置いて口を開いた。
「かなり前……男に絡まれている時に貴方の会ったのよ。貴方が注意を引いてくれたお陰で逃げられたわ」
異世界のお約束をしっかり実行している辺り、流石俺と言いたいのだが、残念ながら思い出せない。
「……その顔を見るに覚えてないのね」
「すいません……」
「別にいいわ。でもこれで恩は返したって事になるかしら?貴方に助けられたのが白金貨分の価値があったかは置いといて」
無いでしょうねぇ……
恐らく、いや絶対自分の為に助けた訳だから、向こうさんが恩を感じる必要も無いんだけど。
「まあいいわ。それで貴方はどうするの?ここはアルテルシア魔大陸、魔族が住む大陸よ。人間がいるガンナード人大陸とは遠く離れた場所だけど」
知らない単語に知らない単語を混ぜるな。
まぁこっちで勝手に解釈すると、どうやら俺が今いる場所は人間の住む国……ってか大陸か、じゃないらしい。何故そんな所に俺はいるのか、何故そんな大陸の森で寝ていたのかは人生最大の謎だ。
「そのガンナード人大陸に行くのってお金掛かりますか…?」
「そうね……お金よりも命の方が危ないかしら。アップグルント海峡を横断しなくてはいけないから」
怖いな……異世界の海って絶対怪物いるから。クラーケン的な奴ね、おー怖っ。
「お金も無いですし、武器も無いですから……それにガンナード人大陸に行く必要も別に無いですから、ここで生きていこうかなと思ってます」
「そう。……なら私の屋敷で働きなさい。貴方を奴隷として買った以上、私は貴方の主よ」
「それは……俺を雇って下さるという意味ですか?」
「ええそうよ。貴方を買うのに掛かったお金は白金貨1枚……その分しっかり働き、返しなさい。そして返しきったら…貴方を自由にしてあげる。どうかしら?」
それはまさに願ったり叶ったりの話だ。
俺はその場で跪いて、最大限の敬意を表す為に頭を垂れる。
「ありがとうございます。この天道明星、貴女様に頂いた恩に報いる事をここに誓います」
やり方があっているかどうかは分からない。もしかしたら最大の失態をしている可能性があるが、少しでも俺の誠意が伝わればと思い行動した。少し重かっただろうか。
「ええ、頑張りなさい。私はローザ・ランカスター。よろしく」
優しい笑みを浮かべたローザさん。
流石に手の甲にキスは出来なかった。俺、奴隷だし、やるのは騎士のイメージだし。理由はそれだけ。決して、恥ずかしいとかそんなちゃちな理由じゃない。ホントだゾ。
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そしてキザったらしい誓いをした後、ローザさんの後を着いて行くと、豪華な竜車が止まっていた。ゴスロリちっくな服装とか、日傘さしてる事から大体予想は付いていたが、このローザさん多分金持ちだ。
『ポンっと白金貨出せる人だもんな……当然と言えば当然か』
そんな事を考えながら、俺は黒光りした竜車を見ていると、
「何をしてるの?早く乗りなさい」
とローザさんが言うので、俺は恐縮しながら乗り込んだ。なんせ服がちょっとあれだからな。別に汚いって訳じゃないんだけど……不釣り合い的な?
「あの、ローザさんはお嬢様なんですか?」
「そんな大したものでは無いわ」
窓の外へと視線を向けるローザさんは、俺の質問に答えるとそれ以降は黙ってしまう。無口な人なんだろう。
「…………」
4人乗りの竜車の中で、俺とローザさんで向かい合って座ってる…無言で。
気不味い……少し、、いやかなり気不味い。美少女と同じ空気を吸えているのは大変喜ばしい事なんだろうけど……俺こういう空気は苦手だ。
そんな気不味い時間を耐える事数十分。竜車が止まり、どうやら到着したらしい。
早く外の空気を吸いたい…てか俺を竜車から出してくれ…!出してえええええ!!!!
「おお…!デッカイ屋敷だな」
森の中にひっそりとある感じがグッドなお屋敷。白をベースとした屋敷で、西洋感が凄い。
今にもお姫様が出てきそう。いや隣におるやん。
「着いてきなさい」
ローザさんの後をトテトテと着いていきながら、俺は屋敷の庭をキョロキョロとする。名前知らんけど花のアーチとかあって綺麗だ。全体的に花が多い感じする。
「お帰りでしたかローザ様。……そちら様は?」
「私の奴隷よ。今日からこの屋敷で働く事になったわ」
ローザさんを発見するなり、駆け足でやって来た長い襟足を1本に纏めた白髪イケメン。剣を腰に佩剣している事から、恐らくこの屋敷の騎士なんだろう。
「き、今日からお世話になりますっ!天道明星です!雑用でも何でもしますので、よろしくお願いします!」
1歩前に出て、元気よく滑舌よくそう言い、頭を下げる。格好が格好だからな、第一印象は少しでもいいものにしておいきたい。
白髪のイケメンは俺を下から上へとジッと見た後、爽やかに微笑む。
「僕はブロン・メルッセと言うんだ。この屋敷で“ナイト“をしているよ。よろしくね」
そう言って差し出された手。貴族なんかがよくしてるカッコいい手袋をガン見しつつ、俺は手を差し出して握手をした。
『よかった……奴隷とかって肩書きあると下に見られるんじゃないかって思ってたけど、全然そんな事無かったな』
【なろう】系読みすぎだろうか。奴隷には厳しいと思ってたんだけどな。
それは兎も角この青年は強いな、色んな意味で。恐らく剣術は圧倒的に強いだろうな、騎士って言ってるし。
『いやでもさっきは“ナイト“って言ってたな……騎士じゃなくて?まぁ同じ意味だから別にいいけど』
そんな爽やか系イケメン、ブロンさん事を考えてながらローザさんを後を追う。いよいよ屋敷の中へと突入だ!
『…?あれ?前にもこんな事があった気がする……』
既視感、デジャブを感じる。
これは【なろう】を読みすぎての現象か、将又本当に体験した事なのか……今の俺には分からない。
謎の既視感を覚えながら、俺は屋敷の中へと入っていった。
ローザ・ランカスターは、本編28話と29話にチョロッと登場した子です。ずっと前から出す予定だったので、漸く出せて嬉しいです。クソ長伏線?ですいませんっ。
人大陸には人間を始めとした様々な種族がいる大陸です。獣人やハーフ、一部エルフだったり蜥蜴人なんかもいます。
魔大陸では上記外の種族が暮らす大陸で、悪魔とのハーフだったり、魔物が進化したような人が沢山いる場所です。転スラ的なアレです。
魔族と人族は互いにいがみ合っており、戦争も起こるレベルです。大陸同士を繋ぐ海峡を越えて来ることもあるので、たまに六剣が出向くこともあります。
尚、他にも大陸はあります。




