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138話:分離した嫉妬

「そんな……アキラが…アキラが……」


膝から崩れたミルは、絶望の顔をしてアキラの名前を壊れたように呟く。もはや戦う気力は残されていなかった。


「ごめんなさい…!ごめんなさい……っ」


「あははははッ!!マジかよアイツ!バッカだなぁー!」


頭を抱えながら謝罪の言葉を吐き続ける子供と、腹を抱えて爆笑する男は、アキラを消し去った張本人である子供の頭を雑に撫で回す。


「そんな……アキラ君、死んじゃったの…?」


「クソッ…!何もしてられなかった…!」


涙を流すルナと、手から血が出る程拳を握り締めたソル。ソルは眼に涙を浮かべて大切な仲間の死を笑う男を睨み付ける。


「何笑ってんだよ…!!ふざけんな…ふざけんじゃねぇよ!!」


「これが笑わずにはいられるかぁ!?アイツ…!くくくッ…!男のくせにあんなに泣いちゃってダッセェの!くくっ…!あははッ!!」


「この…!クソ野郎がッ!!」


涌き出る怒りを爆発させたソルは、出せる魔道具全てを使ってこの男を殺そうとしたその時、突如男を襲った氷の刃。


「返してよ………アキラを……返してよ…!!」


斬撃を放ったのはミル。頬に涙を流して弱々しく叫んで男を睨み付けた。


「返す?知らねぇよ、アイツが勝手に飛び込んで、勝手に死んだんだろ?ま、無能なりに役に立ったんじゃね?3人の命助ける代わりに自分の命を差し出したんだから」


やれやれと言わんばかりの仕草でそう呟いた男。だが当然そんな事で納得出来る訳がないミルとルナ、ソル。


「はあ……まぁいいよ。俺も新しい力を試したかった所だし。早速【嫉妬】と【色欲】の力を、使ってみますか」


厭らしくニヤリと笑った男は、体にピンクの電気を纏わせて首の間接を鳴らす。

そして次の瞬間、ピンクのプラズマの残像を残してミル達へと急接近した男は、そのまま力任せにミルを蹴り飛ばす。


「うっ…!」


「やっぱ人間辞めてるわー。今の蹴り、普通防げないからね?」


聖剣を横にして盾のように防いだミルは、地面に足を引きずった後を残して5m程押された。

痺れる手の平を無視して、ミルは手を翳して吹雪を放つ。男の両足を凍結させた。


「ルナ…!お願い…っ!」


「任されたよーっ!」


足を凍結させた男の背後で、箒の上で立っているルナは杖を空へと向けると、巨大な雷雲が発生。そしてすぐに轟音と共に落雷が男目掛けて落下する。

だが、、


「はい無駄ー」


「そ、そんな…!」


落雷は男に当たる事は無く、突如として消滅。そして男は足の凍結を炎魔法で解いてニヤリと笑う。


「嫉妬の方は能力を完全に消滅させ────ブフッ…!!?」


笑っていた男は、突如として口から吐血。そしてその場に膝を着いた男は声にならない悲鳴を上げた。


「何でだ…ッ!!?何が起こった!?」


目や鼻、口に耳。穴という穴から血が流れ出る現象に、混乱の男。すると次は体に纏っていた電気が激しく荒れ狂う。暴れるように漏電し続けるピンクの電気は使用者である男にまで及び、皮膚を焼き切れる。


「何故だ…ッ!何故言う事を…!聞かないッ!!?」


その場に転がり悶える男は、更に身体中から出血する。まるで体の至る所を切り刻まれたかのように激しい出血。それはアキラの時とそっくりだ。


「クソ…ッ!クソクソッ!!」


男は地面に体を擦り付けながら、黒い穴を出現させる。それはメランコリーが消えていく穴とそっくりだった。


「逃がさない…!絶対に…!」


ミルが聖剣を振ると、氷柱のような先端の尖った氷の塊が男の背中に突き刺さる。

痛みの声を上げ、殺意の籠った眼でミルを睨み付けた男だったが、煙幕を出し姿を隠して逃げようとする。どうやら戦う意思は無いようだ。


「逃がす訳にはいかない…ッ!この場で絶対に倒す!!」


ソルが懐から出した小さな三角形を投げると、突風が発生。煙幕を晴らした所をミルは聖剣を振るい、黒い穴を切断して消滅させた。


「クソ野郎どもがッ…!1人1人は雑魚のくせして俺の邪魔しやがって…ッ…!」


血で顔がグチャグチャになっている男は、ふらつきながら立ち上がって腕を振るう。すると黒い波動が横一帯に広がり、ミル達を吹き飛ばした。


「おいガキッ!コイツら近付けさせんな!!失敗したら死ぬより辛い思いさせてやる…!」


「……はい」


俯いて頷いた子供は、手の平をから小さな黒い球体を複数空へと飛ばす。

それは全ての攻撃を吸い込む穴。人間を吸い込む程強くはない。だが遠距離技は全て飲まれてしまう。


「ははっ、バカなガキも使いようによっちゃあ便利だな…ッ。へへっ…」


そう呟くと、男は再度出した黒の穴へと消えていく。ミルは風のようなスピードでその黒の穴へと飛び込もうとする。

だが、、


「ごめんなさい……」


「っ…!」


悲しい顔をした子供はミルへと手を向けると、ミルはまるで反発する磁石のように吹き飛ばされる。すぐさま体制を整えて走り出したミルだったが、既に穴は閉じられる瞬間だった。最後に子供はミル達に一礼した後に穴は消えた。


「くっ…!───あああああああ!!」


その場に崩れ落ちたミルは、絶叫しながら地面を殴る。同じくやり場の無い悔しさに下唇を噛み締めるソルと、涙を流してその場に崩れたルナ。

3人は列車の乗客を救助しに来た冒険者ギルドの者が来るまで涙を流し続けた。


────────────


黒の穴へと飛び込んだ男は、遠く離れたとある森の中へと移動した。


「ガ…ッ!ああああ!!クソ、がぁああ!!」


その場に倒れてもがき苦しむ男は、苦痛の声を上げて絶叫する。自身が持っている治癒魔法も再生スキルも通用しない謎の傷。そして内から溢れ出る負の感情が心を蝕み続ける。


「何で…ッ!何でだよッ…!?」


「おやおやおや……痛そうだね~?大丈夫~?」


「お前…!メランコリーが何でここに…!?」


倒れる男の前に立つ1人の黒フードを深く被った男。メランコリーは顔をニヤつきながら立っていた。


「いやいやいや、君には用は無いよ?用があるのは君の中にいる悪魔だよ」


「何…!?──アグッ!?テメェ…!何しやがる!!」


突如男の胸に手を刺したメランコリー。出血は無い。だが内にある物を握られた不快な感覚が男を苦しめる。

そしてグッ、とナニカを掴んだメランコリーは、薄気味悪く笑うとそのナニカを引っ張り出した。


「やぁやぁやぁ……久し振りじゃないか。んんー?随分とキっツイ目付きじゃないか」


「わた、しは……昔、からお前が……嫌い、だ…!」


黒のボロボロのドレスを来た少女はメランコリーを殺意の籠った眼で睨み付けてそう吐き捨てる。その眼は黒い蒼に染まっている。


「ど、どういう事だ…!?誰だお前…!」


突如現れた少女に困惑する男。そんな男に一瞬視線を向けると、嫌悪の顔をして顔面を蹴り飛ばす少女。


「自由、になれる……と、思ってお前…に奪われてあげ、たのに……コイ、ツに会わせる…なんて」


宿る人間が変われば契約は自動的に解かれる。そうなれば縛られる事無い自由になれる。そう予想したにも拘わらずこの結果。黒ドレスの少女、レヴィアタンは不機嫌で仕方なかった。


「完全体、まで…後少し……少し、予定は狂った…けど、まぁ……いいか」


小さくため息を吐いたレヴィアタンは、踵を返して歩き出す。だがレヴィアタンが外に出てしまった事は男の中で[羨望(エンヴィー)]が消滅を意味する。


「おい待て…!お前は俺の中でじっとしてろ!!」


進化した“七つの大罪“スキルを逃す訳にはいかない。この場でもう1度中に封じ込めようと攻撃を仕掛けた。だが全スキルと魔法が使用する事が出来ない。


「はぁ……邪魔、だよ…」


蒼黒い波動によって吹き飛ばされた男は、木に頭を打ち付けて気絶した。


「君もやる、かな…?」


「あ、ああ…!」


レヴィアタンから溢れ出る気配に当てられた子供は、その場に倒れて後退りする。その表情は恐怖に飲まれてしまっている。


それを無視し、レヴィアタンは森の奥深くへと行ってしまった。


「やれやれやれ……ホント勝手な奴だねぇ~。ま、いっか。こっちの方が面白そうだしっ」


クスクスと笑ったメランコリーは、チラッと木に頭を打ち付けた男に視線を向けた後に黒の穴へと消えていった。

アキラの中で成長したレヴィアタン。宿主が変わって自由になる。


以前の人間体のアスモデウスと同様の感じに進化したレヴィアタン。相手の能力を完全に0にするチートを持ってます。

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