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134話:ミルは強可愛っ!!

2話先くらいで章変化。

「ハアッ!!フッ…!セイッ!!」


ミルの屋敷に到着した俺達一行は、戦いの疲れをクリークス家の大浴場で癒した。

そしてその次の日の早朝、俺はまだ太陽が昇りきる前に1人稽古をしていた。


「後…!少しで…!!」


もう少しで[流氷(りゅうひょう)]を習得出来そうなのだが、何かが足りない。その何かが掴めない限り、[流氷]の習得は不可能だろう。


「はあっ……はあっ………」


乱れた息を整えて、稽古によって流れた汗を拭う。皆が起きてくる前にランニングと筋トレも終わらせないとな。


──殺せ……皆殺しにしろ……


うるせぇ…


──幸せを全て不幸へ変えろ……


黙れ…


──全てを破壊しろ。友も仲間も師も……全てを破壊し殺せ…!!


「黙れっつってんだろうがッ!!」


頭に響き続ける不快な声。それを怒鳴り散らして消し去る。昨日からずっと声が聞こえ続ける。俺は乱暴に髪を掻きむしり、深いため息を吐く。


「このままじゃ不味い……本当に取り返しのつかない事になる」


まさか人を殺す事でここまでの反動が来るとは思っても見なかった。能力を使う事で起こる激痛と五感のランダム消滅の他に、殺意が沸き上がるとは……


──それは俺の影響だろうがなぁ


「あ…?どういう意味だ」


──俺の産みの親は女を殺す事を最大の喜びにし、快楽を得ていた。人を殺す事でその快楽を求めて人を殺したくなる…!


「ッ…ならこの破壊衝動もお前の影響か!?」


──違、う…それ、は……わた、し……


「なっ…!そんなバカな…今までこんな感情は無かったぞ…!?」


──アキ、ラ…君が負の感情、を抱く度に……わた、し達は強くなって…いく……そしてそれ、は…君の破滅、へと向かう切符………もう、戻れないよ…!


「…ッ」


心臓を握り締められたように苦しくなる。一瞬でも気を抜けば俺の全てが黒に染まる。そうなってしまったら俺はもう()()戻る事が出来ない……


「俺は……負けないぞ」


──そう……頑張る、といい……アキ、ラが折れた時を……楽しみに、してる…


レヴィアタンの小さな笑い声が俺の脳に響く。その声は期待ではなく、どこまで俺が耐えられるか楽しんでいるような声だ。


『コイツらは本当に楽しむ事が好きだな、クソ…』


俺はまたため息を吐いて、屋敷の敷地外へとランニングを開始した。走って嫌な事を消し去るかのように、無心で全力で……ただ俺の未来の為に体を鍛え続けた。


────────────


そして俺が聖導協会達に拉致され、拷問を受けたあの日から早いもので数日が経った。結局国からの逮捕状が俺に出る事は無かったが、俺が悪魔を宿している事がバレてしまった。

その結果どうなったかといえば、【厄災の十二使徒】の一角、双子宮のジェミニ討伐の勲章は、俺のみ見送りとなった。


「残念だったな、折角命張ったってのに……」


「仕方ないさ…捕まって処刑されないだけでもありがたいね」


ルミナス聖国では魔物も悪魔も当然敵だ。その敵である悪魔を宿す俺を見逃してくれてるだけでもありがたい。ミルの話では、俺が【悪魔宿し】である事は上層部だけが認知しているらしく、それ以外の者には極秘にしてくれているらしい。他国へ行く俺にとっては大変ありがたい。


そして今日は、、


「おっ、いよいよだな」


「やっぱり六剣の人気って凄いんだねっ!」


「…自慢の師匠だよ」


ルミナス聖国の大通りにて開催されたパレードがある。世界に厄を振り撒いていた【厄災の十二使徒】の一角を討伐したのは前代未聞の大快挙。当然国はその最前線に立っていた六剣達を讃える為のパレードを開催する事となったのだ。


白馬によって引かれている……あれ何て言うんだろう、人力車みたいなあれ。屋根が無い馬車とでも言うのだろうか。それぞれの家紋が入った馬車に乗っている六剣の方々と、それを大歓声で手を振る民衆達。


「本当凄いよ……あの人達は」


またつい溢れてしまった羨望の言葉。こういうのがレヴィアタンの餌となってしまうのだろうな、と考えていると、、


「本当に自慢の娘だよ。……そのせいで縁談話が舞い込んできて仕方ないがな」


いつの間にか俺の隣にいたのはミルの父親にしてクリークス家当主、フリードさんだ。ホント音も無く現れたから一瞬ビクッとしてしまった。


「ミルは美人さんですからね。しかも強いときたら憧れるのも無理はないですよ」


「フフッ、ミルは私の妻に似て可憐で美しいからな。そんな大事な愛娘をそう簡単に他の男にはやらんよ」


やっぱりミルの事を溺愛してるんだな、この人。子供によって愛し方が違うからコルさんは歪んでしまったんじゃないか?家にも両親はいつもいないらしいし……まぁ人ん家の家庭環境にとやかく言う資格も無いんだがな。俺、童貞独身だし。


『てかそもそもミルの母親ってどんな人なんだろう……コルさんはフリードさんに似てるから…やっぱミルも母親に似てるんだろうけど…』


どちらにしろ美人だという事は覆らないだろうけど。そう考えていると、遂にミルの乗った馬車が見えてきた。

少し緊張しているのか、いつもより表情の硬いミル。何か手の動きがカクカクしてるけど……回線ラグいの?


そんな時、ミルと視線が合った。一瞬ハッとした顔をしたミルだったが、すぐにニコッと俺に可愛らしい笑みを向けてくれた。さっきの笑みとは比べ物にならない程輝きが違う。やれば出来るじゃん!


「随分と娘と仲がよいのだね」


「沢山の死線を共に潜ってますかね。仲がいいと言うよりは…絆、でしょうか?」


「ほう…絆ねぇ」


鋭くなったフリードの視線には気付かず、アキラは子供のようにミルに向かって手を振った。

まさかこの2人は…と考えたフリードだったが、すぐに『無いな』と答えと出して、ミルへと手を小さく振るのだった。









そしてその日の夜。


「疲れた……」


「あはは…お疲れ、ミル」


「んっ」


パレードやらなんやらで大忙しだった六剣達。当然ミルもその中に含まれるのだが、普段から辺り人との関わりを持とうとしたいミルだから、余計に疲れたのだろう。


「星…綺麗だね」


「そうだねー」


ここは汚ぇ都内の空じゃないし、夜に輝く建造物も無い為、満天の星がよく見える。と言ってもここは地球ではない為、俺の知っている星座は1つとして無いのだが。


「ねぇアキラ、久し振りに打ち合わない?」


「おっ!いいねぇー……って言いたい所だけどやめておくよ。ミルだって疲れてるでしょ?」


「ボクは平気」


そう言って元気ですと言わんばかりの可愛らしいポーズを取るミルに、思わず笑ってしまう。


「……また明日から旅が始まるね」


「ん…そうだね」


ミルの言葉を最後に、会話が途切れてしまう。だが気まずいなどの感情を抱く事は無く、むしろ何だか落ち着いてくる。上手くは言えないけど、ミルと一緒にいるって感じがする。


星を見上げながらそう考えていると、俺の左手を突然握りだしたミル。


「およ?どうした?」


「えへへ…少し寒くて。アキラの手、温かいから……ダメ…?」


「いいよ」


俺は特に寒いとは思わないが、ミルは常に体温が低いからな、今も手が冷たいし。

それは兎も角、最近ミルが俺の手を握る事が増えた気がする。ここ最近だけでも3回程あった。

これはまさしく好意──


『じゃないんだろうな……』


小さな子供がフラフラと勝手に行かないように、親が手を繋ぐ心理と多分似てるんだろうけど。そう考えると、何とも言えない気持ちになるのだが……美少女と手を繋げるからよしとしよう。


「何だかドキドキするね?」


「お、おう……そうだな」


シェイクハンドから指を絡ませて、まさかの恋人つなぎへと変えたミル。ミル自身も少し恥ずかしいのか、ほんのりと頬を赤らめている。

俺はどうすればいい…!?女性の心理がわからない…!


『照れた方がいいのか!?それともギザったらしくすればいい!?どっちだ!?肉食系と草食系…!どっちが正解なんだ!!?』


くっ…!こんな時にスマホがあれば対策出来ると言うのに…!!


「えへへっ……温かいね」


「お、おうっ!↑そう↓だね↑」


ヤバイヤバイ!美少女上目遣いアタックで俺のライフが減っていく!!しかも変な声出しちゃったし……もう方言みたいじゃんか。


「えへっ……えへへへっ…!」


ベンチに座り、笑みを溢し続けるミルは、足をパタパタと動かして機嫌が良いらしい。

なんだこの美少女、もうチーターヒロインじゃん。いやヒロインだったわ!!


「─────あっ…」


突如ドロッ…と垂れてきた鼻血。

まさか可愛すぎて鼻血が出るとは思わなんだ……

てかヤバッ…上向かないと、、


「だ、大丈夫…?」


「だいひょうぶだいひょうぶ…!」


心配そうな顔で俺を見つめるな!!お願いだからもうやめて!!俺のライフはとっくに0よ!!

そしてミルからの追撃を受けた俺は……死んだ(大嘘)

甘ーいっ!

……気がする。

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― 新着の感想 ―
対抗出来るように美徳手に入れるとかがメジャーかなぁ?それはそうもレビヴァタンさんそんな感じでしたっけ?何かもっと悲劇のヒロインというかなんというかそんな感じしゃなかった?
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