表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/392

12話:熊とのガチ死闘

「っ!あっぶな…っ!!」


熊の腕から放たれる豪快な一撃。命を刈り取る為だけにあるような攻撃を間一髪でかわす。


「食らえクソ熊っ!」


「グルァァァァァアアアアッ!!」


大きく振りかぶった時の隙を付いての一撃を熊の首筋に向かって放つ。

しかしすぐに反撃に出た為攻撃を中断。その為、熊に与えられた傷は浅く、出血も少ない。


「はぁ…!はぁ…!クッソ、急所狙ったんだが…!」


だが今一決まり手に欠ける。現にアイツはまだまだ元気であり、逆にアイツの神経を逆撫でしてしまったようだ。


「グルルル…!!ガウァァァァァ!!」


「っ!!なっ──ガ…ッ!!」


雄叫びを上げた後、四足歩行で猛進してくる熊に、俺は反応が遅れて激突し、壁際へと吹き飛ばされる。


「は…っ!ヒュー…ヒュー…っ…!」


『息が…!空気が吸えない…っ!』


口の中が血の味がする。今ので口を噛んだ、なんて生優しい物ではないのは明白。これは内蔵が傷ついてる。

内蔵を、特に肺が傷ついていない事を願いながら、視線を熊へと向ける。


『クソが…呑気に食事を再会しやがって…』


俺を完全に倒したと思ったんだろう。熊は残ったゴブリンの亡骸を食している。

俺に背を向けて。


『完っ全に…ナメられてるな』


しかし俺は今動けないだけでなく、立つこともままならない。全身に広がる痛みに今にも頭がおかしくないそうだ。


『ん…?…これは…?』


少しでも動こうとした時、手に物が当たる感覚を感じ、視線を向ける。

そこにあったのは、俺があの日投げた石斧。


『そうだ、これで…!』


手に石斧を掴み、俺は激痛の体に鞭を打ち、地面を這いつくばって熊へと接近する。

奴は食事に夢中でこちらに気付かない。殺るなら…今しかチャンスが無い。ここまで来たら、何が何でも仕留める。それこそ[背水の陣]の覚悟で。


『…?なんだ?体が…』


先程までの痛みが少しずつ薄れていくのを感じる。それだけでは無く、体から力が沸いている気がする。今なら勝てる、そう感じた俺は手に掴んでいる槍と石斧を力強く握りしめ、槍を杖代わりにして起き上がる。音を立てず、静かに…


『死ねッ!!』


声を出さず、シンプルな殺意を持って石斧を大きく振りかぶって熊の頭を狙う。


「っ!!?」


しかし野生の勘だろうか、バッ!っと振り返るが既に遅い。すぐに側まで迫った石斧は、熊の顔面に直撃する。


「グォォォォォオオ!!」


「へへっ…一矢報いてやったぜ」


急所である鼻に当たった衝撃で後ろへ倒れる熊。その瞬間を逃さずに俺は槍を両手で持ち、全力でジャンプして熊の首を狙う。


「っ!?な、何だ!?」


少しでも威力を上げる為に軽くジャンプした筈だったのだが、今までに体験した事無い程跳躍する事に驚きながらも、狙いは外さない。


「オラァァァァァ!!」


自然落下に任せて首をピンポイントで刺す。もがき暴れるせいで刺さっていた槍がポッキリと半分に折れてしまうが、熊に刺さっている部分を手に取り、ナイフのようにして何度も抜いては刺す。


やがて熊は動かなくなる。

どうやら倒せたようだ。しかし現れるには早すぎる敵。なんか…テンプレ感が無い。


「それよりも…[略奪]」


熊の死体に手をかざして、[略奪]を発動。

死体にも効くかは分からないが、恐らく適用する筈だ。大体俺と同じような能力を授かった奴らは死体から能力やらステイタスを得ている。


それは兎も角、瀕死だったのにここまでやれたのか謎である。突然力が沸いてきた、そんな感覚だった。


「んあ…?なん……だ?」


視界がグラグラと歪む。背中が燃えるように熱い。足に力が入らない。何でだ?


───あぁ…俺、重傷だったんだ。


立っているのも限界になり、俺はその場に倒れてしまう。ドクドクと自分の脈の音が聞こえてくる。


『ヤバ…これ………死ぬやつだ』


まぶたが重い。ダメだと分かっていても眠くて仕方ない。しかし必死に抵抗したが、対抗虚しくまぶたをゆっくりと閉じた。





─ねぇねぇ!人間が倒れてるよ?


─ホントだぁ~どうするぅ~?


─傷だらけで可哀想だよ…治してあげよ…?


なんだ?声が聞こえてくる。元気な声、眠そうな声、おどおどした声。3人いるのか?それに何か話し合ってる。治す?


─んんー、まっ!そうだね!


─よぉ~し、治そぉ~


─う、うん!えいっ…!


やがて話は纏まり、治すという方向になる。

あぁ…体が気持ちいい。これは…あの時の[治癒]みたいな感覚だが、少し違う気がする。[治癒]より気持ちいい。


─これでこの人間は助かるわ!


─よかったよかったぁ~


─皆協力してくれてありがとう…!


もしかして…俺を治してくれたのか?

ならお礼を……ダメだ、体が動かない。


─この人間は治したし、もう行きましょ!


─私お腹すいたぁ~


─あっ…!待ってよ皆ぁー!


お礼を言うことは出来ず、謎の子供達は行ってしまったようだ。いつか機会があったら必ずあの子達にお礼を言おう。きちんと菓子折りを持ってな。


……なんかまた眠くなってきたな。これヤッバ、即寝てしまうヤツだこれ。視界が真っ暗だから今も寝てるんだろうが。


寝てるのに…寝る…?

ん?う~ん……




は?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ