124話：俺は死なない
閲覧者に対して『は？』を抱かせたらアキラの勝ち。……は？
「なに……あれ…」
２匹に分裂したジェミニは天に向かって両手を伸ばすと、片方は風を、もう片方は水を集めて１つの球体にしていく。
２つの属性を宿した巨大な球体がこのまま放たれてしまえば、この辺一帯どころか間違いなく国まで滅んでしまう。それを察した六剣達は焦りの表情となり、緊張が走る。
「あれを放たせてはダメだッ！！全員止めに掛かれッ！！」
クエイの緊迫した掛け声と共に動き出す全六剣士達。火、氷、風、土、光、翼と各々が出せる最大の技を斬撃を飛ばすが、ジェミニはものともせず球体のサイズを更に大きくしていく。
「ッ…！邪魔をするな！！」
そう声を上げながら大剣を振るい【星屑の厄】を斬り殺すエクス。ジェミニが大業の待機に入ってから邪魔をするかのように六剣達の前を立ちはだかる。
「ちょっと数が多すぎねぇ！？これじゃあ近付けないよ！」
グリシャの泣き言にうんざりしながらもミルも同意見だ。双頭を殺せば２匹に増える【星屑の厄】なのだが、単純に数が多い。
『これじゃあ球体が完成しちゃう…！』
そう焦っても、行く手を遮る【星屑の厄】が邪魔で接近は出来ず、遠距離からの斬撃では威力が低い為、傷はすぐさま再生してしまう。
六剣全員がこのままではマズイと考えた瞬間、空を埋め尽くすような巨大な球体突如として消滅した。
『球体を消した…？いやあり得ない………それなら何で…─────っ…！！まさか…』
混乱の六剣達の中、唯一ミルだけが誰かを探すかのように辺りを見渡す。
必ず近くにいると判断したミルは、遠くに見える羽の生えた人の影を見つけた。
「っ！！アキラ…っ！」
空に浮かんでいた羽の生えた人は、空中に大きな赤い華を咲かせる。それは紛れもないアキラの流血だった。
その瞬間ミルは考えるよりも先に、風よりも速くアキラの元へと急いだ。
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ミルが落ちたアキラの元へと急ぐ少し前。アキラは決死の覚悟で［羨望］を使用した。
「よしっ…！消す事は成こ────あ“ぁ“ぁ“ぁ“ぁ“ぁ“ッッッ！！！！？」
ジェミニの球体を消す事に性能したアキラが喜ぶのも束の間。アキラは発狂したかのように絶叫して頭を抑える。結膜が真っ赤に染まり、目や鼻から大量の血が流れる。
「ゴホッゴホッゴホッ！！ガアァッ！！」
喉が焼ききれる程の熱を帯び、咳き込む度に気が滅入る程の吐血が出る。
体も熱い。炎で直接炙られていると錯覚する程熱く、脳や内蔵が切り刻まれるような激痛が俺を蝕み続ける。
「い、い“た“い“…！！あ“つ“い“…！！」
喉と痛みで声もろくに出す事が出来ない。心臓の音がドクドクドクとうるさい程鳴り響き、俺の不安を煽るように音を刻み続ける。
「あ、ああぁ…！──────あ“あ“あ“あ“あ“あ“あ“ッ“ッ“ッ“！！！！」
内から来るナニかを抑える事が出来なくなったアキラは、白目を向きながら絶叫。その瞬間アキラの皮膚は切り刻まれたかのように裂け、全身から夥しい量の血が飛び散った。
シアンとの繋がりは切れ、落下していくアキラ。寄生していたシアンにもアキラの痛みの情報は流れ込み、シアンもアキラと共に落下していく。
「ぁ………ぁぁ……………」
鈍い音と共に落下したアキラは、左足が曲がってはいけない方向へと曲がっている。まだ意識はある。だが時間の問題だろう。
そんな瀕死状態のアキラの元へと近付いてくる【星屑の厄】達。息の根を完全に止めようとした【星屑の厄】達だったが、それは届く事無く凍結して砕け散る。
「アキラに……近付くなあああっ！！」
普段のミルとはかけ離れた表情と声で聖剣を振るったミルは、すぐさま瀕死状態のアキラを優しく抱き上げる。
「何で……何でこんな事を…！」
ミルは涙を流しながらそう小さく溢すが、アキラからの返事は聞けない。何か喋ろうとしている。だが口が小さく動くだけで声が出ていない。
自身の声が出ていない事を察したのだろう。アキラは少し困った顔をした後に、ミルの肩に手を掛けて起き上がろうとする。こんな状況になってまで、まだ立とうとしている。
「ダ、ダメ…！まだ間に合うかもしれない…！お願いだから……動かないでっ…」
ミルの涙ながらの願いも無視して立とうとしている。だが当然瀕死のアキラに立てるだけの力は無く、左足が折れている。立てる筈が無いのだ。
「…………ッッッ！！」
声にならない苦痛と共に折れた左足を無理矢理戻したアキラ。その正気じゃない行動を涙を流しながら見つめるミル。そしてミルは気が付く。切り刻まれたかのように皮膚が裂けていた筈だったのに、いつの間にか再生している。人間の治癒能力を大きく上回る再生速度だ。
「ぁ“……あ“ー…………ごめんなミル、いつも心配掛けて……でも俺はもう大丈夫だから」
ガサガサの声を出したアキラだったが、すぐにいつもの声になり、ミルに謝罪する。
訳が分からない事が起きすぎで理解が追い付かないミルに、ポンっと肩に手を置いたアキラ。
「俺は絶対に死なない。叶えたい夢の為にも………その、ミルの為にも…？だから泣かないでくれ」
そう言ってミルに微笑んだアキラは、ゆっくりと立ち上がり関節を鳴らしていく。
「ミル、俺を信じて許可してくれないか？俺がアイツと戦う事を」
その視線の先には光線を飛ばして暴れているジェミニの姿があった。そしてアキラはジェミニからミルへと視線を向けて、ミルの返事を待っている。
「……なら、約束して…………ボクを残して死なないって…」
「おうっ！約束するよ。俺は絶対に死なねぇ！指切りだ！」
そう笑顔で言い切ったアキラは、ミルから指を借りて、お互いの小指と小指を絡める。
「約束だ。俺はミルを置いて死なない。…あっ、ミルも死ぬなよ？それも約束な？」
「ふふっ……ん、分かった。約束」
折角カッコよく約束してくれたのに、すぐに思い出したかのようにいつものアキラの顔に戻った。それがおかしくてミルはつい笑ってしまう。
「おっしゃあ！！行くぜミルッ！！」
「ん…！行こうアキラっ…！」
涙を拭い立ち上がったミルは、アキラと共に走り出す。目指すは厄災の十二使徒・双子宮のジェミニ。２人の表情は覚悟と自信に満ちた顔。何も恐れる事は無い。２人には頼りになる師匠(弟子)がいるから。
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ミルと共に走るアキラは、途中口に指を当てて息を吹く。ピーっという音を出すと、背後から飛んでやって来るシアン。シアンはそのまま背中にくっつくと、すぐに寄生していく。
『シアンもごめんな、痛い思いをさせて。帰ったら上手い肉食わせてあげるからな』
そうシアンに語り掛けると、許しの意思を感じた。シアンはとても優しい。その優しさに感謝を込めて、今日のお礼も兼ねてで高級肉を食べさせて上げよう。
そう心で考えていると、、
──ズル、イ人……わた、し達……が、死なせない…って分かってて、使った…
『あーバレたか……でも即死しないように踏ん張ったのはマジだよ？』
俺だって考え無しで生きてる訳じゃない。少しは考える時だってある。今回がそれだ。
悪魔は宿主が死なないように守ろうとする。何故なら宿っている自分まで死んでしまうから。エリーンさんに宿っていたアスモデウスと戦った時、腕を吹き飛ばしたが再生させていた事から、驚異的な治癒は可能と判断した。正直賭けではあったが、危険な綱渡りも主人公には必要な事だ。
──ホント頭良いんだか悪いんだか……まぁ約束は約束。元よりお前に力を貸すのが契約内容だ、俺の力を使え。
『ああ、そうさせて貰うよ』
その会話を終了させると、アキラは１度眼を閉じる。そしてすぐに開くと、瞳はピンク色へと変化していた。
『レヴィアタンの能力消去とアスモデウスの幻影……有意義に使わせて貰うとしようか』
自分にどこまでアスモデウスの力を引き出せるかは分からない。なんせ初めて使う能力だから。それでも大体の使い方は理解できる。
俺は手に力を込めながら走る。すると一瞬ピンクの電気がバチっと弾けた。
それを皮切りに大量の電気を生み出す事に成功した。
「ミル、急ごう。まだ速く走れる？」
「ん、平気」
隣を走るミルもまだまだ速く走れるとの事なので、俺は全身に微弱な電気を流して筋肉を刺激する。すると人間の走る速度を越えた速さで走る事に成功。電気の力で強制的に加速は超王道。まさかこれが出来る日が来るとはな。
表情を緩ませながら俺は身体中からピンクの電気を漏電させながら高速で移動する。ミルは素でこの速さで走れるのだから化物じみてる。
そう考えながら俺は溢れ出る電気を右手に集め、形を想像し練りながら走り続けた。
クソ雑魚キチガイ迷惑系主人公・天道明星
スキルの影響とは言え、メンタルが弱いし実力もたいして無い。頭は悪いし赤の他人なら別にどうでもいいと考えるタイプで、人助けをするのも自分に何か起こるかもと期待しているから。
夢や目標の為なら死地へと飛び込むヤバい奴。
うーん…クソみたいな主人公だな……なんでこうなった…？初期案と大分違う…嫌なヘイトもついてるし…(苦笑)
