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123話:暗躍と覚悟

久し振りにブックマークが増えて嬉しくなった。目標まで24。

「どういう事なんだ…!?何故【厄災の十二使徒】がフォトン平原に現れる!!」


そう怒鳴りながらダンッ!と長方形の机を殴ったのはカルネージ帝国軍の全団長を務める男、アルバータ・ジルシェル。


「ふぅ~む、何でジェミニが出現したんですかねぇ~?」


「そんな事俺が知るかッ!!元はと言えば()()()()()()!!貴様がこの戦争に勝てると持ち掛けたんだぞ!?どう責任を取るつもりだ!!」


そう言って水の入ったグラスをメランコリーへと投げつけたアルバータ。それを見てクスクスと楽しそうに笑いながら避けるメランコリーに、アルバータは額に血管を浮かべる。


「そもそもそも、僕はその宝玉があれば【星屑の厄】を出現させて、自由に操れると言っただけ。その後の事なんか知らないよ♪」


ニヤつきながらメランコリーが指差すのは、アルバータが手に持つロッド。その先には禍々しい青黒い宝玉が埋め込まれている。


「だ、い、た、い~♪ここまで誰のお陰で上り詰められたんだっけ?君が同僚より功績を残したいって言うから力を貸したまで。今日まで甘い甘い蜜はたっぷり吸ったろ?」


「グッ…!だ、だが【星屑の厄】を操れると言ったにも関わらず今はどうだ!制御は不可能どころか活発となり、我が軍さえも襲っているではないか!!」


「あぁ、あぁ、あぁ…元より【星屑の厄】は【厄災の十二使徒】から生まれ落ちた存在。言わば親同然。そんな宝玉の力よりも親の命令を優先するだろうね♪」


クルクルとまるでダンスを踊るかのように回転しながらそう言ったメランコリーに、アルバータのような焦りは感じられない。それどころかこの状況を楽しんでいる……むしろ良かったとさえ感じられる程上機嫌だ。


「ふ、ふざけるなッ!!何故それを今まで黙っていたんだ!!?それさえ知っていればこんな──」


「こんな状況にはならなかった?それはおかしい。逆に聞こう、何故聞かなかった?何故そこまで考えない?大体僕に言う義務は無い。だって聞かれなかったんだから。そしてなにより……面倒だしぃ~♪」


アルバータの言葉を遮る形でそう発したメランコリー。最後にそう言いきると同時に嘲笑うように笑みを溢したメランコリーに、アルバータは剣を抜いて斬り殺そうとした。


「貴様ぁ!!────ッ!?ガッ…!は、はな……せ!!」


だが離れていた筈のメランコリーは突如としてアルバータの前に現れると、その華奢な体からは考えられない力でアルバータの首を掴み、上へと上げる。


「地位に甘え、力に溺れ堕落した人間程愚かな事は無い。お前の事だよ、怠惰な人間」


「ッ!!あ、ああ…!ああああ……あ…」


メランコリーが無表情のままその黒緑に瞳を輝かせると、アルバータの髪は白髪となり、まるで老人のようなシワだらけの顔となる。栄養失調のような細く骨の形が見える腕でメランコリーの手を必死に剥がそうとするが、既に手遅れだった。


「これで君の抱えた怠惰は全部貰った。今日までお疲れ様」


最後にビクビクんと打ち上がった魚のように体を痙攣させたアルバータは、その瞳から光を失う。ボト…と落ちたアルバータは砂のように体を崩壊させて消滅。そこには人形(ひとがた)の砂と鎧と服だけが転がっていた。


「いやいやいや、しかしぃ……まさか【厄災の十二使徒】が現れるとはねぇ?シナリオとは大分違うけど…この戦いで聖剣が目覚めれば問題は無いね~♪」


メランコリーがクルっと1回転すると同時に、ステッキに付いていた宝玉にヒビが入り割れてしまった。

そんな事は全く興味無いと言わんばかりのメランコリーは、『あーあ、早く邪剣も目覚めてくれないかなぁ~』と呟きながら黒い穴へと消えていった。




「大変ですアルバータ全隊長ッ!!フォトン平原に現れた【厄災の十二使徒】が2体に分裂して───アルバータ全隊長…?」


大慌てで仮設されたテントへと入ってきた若い兵士だったが、中にはアルバータはいない。困惑の兵士だったが、後ろから仮設テントに誰かが入ってきた。


「アルバータはどこだ?」


「それがアルバータ全隊長が消えてしまって…」


「何…?アイツ…まさか1人で逃げたのか?」


眉間にシワを寄せてそう発した男、アルバータの同期であるセルラー・ナガルドは少しの間を開けた後に口を開く。


「不在のアルバータの代わりに私が指揮を務める。直ちに撤退命令を全ての隊長に伝達だ。急げ」


「はっ!」


若い兵士はすぐに仮設テントから出ていくと、セルラーは額に手を当ててため息を吐いた。


「散々手を悪に染めてまで手に入れた椅子を勝手に投げ出すとは…アルバータめ…」


そう呟き、更にため息を吐いたセルラーだったが、カルネージ帝国軍に時間の猶予は無い。城壁のあるルミナスとは違いカルネージは仮設テントによって出来た前線基地しかない現状、【星屑の厄】に襲われる危険がある。ましてや【厄災の十二使徒】まで出現した。逃げる他無いだろう。


「ん…?なんだこの砂は………どうでもいいな。それよりも撤退準備だ」


そう言ってセルラーは仮設テントから出ていいった。セルラーが退出すると同時に、隙間から吹いた風によって砂は飛ばされる。


────────────


セルラーが撤退命令を出していると同時刻。フォトン平原にて次々と【星屑の厄】を討伐していたアキラは、ルナとソルと合流していた。


「アキラ君、傷が凄いけど大丈夫…?」


「ん?あぁ……問題無いよ。ありがとう」


口や眼から血を流しているアキラは、手で拭うと何事も無いように振る舞った。これは[羨望(エンヴィー)]の代償の為、放っておけば問題は無い。


「しかし…無限に沸いてないか?もう何体討伐したから分からないぞ」


息切れをしながらもそう呟くソルに、俺も同意見だ。まさしく無限沸き。倒しても倒してもキリがない。体力の減った事で隙も増えていく。このままではマズイ。

そう考えていると、フォトン平原に青白い光が広がり、その光の発光源はジェミニだ。ブチブチと裂ける音が聞こえてくる。その瞬間俺の背中に汗が溢れる。


「やはり…そう来るか…!!」


2体に分裂したジェミニは俊敏に動き、ここまではかなりの距離があるにも関わらず空気を震わせる声。すると石で出来たジャングルジムのような柱が崩壊した。


「ミル…!!」


あそこではミルとジェーンが戦っている筈だ。思わず1歩前に出てしまった足。その足を見つめ、ゆっくりと…引っ込めた。


『俺が行った所で何が出来る……どうせ足手まといになるだけ。……逆に六剣の皆が戦いにくなってしまう』


「行かないのか?」


「………………え?」


ソルの言葉に俺は頭が真っ白となり、そんな返事しか出来なかった。


「だから行かないのか?って言ったんだよ」


「…俺が行った所で皆に迷惑を掛けるだけ……なら行かない方がいい」


「確かにお前は変な所であってマジで心配な時もある。だけどなアキラ、お前はどんな状況でも打ち勝つ奴だって僕は思ってる」


「そうそうっ!私を助けに来てくれた時だって必死になって戦ってくれたじゃないっ!」


いつもよように照れる事もなく、真っ直ぐと俺の眼を見つめてそう言ったソルと、笑みを浮かべたまま俺の頬をツンツンとするルナ。


「お前にしか出来ない事が必ずある。だからミルを助けに行ってこい」


「ここは私達にまっかせなさいっ!」


そう言って姉弟はそれぞれの武器を構える。どうやらまた【星屑の厄】が沸いてきたようで、かなりの数が俺達を囲っている。


「分かった。ルナ、ソル……ありがとうな」


そう2人に礼を言って、シアンの羽を使って飛翔する。その瞬間背後から激しい爆発音が聞こえ、2人の戦闘が始まった事を悟る。

だがあの姉弟なら絶対に勝ってくれる。そう信じているから俺はこうして飛べる。



「ッ…!あれは───」


出せる全速力でミルの元へと急ぐアキラは、2体に分裂したジェミニへの視線を強めた。

まるで人間のような顔の無い巨人。その2体の巨人は空に向かって手を翳すと、ヴァルゴ戦にてなろう太郎が放った太陽魔法級の風と水を1つにした球体を生み出す。


「あれは不味いだろうが…ッ!!」


恐らくこのフォトン平原にいる誰もが悟った筈だ、あの球体は死ぬと。

俺は出来るかどうかも分からぬが、[羨望]を使用しようとした時、、


──ダ、メ……あのサイ、ズは……アキ、ラの体…持たない……わた、しの因子、を使っては…ダメ…!


脳に直接語り掛けるように聞こえたレヴィアタンの鬼気迫る警告。俺だって薄々理解はしている。消すレベルによって受ける俺の代償に差がある事を。

だが、、


「どのみち消さなければこの辺一帯が消し飛ぶ…地図から消える程にな…。もう逃げる事だって不可能なんだよ。なら消した後、俺が生きてる事に賭けるしかないだろうが…!」


──おいおい冗談はよしてくれよぉ?折角治ってきたってのによぉ


「うるさい黙れ。お前らは俺と契約したんだ、だったら契約者を信じてろ。それとアスモデウス、後で俺が生きていたら──お前の力、借りるぞ」


──…!くくくっ…いいぜぇ、お前が生きていたら貸してやる。だが例えお前が死んでも、俺は何としても生き残る……お前を踏み台にしてでもな


「勝手にしてくれ。失敗したらどのみち死ぬんだから有効活用してくれた方が俺も嬉しい」


──くくっ…!契約した時から思っていたがぁ……お前相当狂ってるなぁ?


「ははっ!かもなっ!───……さて、無駄話は終わりだ。伸るか反るか…運試しと行こうじゃねぇか!!」


不敵に笑い、俺は瞳を蒼く染めて決死の[羨望]を使用した。

アルバータは無能設定。よくあるアレだ。

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