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121話:双子宮のジェミニ戦

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やったぜ。

フォトン平原の遥か上空に突如として生まれた真っ黒い穴。その穴が出現してからは雲が太陽の光を隠し、フォトン平原を薄暗く染める。

今だ収まらない揺れの最中、真っ黒い穴から黒いプラズマが一瞬散ると、その穴から黒みの強い灰色をした4本の腕が出現した。


「やっぱり来やがったか…!【厄災の十二使徒】…!!」


穴から現れた異形の4本の腕を見て、そう呟きながら冷や汗を浮かべるアキラ。

前回のヴァルゴ戦ではなろう太郎がいたから何とか戦えてはいたが、決して優勢だったとは言えない戦いだった。


「ど、どういうことだ!?何故ここに【厄災の十二使徒】が…!!────グッ!?!オイッやめろ…!誰を攻撃して───!?」


混乱状態のルミナス軍と、同じく混乱しているカルネージ軍はどよめきを上げていた。挙げ句襲われない筈の【星屑の厄】にまで襲われている。どうやらこれは完全なるイレギュラーらしい。平原に撤退の声が響く。


「何でこんな所に…!クソッ、アキラ!一旦国に戻るぞ!」


「……あ、あぁ…分かった」


黒い穴からゆっくりと腕を伸ばしている【厄災の十二使徒】は今だその姿を現してはいないが、奴が現れた事で活発化した【星屑の厄】がルミナス軍、カルネージ軍関係無く殺戮を行う戦場を見ながらジェーンの言葉に頷いた。


「なぁジェーン!これからどうなると思う!?」


「あぁ!?んなのわかんねぇよ!だがルミナスの目の前で【厄災の十二使徒】が現れたんだ…!討伐……は無理でも追い返すしかねぇだろ!」


やはり国を護る為には戦うようだ。あんな次元の違う化物が現れた限り、カルネージ軍など相手にしている余裕は無い。確定でこのフォトン平原は死地へと化す。もはや戦争所の話ではない。


『いくら悪名高いカルネージ帝国と言えど、【厄災の十二使徒】が現れたんだ。撤退を選ばない馬鹿じゃない筈だ。だがあの化物をどうやって倒すかだ……』


なろう太郎が放った規格外の炎魔法。それはまさしく太陽のような熱量を持ったバカデカイ火球。それに完全に飲まれたと言うのに完全に再生しきったヴァルゴ……今回は恐らく双子座のジェミニだろうが、同等の強さを持っている確信していいだろう。


そう考えながらルミナス聖国前門まで襲ってくる【星屑の厄】を切り裂いて走り続けた俺とジェーンは、漸くルミナス聖国前門へと到着。門を護る騎士達とバリケードを越えて、国の中へと入った。



「アキラ…!無事で良かった…」


国に入ってすぐに、ミルが俺の元へと駆け付けて来た。【星屑の厄】に狙われやすい俺のせいで、戻りが遅かったからかミルは少し涙目だ。


「ミルも無事で良かった…それにルナもソルも」


「姉さんと一緒なんだ、無事に決まってるだろ」


「ふふっ、そうねっ。でも皆無事で良かったよっ!」


ミルの背を擦りながらルナとソルへ視線を向ける。それらしい怪我も無く、強いて言うなら2人とも頬に同じような汚れをつけている。


そうしているとルミナス聖国の門が閉まる。どうやら外に出ていた兵士達の撤退が完了したようだ。


「全六剣の方々!!至急お集まりください!!」


その騎士の声に反応したミルは、『少し行ってくる』と言って駆け足で行ってしまった。恐らく【厄災の十二使徒】への作戦会議と言った所だろう。その間に俺は受けた傷をポーションで癒し、シアンにも掛けてあげた。


「守ってくれてありがとな、シアン」


お礼を言いつつポーション羽へと掛けると、パタパタと動かして俺に近付いてくる。羽についた水滴が顔に飛んで来る…


「アキラ、これ使え。お前が使ってる魔道具の弾丸だ」


「おお!ありがとう、ソル」


ソルから手渡されたのは[纏雷(ドンナーシュラーク)]用の弾丸。マガジンチェンジタイプの銃だからすぐに交換する事が出来るのは助かる。

新しいマガジンをセットし、予備のマガジンはロングコートの内側にしまう。そして軍が使っている砥石を貰い、少し刃こぼれをした細剣を研いでいく。


「…………よし」


研ぎ終わった細剣を確認し、1人頷いたアキラ。後は動きがあるまで体力回復と英気を養いたかったが……そうもいかないらしい。

突如空気を震わせるような甲高い絶叫がフォトン平原全体に響き渡った。


「どうやら…動き出したみたいだな。少し確認してくる」


「ああ、気を付けろよ」


「なに、少し飛ぶだけだ。シアン、頼んだ」


ソルの言葉に頷いて、俺は回復したシアンを背中に寄生させて空へと舞う。ルミナス聖国を護る城壁の高さも越えて、視界に捉えた化物に息を飲む。


1つの体に2つの頭。その頭には顔は無いが、口だけがあり不気味だ。腕はやはり4本あり、鋭い爪のようなものが見える。そしてボロボロの黒いスカートのような、袴のような物をはいており、下には背中合わせてをしたような前足と後ろ足が逆な4本の足が見える。


まさしく異形の怪物。その怪物は思わず耳を塞ぎたくなるような絶叫を上げて、辺り一面に向かって青いレーザーのようはモノを放った。


「目的も無く暴れている……?はは…まさしく化物じゃねぇか…!」


渇いた笑い声を出して、俺は下へと戻る。俺が様子を伺っている間にミル達の会議は終わったようだ。


「ミル、話し合いの結果はどうなった?」


「ん…まず遠距離からの魔法を放ちながら、ボク達六剣が直接斬りつける。あまり魔法には期待出来ないけど……やるしかない」


元々この国に【厄災の十二使徒】が現れるのは2度目の筈だ。その時は6人の聖剣士がいて漸く追い払ったと聞いている。今回はとても厳しい戦いになるだろう。


「ミル…【厄災の十二使徒】は異常な再生能力を持っている。更に弱点以外の倒す術が無いらしい……かなり有力な所からの情報だ」


「…!分かった。ボクから六剣の皆に伝える」


そう言ってミルは急いで他の六剣の元へと急いだ。俺から言っても信じられる事は無いだろう。だがミルからなら少しは信じて貰える筈だ。

そしてこうしている間にも騎士達他魔導師が前門の前に集結。騎士団長らしき人の掛け声と共に門は開かれ、漢達の雄叫びと共に進出した。


「僕達も行くぞ」


「よーしっ!頑張っちゃうよ!」


ルナとソルは箒を2人乗りしてそう意気込む。この2人が一緒にいればとても頼りになる。まさに一心同体の姉弟だ。


「ボク達も行こう。そして勝とう」


「ああ!!」


ミルの出した拳に、俺も同じように拳を作って当てる。たとえチートを持っている者がいなくても関係無い。この仲間達なら絶対に負けない。そう感じる。


「おっしゃ!!やるぞ!!」


パチンと自分の頬に渇を入れて奮い立たせる。【厄災の十二使徒】だろうが乗り越えてやる。でなければ主人公など到底なれない。

俺と仲間達と共に前門を越えた。


─────────────


そして始まった厄災の十二使徒・双子宮のジェミニ戦。開幕から怒濤の魔法による攻撃ジェミニへと攻撃をしかけるルミナス聖国。だが予想通りまともに攻撃が通っている様子は無い。


「やはり弱点の星座を狙えば殺せるのか?だがさっき戦った【星屑の厄】は普通に斬り殺せた……それぞれが違う性質って事なのか?」


姿形、攻撃方法まで違う【星屑の厄】。前回は一際輝く場所を狙ったら殺せたが、今回は首を落としたり切り刻めば殺す事が出来た。

もしそれぞれの【厄災の十二使徒】の眷属が毎度現れる【星屑の厄】ならば、性質が異なるもの分かるが……


そう俺が仮説を立てている間にもルミナス軍の攻撃は続き、沢山の大砲のような物から発射された杭のような物がジェミニの足に突き刺さる。先ずは動きを封じる事からのようだ。


「~~~~~~~ッッッ!!!!!」


「あがッ…!?なんつー声だ!!」


杭を射し込まれた事による痛みなのか、ジェミニは耳を塞がねば鼓膜が破れてしまうと感じる程大きな声で鳴き叫ぶ。金属と金属が削り合うような耳障りな音がフォトン平原に響き渡る。


「ッ!!初っぱなからこれかよ!!」


まるで飛行機が飛んでいるような音がし、空を見上げれば太陽を隠す雲からでも見える赤い無数の光。それはヴァルゴがあの日放った広範囲に壊滅させる隕石と全く同じだった。


『どうする!?[羨望(エンヴィー)]で消せるのか!?』


まだ落ちてきてはいない。が、あまりに広範囲過ぎる技だ。いくら相手の技を消滅させる事が出来る[羨望]でも限度がある筈だ。


「クソッ…!やるしかない!![羨望]!!────ガッッ!!」


瞳を蒼く染め上げ、空にある隕石に向けて[羨望]を放つ。その直後に俺は口から大量の血を吐血。だがそれでも被害が少なくなればと思った。


だがやはり全てを消す事は不可能だった。俺が使った[羨望]が全く効果が無かったと感じる程に無数に降り注ぐ隕石の雨。地形を変える程の威力と爆発。隕石が持つ熱によってフォトン平原の草は自然発火。フォトン平原に響き渡る悲鳴。そんな地獄絵図の中で足を拘束されながらも耳障りな絶叫を上げるジェミニ。まさしく地獄はここだ。


「………………ッ」


口元を自分の血でベットリと染め上げているアキラは、頭上から落ちてきている隕石を苦しい表情のまま睨み付ける。また[羨望]を使おうとした時、、



「大丈夫、アキラはボクが守るから」


聞きなれた声と共に、俺の横を通り過ぎた雪のように真っ白な風。それはミル。

ミルは落ちてくる隕石に向かって聖剣を振るうと、巨大な隕石は真っ二つに切断。そして瞬時に凍結し、粉々に崩壊した。


「アキラだけは…何があってもボクが守るよ」


そう小さく呟いて振り返ったミル。雲によって覆われていた空から少し太陽の光がミルを照らし出す。ダイヤモンドのように煌めく無数の氷の粒。俺の前に立つミルは煌めく光の中で、より一層……輝いていて…とても美しく見えた。

圧倒的にヒロインを助けに来た感じになってる……(笑)

これもう(どっちが主人公か)わかんねえな。


蛇足ッ!!

設定では【厄災の十二使徒】はマジで次元が違うレベルの強さを持つ化物です。前回のヴァルゴ戦でも分かる通り、神様チートを持つなろう太郎の太陽魔法ですら殺しきる事は出来ず、歴代の英雄ですら今だに1体も討伐した事はありません。百害あって一利無しの厄です。

それぞれの異なる業を持ち、ちゃんと弱点もある。お約束ですね。

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