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120話:炎と氷の刃

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「せりぁぁ!!」


シアンの羽を利用して、超高速で次々と【星屑の厄】を切り裂いていく。

だが俺の敵は当然【星屑の厄】だけではない。空を飛び回り、高速で移動する俺は当然目立つしいい的だ。


「チィ…!邪魔だ!!」


下から放たれた石魔法を回避し、優先的に【星屑の厄】を切り殺していく。だが先程から切っても双頭の化け物は分離する。俺の予想ではあるが、奴らは2回殺さなければ消えない。双頭を切った事で1つの頭に2つの手を持つ化け物が2匹になった事が根拠だ。


だが分かった所でもう1度殺す事でしか対処のしようがない。双頭を倒さなければどのみち劣勢は変わらない。だがここで更にあの化け物を倍にするのは正直賭けだ。


『【星屑の厄】はBランク冒険者でも危険な怪物……それが倍に増える+カルネージ帝国軍を相手にするのはキツすぎるだろうが…!』


オマケに2匹に増えた【星屑の厄】は素早い上に、それぞれが異なる攻撃を仕掛けてくる。片方は水魔法を使い、もう片方は風魔法を使う。似ているようで違う…まるで双子のようだ。


『っ…!双子……まさか──…いや、【星屑の厄】が現れたからと言って、必ず厄災の十二使徒が現れると決まった訳じゃない。だがもし現れるとしたら……恐らく双子座だろうな』


そう考えながらも、戦闘に向けた意識は緩めずに戦う。【星屑の厄】を狙いつつ、優先的に分離したモノを狙って首を切り落とす。


戦いつつ視線を他へと向ければ、ミルを始めとした者達が【星屑の厄】の倒し方に気がついているようだ。ルナやソルの無事も確認し、ジェーンも無事のようだ。


「────ッ!!」


油断していた訳じゃなかったが、素早い動きに翻弄され、俺の細剣は風魔法によって飛ばされてしまった。

分離した4匹に囲まれてしまったが、俺は手甲から刃を出して高速で回転し、それはまるでスクリューのように【星屑の厄】を切り刻んでいく。


「───[氷月刃(ひょうるいが)]ッ!!」


今の攻撃によって出来た隙を利用して俺はすぐにその場から脱出。そしてすぐに細剣を回収してそのまま氷の刃を放つ。


「ッ…!?マジかよ!!」


俺の周りで他の騎士と戦っていた【星屑の厄】は、突如俺の方へと首を曲げた。顔は無い筈なのだが、それは人間が振り返った時と似ていて気持ち悪い。

そして奴らはそれぞれ風魔法、水魔法を一斉に俺に向けて放ってきた。ほぼ全方位からの攻撃に、俺は上空へと逃げる。


だが、、



「───!!」


まるでそこに来るのが分かっていたかのように、俺が逃げた上空へと先に飛び上がっていた双頭の怪物。ソイツは2本の手を合わせて、上から下へと振り下ろして俺の体を殴り付けた。


口から飛び散った血と共に、一気に抜けていく酸素。胸に走る痛みが全身に回るのを感じる。

まさに意識が飛ぶ程の痛みだが、何度も経験した痛み。耐えられない訳じゃない。俺は歯を食い縛り、その激痛を何とか抑えようとする。


「シ…アン…!!……頼む…ッ!!」


今は痛みに耐える事しか意識を回せない。だから背中にいるシアンに頼み、シアンの意思で羽を動かしてもらう。さもなくば、下に群がる【星屑の厄】達に蹂躙される事だろう。


「あの者を狙い落とせェー!!」


だがやはり俺は目立ちすぎていた。この戦いの中で唯一空を飛んでいる人物。しかも今俺は意識を保つ為にほぼ脱力状態。この機を逃す程敵軍は甘くはなかった。


次々と俺を狙った魔法や矢が放たれる。背中のシアンが俺に当てまいと、必死になって動いてはくれているが、これら全てを避けるには限度があった。


「ぐッ…!」


左太ももに刺さる矢。頬を掠めた水の刃。風の刃で切り裂かれた体。背中のシアンも魔法を食らったようで、俺達は減速してゆっくりと降下している。


『くそ…!せめてシアンだけでも逃げろ…!』


寄生しているシアンに向けてその意思を飛ばすが、帰って来た返事はNOだった。

空を飛ぶ剣士と言うのは想像以上に厄介なのだろう。遂に地面へと落ちてしまった俺達に、敵軍達はその剣を向ける。


「随分と荒らしてくれたな。だがそれもこれで終わりだ───消えろッ!!」


そういい放った敵兵は、俺の首を狙って剣を振り下ろした。きっと奴は殺してしまうから使いたくはなかったが、この状況を脱するには奴にこの身を預けるしかない。

俺はレヴィアタンに体の支配権を一時的に預け、眼を蒼黒く染めようとした時だった。



「させねぇーよッ!!」


「何ッ!?───グアァァァ!!」


俺を護るように円形の炎が地面から生まれたと思った次の瞬間、その円形の炎は形を変えて全方位に向かって矢のように敵を貫いた。


「わりぃーがソイツはオレの親友(ダチ)なんだ。殺させる訳にはいかねぇーよ」


「おのれぇ…!よくもやってくれたな、フラム家三男、ジェーン・フラム…!」


颯爽と現れたジェーンは、俺の前に立って敵兵達に向けてその巨大な剣を向ける。恐らく敵軍の上兵は、苦虫を潰したようにジェーンを睨み付けた。


「大丈夫か?アキラ」


「あぁ…!これくらい…ッ……何ともないね…!」


「へへッ!あんまし強がんなよ、それぜってぇイテェだろ」


「うっさい…!」


笑うジェーンを前に、俺は細剣を地面に刺して立ち上がる。太ももに刺さった矢を引き抜き、苦痛に耐えながら俺はジェーンを背にして敵兵へと細剣を向けた。


「ジェーンとの共闘……負ける気がしないな…!」


「ああ、オレも全く同じだ!!」


こうしている間にも増えている【星屑の厄】達は、理由は不明だが近くへと集まっている。薄々理解はしていたが、前回の【星屑の厄】よりも知能があるようだ。

完全に囲まれている。だからと言って負ける気がしないのはジェーンのお陰だろう。


「いくらフラム家の者と魔物使いの剣士が相手だろうと、この数には2人勝てんだろうッ!!全員で叩け!!」


その上兵の言葉と共に動き出す敵兵達と【星屑の厄】


「行くぜ、アキラ!」


「ああ、後ろは任せろ!」


お互いが口角を上げてそういい放ち、ジェーンは大剣に炎を宿し、アキラは細剣に氷を纏う。

次々と迫る敵と怪物を前に一切怯える事も無く、流れるように切り裂いていく。


「[氷冠(ひょうかん)]ッ!──[霧雪(きりゆき)]ッ!!」


「ガッ────」


敵兵には氷塊を飛ばして攻撃し、【星屑の厄】には容赦の無い連続突きを放つ。

ジェーンが近くにいてくれるお陰でこの場の気温は高い。俺が[霧雪]を使えばその冷気で細剣に水滴が出来る。そうなれば剣闘大会のように、氷を纏った細剣が完成する。刃渡り共に鋭さが上がる。


「ッ!!ジェーン、頼む!!」


「─!!任せろ!!」


風魔法によって吹き飛ばされた俺は、ジェーンの方へと飛ばされる。俺の声に反応したジェーンは大剣を盾のように持つと、吹き飛ばされた俺の足場として支える。そしてそのまま持ち前の力によって俺を弾くと、俺はそのまま加速して分離体を切り裂いた。


「おいおい…マジかよ…!」


敵数をものともしない勢いで次々と倒していたアキラとジェーンだったが、双頭の怪物と同じ個体が合体した事でジェーンは驚きと共にそう呟いた。


「グッ…!!?力も上がってるじゃねぇか…!!」


合体した【星屑の厄】の攻撃を大剣で受け止めたジェーンは、そのまま後ろへと押されている。自身の力さえも越える力に、冷や汗を浮かべるジェーン。


「おらッ!!」


更に大剣に炎を宿し、押し退けたジェーン。だが合体した怪物は体制を崩す事無く、次の動作へと入ろうとしている。


「[砕氷(さいひょう)]ッ!!」


これは勝てないかもしれない。そう判断したジェーンだったが、駆け付けたアキラの攻撃を見て、その考えを捨てた。


「アキラッ!コイツは一筋縄じゃいかねぇ!だからオレ達の技、合わせるぞ!」


「…!あぁ、分かった!」


アキラとジェーンはそれぞれの技の動作へと入る。それを待たずに接近する【星屑の厄】だったが、ジェーンの『今だッ!!』と発すると、、


「[猛炎(もうえん)]ッ!!」


「[氷月刃(ひょうるいが)]ッ!!」


炎の刃と氷の刃。それは互いに重なり合い、全く異なる属性を宿したクロス状の刃へと変化する。


「──────!!!!」


認識不能で耳障りな絶叫を上げた【星屑の厄】は、2mを越える巨体は×に斬られ、ボトボトと崩れ去る。そして黒い水溜まりを作って消滅した。


アキラとジェーンが息を切らしながら拳を合わせると、敵兵達は驚きの表情を浮かべて一歩、また一歩と後退していく。

周りを見る余裕の出来た俺は他の仲間達へを探すと巨大な竜巻のよう吹雪が見え、違う方角では小規模な雷や竜巻、そして爆炎などが上がっている。どうやらミルやルナ、ソルも無事のようだ。


「ッ…!?な、なんだ!?」


皆の無事を確認出来た俺は、ホッと安堵するが、突然立っているのと厳しい程の揺れによって戦慄へと変わる。


「やはり来たか……【厄災の十二使徒】…!」


収まらない揺れの最中、フォトン平原の遥か上空に出来た禍々しい巨大な黒い穴を見てそう呟き、額から一滴汗を流した。

前回討伐失敗した厄災の十二使徒。今回はなろう太郎はいないけど…頑張れ。

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