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119話:始まりの悪寒

未回収の伏線紛いなモノはいつか回収予定。

ルミナス聖国内を地竜で移動した俺達は、国を護る前門に到着。後門とは違ってこちらは開門しており、先の平原では漢達の声と共に剣がぶつかり合う音、魔法で起こった爆発音などがしてくる。


「おぉ…!ミル様、よくぞお戻りで!」


「そういうのはいい……戦況は?」


「はっ!現在進軍してきたカルネージ帝国軍その数約3万に対し、此方は2万。ですが前線にて聖剣士であるレイヴ様、クエイ様を筆頭に、全六剣が総出で抑えている状況です」


「ん…分かった」


ミルと騎士が戦況を話しているが、正直俺はよく分からない。でも1万の兵力差がヤバいと分かる。それと同時に六剣でその穴を埋めてる事もヤバいと分かる。

少ない頭を回してそう考えていると、ミルが話を終えて戻ってきた。


「フォトン平原に流れるグリン川の方で動きがあったらしい。そこはフラム家しかいないから、そこを突かれたらまずい」


「なら僕達はそこへ向かって戦えばいいのか?」


ソルの言葉に、『ん…』と頷いたミル。だが段々とその表情は暗くなっていく。


「……でもホントに戦うの…?これはボクの国の問題なのに……」


「もーっ!少しは私達に頼ってよ!ミルちゃんもアキラ君も私とソルの恩人なんだから!少しでも恩返ししたいものっ!ねっ?」


「まぁその……そういう事だ。だから僕達を頼れ」


「当然俺も同じだ。ミルの弟子だからって理由だけじゃない。俺だってミルには恩はあるし、何よりここは楽しい想いでも多いからな」


それに親友のジェーンもいるし。……とは流石に恥ずかしくて言えなかったが、俺はミルに向かってサムズアップを取る。するとミルは小さく笑い、『ありがとう』と口にした。


「フラム家って言ったらジェーンもいるんだろ?なら急ごう!」


そこには俺の親友がいる。俺が何かするまでもなく強いジェーンだが、俺達が行く事で必ずイベントが起こる。つまりとんでもねぇ奴を相手にするって事だ。

俺達はすぐに国の鍛えられた地竜に股がり、グリン川へと急いだ。




魔法によって燃えている地面から発生した黒い煙などを抜けて走り続けた俺達は、漸くグリン川付近に到着した。

そして到着と同時に上がる炎に視線を集められる。見れば、ジェーンそっくりのお兄さんが大剣を振るい上げた事で発生した炎のようだ。


「エクス…!ごめん、遅れた」


「おォ!来てくれたか、ミルッ!!」


地竜から主人公のように飛び降りながら聖剣を振るうミル。氷の斬撃が敵兵の鎧ごと切り裂いた。これは戦争だと分かっていても、人の血を見るのは恐ろしいものだ。


そう考えながらも、俺は細剣を抜剣して敵の攻撃を流す。甘いと分かっていても、俺は無殺がいい。故に俺は斬り掛かってきた敵の足を払い、転倒させた所で顔面に拳を叩き込む。白眼を向いて鼻血を出しているが、殺されるよりはマシな筈だ。もっとも、この人が生きて帰る事を恥と思っていない人ならの話だが。


『自殺でもなんでも勝手に死んでくれるなら別に構わない。俺はただ自分の手を汚したくないだけだ』


甘い……と言うよりは自分本意なだけの話ではあるのだが。

そう考えながらまた1人敵を相手にしていると、横から迫った炎が敵を飲み込んだ。


「よぉアキラ!戻ってきたのか!!」


「ジェーン…!ミルの故郷を護る為に戻ってきたんだ。……こんな戦争中に親友と再開はしたくはなかった──がなッ!!」


「へへッ!ちげぇねぇ──なぁッ!!」


親友との会話だろうがお構いなしに切り殺そうと迫る敵に、俺は相手の剣を受け流してそのまま下顎を蹴り上げる。

そしてジェーンも同じく、敵をその手に持つ大剣で力押しで倒していく。鎧にヒビを入れるってどんだけ力籠ってんだよと思わずツッコミたくなる。


それは兎も角、事前に得ていた情報通り、敵の数が多く感じる。俺1人で3人を同時に相手するこの状況。当然ながらキツイ。しかも相手は軍に属する兵士であり、当然剣術共に体術はプロ。俺もそこそこ強いと自負するが、相手1人1人が俺より上だ。


「死ねッ!!──グアッ!!?」


3人に囲まれようが、俺は平気だ。何故なら後ろには信頼できる仲間のルナとソルがついているから。今も俺の僅かな隙を狙った敵を、ルナが氷塊で援護してくれている。

そしてそのルナに近付く敵を弟のソルが剣で対応し、魔道具なども使って隙が無い。てかその粘着爆弾みたいなの何?



「無限湧きみたいにわらわらと出てきやがる…!」


向こうで戦っているミルは、巨大な氷山を生み出して戦っている。その氷山に人間がいるのだから恐ろしい。

対して俺は相手にしている数こそ少ないが、着実に気絶させてはいる。だが同時に体力も減らしていっている。


「ハッ!!──セイッ!!」


「ガグッ──!!」


体力の減ってきた俺を狙った敵だったが、生憎俺の背にはシアンがいる。当然寄生しているから、羽は今俺の一部。それを使えば少ない動きで攻撃をする事だって可能だ。

今も敵の剣を手甲で流して、シアンの羽を借りて少し浮き上がった俺は、そのまま舞うように少ない動作で回転し、相手の右側頭部目掛けて回転踵蹴りを放つ。


「痛いし、それって結構キツイだろ?」


脳震盪を起こして気絶させる。殺しはしないけど、やり方はちょっとキツイのでいく。じゃないと勝てないし。ちゃんと軍で学んだ人相手に、突飛な攻撃って対処キツそうだし。


そう考えながらも、次の攻撃に入ろうとした時だった。



「な、何だコイツらッ!!?化けも───」


誰かの絶叫が聞こえた。そしてナニカが潰れたような不愉快な音。

どうやらイベントが始まったらしい。


俺は状況確認の為に、シアンの羽で空へと舞い上がる。そして先程聞こえてきた『化けも─』の正体が分かった。


『何だあれは……黒い人間?いや人間にしては形が歪過ぎる……』


川を越えて、俺達ルミナス聖国軍に向かってやって来る黒くヘドロのようなベトベトしている人間。だが人間してはおかしな点がいくつかあった。顔は無いが頭が2つあり、手が4本生えている。見ているだけで気持ち悪いその姿は、俺の記憶にある敵と似ていた。


『……ッ!そうだ…【星屑の厄】とそっくりだ』


リコティ王国で戦った【星屑の厄】と姿形が類似している。だとするとかなりヤバイ。ただでさえ今はカルネージ帝国軍と戦っているにも関わらず、【星屑の厄】まで相手にしなくてはならない。


『だがそれは敵国と同じ───いや、同じじゃ無さそうだな』


双頭の怪物達は本来無差別に襲う。にも拘らず、奴らはカルネージ帝国軍を無視して進み、ルミナス聖国軍の騎士へと襲い掛かった。上から[氷月刃(ひょうるいが)]を飛ばして援護しているが、数が多過ぎて俺1人では手が回らない。


「成る程……道理で聖剣士がいて戦力的にも強いルミナス聖国に進撃する訳だ。()()がいるからか」


俺は下の惨劇を見つめながらそう呟き、氷の刃を飛ばす。

ミルが参戦した事で有利になったが、【星屑の厄】が現れた事で戦況は変わってしまった。数の暴力とはよく言ったものだ。聖剣士と六剣の一角がいても、とても対応しきれない数の化け物と兵士達。


『何百年も目的もどこから来るかも分からない【星屑の厄】をたかが一国が操作出来る訳がない。もっと上にこの状況を作った奴がいる……』


どうやら今回もアイツらが絡んでいると見て良いだろう。


「はぁ………チッ……面倒なタイミングで化け物を放ちやがって…!!」


俺はため息を舌打ちをしながら、急降下しながら【星屑の厄】を切り裂いていく。

どれだけぼやいた所で戦況は変わらない。なら俺に出来る事をやるまでだ。

頑張れアキラ。今回も生き残れよ。


PS.本日2度目の接種の為、明日投稿出来ない可能性があります。もし6時に投稿されていない場合は、熱出てます。お許しください。(元気なら執筆しますね)

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