11話:早すぎるフラグ回収
今後は3日に1度のペースで行きます。調子が良ければ早まりますので、よろしくお願いします。
「ん……朝だ」
ベッドからムクッと起き、自分の肌を触る。指先から伝わってくる若い肌、健康的な肉体、間違いなく全盛期の18歳に戻っている‥と思う!
「日を見た感じ…午前5時って所かな?」
隣のリオ君や、1つ隣のベッドで寝ているルカ君を見ながらそう呟く。
折角早く起きたので、外で軽くトレーニングでもしようと俺は扉へと向かった。
「あら、早いのね、アキ…ラ……君?」
「おはようございます、ミオさん」
部屋から出れば、朝食の用意をしているミオさんが振り返り、挨拶をしてくれる。しかしその表情は驚愕と言った所だろうか。まぁ早い話、めっちゃ驚いている。
「えぇ!?だ、誰!?アキラ…君でいいのかしら?」
「あーえっと…驚かせてしまってすいません。そうです、俺がアキラです」
何か変なおじさんみたいな返しになってしまったが、別に気にする事じゃないな。どうせその事は伝わらないんだから。
「まぁ…随分とその…若返ったのね…?」
「色々とありまして…話すにはちょっと信じがたい内容なんですけども」
そんなやり取りの後、俺はトレーニングがしたいから少し外に出るとミオさんに伝えてから、玄関から外へと出た。因みに若返った理由は言ってない。
『でも言わなきゃいけないよな、転移の事とか諸々』
心の中で、いつ皆に言うか考える。下手したら俺は頭のおかしい奴だと認知される可能性があるから、よく考えて発言しよう。
「んっ~~!やっぱ朝日っていいわ」
玄関の扉を開ければ、気持ちいい空気と朝日が体を包む。
そしてその場で腕を掲げて伸びをする。やはり体の感覚が全然違う。老いって怖いとまだ30歳ながら思ってしまう。
それはさておき、朝の運動と言ったらラジオ体操。これから少し筋トレというか、肉体把握の為の準備運動だ。
「1っ2っ3っ4っ!5っ6っ7っ8っ!っと」
あんまり覚えて無いけど、大体合ってる筈だ。俺、ビクトリー!って所しか詳しくないんだわ。
「さて…何すっかな」
手始めに極真の型をやるのもいいが…どうしても俺の相棒達が気になって仕方ない。
「そんな遠くないし…行っちゃうか!」
内緒で軽く冒険もしてこよう。この世界がどんな風にステイタスが反映されるかは知らないが、俺は[略奪]で一度ゴブリン達から能力を奪っている。それに加えてこの体、何が来ても負ける要素が無いね。
という訳で出発。村の見張りをしているフールさんに、事情を説明してから村を出る。目的地は川沿いを真っ直ぐ行った所。そこまで軽く走って行くことにした。
──────────
「はぁ…はぁ…結構走ったけど、まだ体力に余裕があるな…流石に俺の体!」
自画自賛。こうする事で、己のモチベーションを上げていく。少なくとも俺はそうしてきた。
それは兎も角、今目の前にはゴブリン戦の洞穴。この中に石斧と木製槍が置きっぱになっている。
「ゴブリンはきちんと倒した筈だし、別に警戒する必要も無いな」
誰に言うでもなく呟いて、洞穴へと入っていく。やはり洞穴の中は明るい。多分壁で薄い青に光ってるのは魔石とかだろ、この場合。
前回では確認の暇も無かった洞穴を楽しむ。我ながら緊張感に欠ける。まぁ緊張する事も何も無いんだけど。
「何故だろ…スッゴく嫌な予感…?」
何か背中がゾワゾワする。
そんな事を考えている間に、地面に置いてある木製槍を発見し、早速拾う。後は奥のフロアに石斧がある筈だ。
通路を曲がり、ゴブリンと戦ったフロアに出た瞬間の事、、
「グルルル…」
バギッ…ゴギ!
俺が殺したゴブリンの亡骸を骨ごと噛み千切り、食事している手足以外に2本背中に腕が生えた熊と目が合う。
「………おふ」
「グルァァァァァアア!!」
手に掴んだゴブリンを投げ捨て、恐ろしい咆哮を俺に向けて放つ。
たったそれだけで空気がビリビリと震える。
「おわぁぁぁぁ!!?タイムタイム!!伏線回収早いんだよっ!!」
どう見てもあの熊は中ボス。
どう考えてもレベルがまだまだ足りない俺に勝てる相手では無いのは明白だ。
『特にあの腕…ただでさえ太い腕が4本も生えている。捕まれでもしたら即死は不可避…!』
戦うのは賢明な判断では無い。もはや[略奪]でどうにかなる相手でも無い。ならば、、
「逃げるが勝ちっ!!」
俺は急いで来た道へ振り替える。そこまで広くはない通路。奴も早いスピードで追い掛けるのは、あの体では少し酷だろう。そう考え、俺は走り出そうとしたその時だった。
「ガッ…!?」
背中に激しい痛みを感じる。すぐに振り替えれば奴は俺の背後まで迫っていた。
俺が狭い道に逃げる前に、即潰しに掛かった来やがった…!
『どうする…!?この展開からの打破は…』
「何も……無い…」
ジリジリと俺に近付く4本腕の熊。
この絶望的な状況で俺は腰が抜け、その場に倒れる。
「あっ…あぁ…」
「グルル…!」
ゆっくりと、しかし確実に迫る死。
その恐怖で俺は何も出来ずに震える。
少しでもダメージを減らそうと腕で体を守ろうとした時、手に持つ物が目に入る。
それはリンゴ取りにしか使ってない木製槍。
「クソッ…!一矢報いてやる!!」
唯一残ったこの槍を手に、俺は立ち上がる。
作戦もクソも無い背水の陣で槍を構える。
「掛かってこい、クソ熊が…!」
「グルルルル…」
熊と向かい合う。下手したらこの戦いで俺は死ぬかもしれない。
なら最後まで、、
「盛大にカッコつけないとな!!」
ニィっと笑う。そして無駄に足を開いて、無駄にカッコつけたポーズを取る。
全部無駄な行為だが、全てが大事な事。
それに俺はこういう時の為に異世界小説を読み、肉体も精神も鍛えてきた。
「行くぞクソ熊がぁぁぁぁっ!!」
「グルルルガアァァァァァ!!」
俺の汗が地面に落ちた瞬間、お互い動き出した。一方は獲物を仕留める為に。また一方は生き残る為に。
今後はこの欄に魔法等を書いていこうと思います。
[治癒]読み方:ヒール
属性:回復魔法
効果:対象の傷を癒す。ただし大きな傷にはあまり効果は無い。
 




