118話:ルミナスへ帰還
アクセス5万を越えて、後少しで6万になります。ホントありがたい限りです。
「あら、これから出るの?」
「うんっ!色々面倒見てくれてありがとっ!エリーンさん!」
エリーンの家へと到着した俺達はすぐに出国の準備に入る。俺達は今まで通り少ない荷物だが、ルナとソルはそうもいかない。
……っと思っていたが、2人は既に用意を終えていた。事前準備。流石です。
「じゃあ……行ってくるね」
「えぇ、頑張ってね。ルナちゃん、ソル君。アキラ君とミルちゃんも気を付けてね」
涙を浮かべてエリーンに抱き付いたルナ。少しして離れたルナは、『よしっ!』とぞい!っとポーズを取っている。
「なぁミル、ルミナス聖国までは列車だけど…流石に戦争中の国には列車通ってないよな?」
「ん…きっと通ってない。だから行きと同じルートで行く予定。…でもアルカナンとルミナス聖国は近いから、もしかしたら竜車が出てないかも…」
そうなったら徒歩になるのだろうか。アルバナ帝都からアルカナンまではそこそこ距離があったから、どんなに急いでも到着が遅れる。ミル1人だったらすぐなんだろうけど。
そう考えながらも、俺達はグリモバース発アルバナ帝都行きの列車がある駅へと向かった。
アルバナ帝都行きの列車はすぐに到着し、俺達はすぐに乗ることが出来た。
「なぁミル。そのルミナス聖国って戦争をする国なのか?」
「ううん。ルミナス聖国が戦争は仕掛けない。でも仕掛けられたら国を護る為に戦う。そもそもルミナス聖国に戦争を仕掛ける事事態がおかしい…」
何処と無く日本っぽい?日本も自分から行かないし。でも日本の軍事力って凄いらしい。ルミナス聖国にはまさしく一騎当千の聖剣士がミルを抜いても2人いるから、戦力は強い筈なんだよな。
「今国には父様もいるから既に敗戦しているって事は無い。でもカルネージ帝国を相手にしてるから……」
「カルネージ帝国は何でもするって有名な国だからな。欲にまみれた人間が沢山いると聞いた事がある」
心配そうにするミルに続いて、向かい側に座るソルが窓の景色を眺めながらそう呟いた。
どうやらカルネージ帝国って所は異世界の業を集めたような国らしい。性格クソ貴族とかいっぱいいそう。王室もクソっぽい。偏見だけど、聞いた限りだとそう感じる。
『しっかし……カルネージねぇ…虐殺って名前がついてる国ってどうなんだ?』
どっちにしろろくでも無い国なんだろう。
しかし次のイベントがまさか戦争とは思いもしなかった。次もメランコリー関連だと思っていたのだが……
「………」
黙って俺の膝の上にいる巨大な蝶、シアンを撫でる。平成の日本生まれの俺には当然戦争を体験した事は無い。戦争の映画や本などは見てきたし、【なろう】でもしょっちゅう戦争の回を見てきた。だが実際に戦火へと向かうとなると震えてくる。
「大丈夫…?」
「ミル……ありがとう」
少し震えてきた手を握ってくれたミル。ひんやりと冷たい手を感じる。でも確かに温かいモノを感じる優しい手だ。
ミルが俺の手を握ってくれているお陰で、少し落ち着いてきた。今は戦争の事よりも、向かいに座ってるソルの目線が辛い。恥ずかしい…!その無表情やめて。
──間も無く、アルバナ帝都です。
ソルの無表情に耐えていると、車内アナウンスが鳴り響く。どうやらもう到着らしい。
そして駅へと到着した俺達は、駆け足で竜車乗り場へと向かう。
「この竜車ってアルカナンまで行きますか?」
「あぁ?アルカナン?そんな所まで行けねぇよ。知ってんだろ?ルミナスとカルネージが戦争中だって」
そう言って竜車のおっちゃんはどこかへ竜車を走らせて行った。しかし困ったな。予想はしていたとはいえ、急いでいるこの状況で竜車が出ないとは……
「どうする?ミルちゃん…」
「ん……困った…」
確かにミルの言うとおり困った状況だ。ここから走っていったらどれくらい掛かるんだろうか。
「なあそこの嬢ちゃん達!アルカナンへ行きたいんだってな?だったら地竜を借りるってのはどうだい?」
そう発したのは、同じ竜車を扱うおじさん。そのおじさんはニカッと笑うと、詳しい事を説明してくれた。
「竜車は走らせられないが、地竜なら構わない。俺達御者は危険な目に合わないからな。どうだい?借りてくかい?」
そのおじさんの言葉に俺達は当然yesを選んだ。
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地竜を借りてアルカナンへと向かう俺達は、それぞれ1頭ずつ地竜に股がっている。3頭の地竜が颯爽と走っている中、1頭遅れている地竜がいた。
「おばばばばばばッ!!??」
俺だよコンチクショウ。
以前も地竜に乗る機会があったのだが、その時も俺は地竜をろくに扱えなかった。以前は手綱をゆっくりと引いて、腹を撫でたら落ち着いたが……コイツはダメだった。
さっきまではミルが俺に乗り方を教えてくれていたのだが、俺は『もういいや…ありがとう』と言ったら悲しい顔をして『そっか…』と言った。俺の方が申し訳ない。
「暴れんなよ!暴れんなよ!」
いい加減お尻が痛くなる程雑に走る地竜にうんざりしていると、『あと少しでつくから頑張って』とミルが言うから頑張ります。
「マジか…」
アルカナンが見えてくると同時に、その先にあるルミナス聖国も見えてくる。
だがルミナス聖国の付近で上がっている煙と炎が見え、俺は息を飲んだ。
どうやら国内で戦っているのではなく、城壁の外で戦いを繰り広げているようだ。ここまでかなり離れている筈だが、爆音や焦げ臭い煙などはここまで届いている。
「………急ごう」
そう発したミルの声で、呆然とその様子を見ていた俺は意識を戻す。
誰もいない無人の街、アルカナンを越えて、俺達はルミナス聖国の裏へと回る。国の裏は山に囲まれていて、進行は出来ないとは言え当然門は閉まっている。そんな門の前にミルが立ち、
「クリークス家次期当主、ミル・クリークス。今戻りました」
普段は見せないクリークス家の者としての顔付きに変わるミル。
すると巨大な門は開き、数名の騎士達が俺達の元へとやって来た。
「ミル様…!よくぞお戻りで!すぐに前門へお向かい下さい」
「ん……分かった」
そしてミルを先頭に街中を地竜で駆けて、前門へと急ぐ。ミルの表情は後ろからでは分からないが、その背中からは強い闘気を感じる。それは国を護る剣士の背中だった。
国同士の戦争は異世界ではお約束です。ですがお察しの通りアキラは割りと脳筋なので、たった今ネットで調べてきたかのようなピンポイントな知能を持った主人公のようにはいきませんね。




