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116話:人徳のラミエル

メンタル共に精神不安定系主人公。目指す夢がデカ過ぎるのに精神面が弱すぎる…

「貴方に宿っている悪魔は危険。すぐに対処しなければ取り返しのつかない事になる」


そう言って彼女は白いローブを捲った。

濃いめのクリーム色をした髪色に、ショートヘアー。そして眼が黄色く、十字架のような模様が眼に刻まれている。


「天使の方ですか」


「へぇ…分かるんですね。そうですよ、私は“人徳“のラミエル。でもよく分かりましたね?気配は隠していた筈なんですけど」


「どうでもいい事ですね。それより取り返しのつかなくなるとはどういう意味ですか?」


俺が警戒しつつそう言うと、ラミエルは俺に向ける視線を強める。まるで敵を見ているような目付きだ。


「人間に宿った悪魔は宿主の負の感情を餌に成長する。段々と本人にも影響が現れ、最後には精神を崩壊させる程歪み、悪魔は宿主の体から出ていく……勘の良さそうな貴方ならこの意味が分かりますよね?」


確かに俺は全てを理解している訳じゃないが、大体を把握していると思っている。俺の知ってる作品でも、大体がろくでもないデメリットを抱えていた。もっとも、転スラはデメリットが無いイメージだが。


「勿論理解はしてますよ。だけど俺にはコイツの力が必要なんです」


たとえ契約で縛られていても、アイツらは紛れもない悪魔だ。当然自分の為に動くだろうし、自分の命しか勘定に入れない。

レヴィアタンにとって俺は餌を生み出す道具なんだろう。俺の命を守ろうとするのも、宿主が死んだら自分が消えるから。ただそれだけだろう。


「っ…!貴方はちゃんと理解出来てない!……ウリエルから聞きました。貴方、嫉妬と契約しているそうですね?それはあまりに危険過ぎる行為です…!一人間が抑えられる奴等じゃないんですよ!?契約をしてしまった最後、悪魔達は最終段階になるまで表に出てこない。つまり貴方の中で進化を続けてしまうんですよ!」


成る程、何でアイツらが宿主と契約しないか大体理解した。非効率過ぎるんだろうな、恐らく。だったら体を乗っ取って、宿主の意思に従って暴れ回る。その方が宿主が早々に死ぬ事は無いだろうし、負の感情を溜めやすい。

逆に契約したら一定数で負の感情は溜まるが、宿主の意思で動くから人間のやれるレベルの事しかやらないから溜まりにくいって感じなんだろう。


「…それでも俺は夢の為にアイツの力が必要なんです。お互いを利用しあってる関係なんですよ」


「っ……口で言っても分かりませんか…!?」


俺を見る目が完全に変わった。

明らかな敵対心をその身に感じる。どうやら実力行使ってやつらしい。


「俺と戦うんですか?それとも殺すつもりですか?貴女にその権限はあるんでしょうか?俺を殺したら、貴女にどれだけの厳罰があるんです?大天使の権利を剥奪?それとも讃えられるんでしょうか?」


自分でも驚く程饒舌に舌が回っている。こんな嫌な事ばかりいうタイプでは無かった筈だが……これは悪魔の影響なんだろうか。それとも俺自身の本当の姿なんだろうか。後者だとしたら嫌だな。


「随分と物知りなんですね…!誰に教わったかは知りませんが……処刑ではなく救済なら、私達は人間に力を使えます。動けなくする程度なら攻撃する事だって」


「……そうですか」


その言葉と同時に俺は抜剣し、ゆっくりと息を吐いて構える。片やラミエルは手に光の剣を出し、背中の先端が蒼いグラデーションの4枚の翼を大きく広げる。


「貴方を──救済します…っ!」


「結構です」


お互いその言葉をいい終えると同時に加速して剣と剣がぶつかり合う。まさかここまで人間離れした踏み込みが出来ている事に驚愕しつつ、俺は素早く左脚でラミエルの横腹に蹴り入れる。だがそれは背中の翼によって防がれる。


『ガードが堅いな』


近距離は若干俺の方が不利だと判断し、俺はしなやかにバク転をして、ラミエルの顎を蹴り上げつつ距離を取る。


「[氷月刃(ひょうるいが)]」


最後はバク転ではなくバク宙をし、そのままラミエルに向かって氷の刃を飛ばした。


「っ…![聖十字の壁(ホーリークロス)]」


天から射し込む光が十字の壁となり、氷の刃を防ぐ。流石は大天使。魔物のようにはいかない。


「…やっぱりダメか」


「悪魔を宿した人間に…!油断はしません…っ!」


そう言ってキッ!っと俺を睨み付けるラミエル。正直面倒だ。ここでコイツを殺さなければ俺はコイツに追われ続けるだろう。

ならいっそ、ここで完全に殺して───


『…!?俺は…何を考えてるんだ?』


今俺はラミエルを殺そうとしていた。明確な殺意を抱いた。おかしい。意思疏通の取れる生き物は殺したくないと感じていた筈なのに…


「くくくくっ……これも悪魔の影響かぁ…!あぁ…!凄くいい…!」


「やはりその黒ずんだ蒼い瞳…!見逃す事は出来ませんね…!」


そう発して手に握る光の剣に力が入り、ツゥーと額から汗が流れるのを感じるラミエル。


『口調が変わった……やはりこの人間は悪魔の影響を強く受けている…!だけどウリエルの情報じゃまだ初期の筈。いくら何でも成長が速すぎる…!』


そう思考しながらスピードが上がり始めたアキラの攻撃を対処していく。剣撃はその光の剣で。斬撃は光の壁で。近接はその翼で。傷は常時治癒されているが、体力までは回復しない。


『ここは一気に決めなくては危険ですね…』


ラミエルはアキラに負わせる傷を最大限無くす意識をして、手に黄色の電撃を集める。バチバチと高電圧の音と共に、形状を変化させる。


「雷霆ケラウノス…!これで貴方を止めます…!!」


バチバチと放電させている黄色の電撃で出来た槍を構えるラミエル。俺の中にいる奴等が激しく警戒しているのを感じる。


『あの槍は危険だって告げてる…だとすると近距離、中距離の戦闘は危ないか。それなら…!』


牽制の為に懐から投げナイフをラミエルに向かって3本を投げる。が、そのナイフは全てラミエルの体を透かして通り過ぎてしまった。


「ッ…!幻影!?まさか───」


瞬時に理解した時には既に遅く、俺の視界の右から黄色い光が接近してくる。

俺は下唇を噛んで、苦し紛れに左へと飛んで距離を取る。


「これで終わりで───っ!!??」


自身の固有能力[神視]で生み出した幻影を囮にした攻撃。初見では見抜けない完全な不意をついた攻撃だった。

完全にケラウノスを胸に刺せる。そうなる筈だった。だが左へと飛んだこの人間は、槍を向ける私の顔を見て薄気味悪く笑った。


「悪いねぇ…電撃と幻影は俺の十八番なんだよ…!!」


「っ!!?眼が違…────」


ラミエルの言葉は最後まで言いきる事は無く、向けられたアキラの左手の平からピンク色の電撃の波動が放たれた。

完全にその電撃の波動に飲まれたラミエルは、公園の木々へと吹き飛ばされる。


「そん、な…!情報と、違う…!!」


血を吐いて体を震わせるラミエルは、自身の治癒を急ぐ。だがそんなラミエルの前にピンク色をした電気が見えた瞬間、目の前にアキラが現れた。


「くくくっ…!いいザマだなぁ!クソ天使…!そのまま無様に死に晒せ」


愉快そうにくつくつと喉を鳴らして笑うアキラ。その表情は声を掛けた時とはかけ離れた程歪んでいるモノだった。

そしてアキラは左手にピンク色をした球体の電撃を集め、左手をラミエルへと向けた。


「終わりだぁ、クソ天使」


「くっ…!![神聖なる雷槍(ホーリースピアーズ)]っ!!───っ!?な、何で!?」


「危、ない…危な、い……今、のは危険………君も、アキ、ラより…優れて、る……──だか、ら殺す……」


自身の命を優先して、人間に放つには強すぎる技を放とうとした。だがラミエルの技は発動されない。何故発動しなかったのか、真っ白になりかけている頭をフル回転させて考える。

そんなラミエルに能面のような顔を近付けたアキラはそう小さく発した。


『また……眼が違う…!!』


「ああ鬱陶しい!!お前は黙ってろ!!鬱陶、しい…のはお前……お前、が黙、れ……」


アキラがまばたきをする度に眼の色と共に口調や顔付きまで変わる。それはまるで多重人格者のようだ。

1人で喧嘩をするように言い争っている最中でも、ラミエルへの警戒は全くと言っていいほど解けていない。逃げられる隙が無い。





「アキラ……?そこで…何をしてるの…?」


いつ殺されてもおかしくないこの状況で、可憐な少女の声が響いた。その声がした瞬間、アキラの瞳は黒へと戻り、その少女へと振り返る。

ラミエルはこの隙を逃しはしなかった。光のような速さでラミエルはアキラの元から逃走する。


『報告しなくちゃ…!!あの人間に宿ってる悪魔は“嫉妬“だけじゃない…!あの電撃は……“色欲“も宿っている…!!危険度は“憤怒“、“怠惰“に匹敵する…!』






「……………チッ」


逃げ去ったラミエルを見つめながら舌打ちをしたアキラ。それは一体誰が発したのかは本人以外分からない。



嫉妬は相手に対してデバフ。色欲は幻覚を見せる。因みに色欲は七つの大罪の強さの順列で言えば下の方です。


当然ながら宿す悪魔が増えれば、その分受ける精神汚染も倍に上がります。嫉妬は優れた者を異常に妬み、自分と比べて自身を嫌悪する。色欲は殺す事に対して中毒レベルの快楽を覚えます。それぞれ宿主からの感情を継いでいるので、宿った人によって精神汚染の内容が違う。尚、宿主から生まれた悪魔達は性格こそ違いますが、目的などは似てきます。

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