表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/392

107話:始まりは突然に

ブックマークがまた増えてとても嬉しいです。深く感謝を。


※[羨望]のルビを“エンヴィー“に変更いたしました。

次の日の朝に俺は無事に退院。結局昨夜の事は誰にもバレる事は無く、何事も無かったかのように戻れた。


「忘れ物、無い?」


「うん、平気。返してもらった荷物もあるし、俺完全復活だ!」


そう元気よく黒のクソ長いロングコートを着て、ミルにサムずアップをした。


「ん、それは良かった。所で頼まれてたシアンの事だけど……」


「見付かったの!?」


「ううん…ごめん、見付からなかった……でもそれらしい情報は掴んだよ」


ガクッと項垂れた俺に、まるで差し込む光のような情報を教えてくれたミル。

どうやら最近グリモバースで、蝶型の魔物が空を飛来しているというモノだった。完全にシアンじゃん。

シアンは色欲の悪魔に襲われた時に逃げ出してから行方知らずだったから有力な情報だ。



「俺の予想だと色欲との決戦は明日だ。それまでに俺の戦力をなるべく高めたいから早くシアンを見付けないとな……」


「ん、そうだね。でもアキラだけは絶対に死なせないから安心して…?ボクが守るから」


「おお……スッゴい頼もしい言葉。本来俺が言うセリフなんだろうけど……俺が言っても安心出来ないんだよなぁ……」


完全に主人公とヒロインの関係性が逆転してるんですが…?やべぇよ…やべぇよ……速く挽回せねば!







そして俺達が向かったのは時計台がある広い公園。そこにシアンがいる可能性が高いので、来てみたのだが、予想通りシアンはこの公園にいた。公園でシアンの名を叫んでいたら物凄いスピードで俺に突っ込んで来たのだ。


「よしよしっ!いい子だな!」


「~♪」


羽をパタパタと動かして俺に頬すりをするシアンは実に可愛らしい。いつも以上に激しめのスキンシップを取っていると、シアンは俺の背中へとくっついてきた。定位置って感じだな。


「見付かって良かった……所でこの後どうしようか…?」


「そうだな…ほぼ確定で明日遭遇するから探す必要性は無いけど…──あ、ならミルにお願いがある」


「…?なに?」


「俺と打ち合い頼めるか?結構ガチで」


もう3日もミルと稽古をしていない。毎日使っていた細剣も3日も触っていないから、勘が鈍ってないか心配だ。こういうのは毎日やらないと、覚えた倍の速さで忘れてしまうモノだ。


「いいよ。ボクもこの3日間は1人で魔物を相手にしてたから…アキラとやれるのは嬉しい…!」


「決まりだな。んじゃ早速……胸を借りるよ、師匠!」


「ん…!」


────────────


場所は変わり、【太陽と月の交差】店内。アキラとミルがシアンを探している時の事。


「どういう…事…?」


ルナは弟からの手紙を読んで、訳が分からずパニックになっていた。


──姉さん、エリーンさんから距離を取った方がいい。俺の知り合いからエリーンさんが怪しい集団といたと聞いた。最近魔女の連続殺人もあるから用心して欲しい。特に明日の皆既日食の日には特にだ。


「意味分かんないよ……何でエリーンさんが出てくるの…?」


弟からの手紙。いつもと何ら変わらない文だったのに、最後に書かれていた事に驚く。

何度見てもルナが姉のように慕っているエリーンさんの名前だ。弟の事を信じない訳ではないが、エリーンさんがそんな怪しい集団と関わりのある筈が無い。


だが本人に確認しようにも、弟とはもう10年も会っていないし、ここ1週間はエリーンさんも顔を出していない。


「明日は大事な日なんだけどなぁ…」


皆既日食の日だけ、私とソルは2人になれる。昔はそんな体質じゃ無かったんだけど、両親が亡くなってからは何故かこんな体質になってしまった。そのせいで弟とはもう10年も会えていない。


「大きくなったのかなっ…?」


エリーンさんもその日は()()()()()()をしてくれるって言っていた。

楽しみの筈なのに、心にしこりがあるような感覚にルナは悩まされた。


「……でも念の為…今日は店から出ないようにしよっと。昨晩も魔女が殺されたみたいだし……これで14人目、か………物騒だなぁ…はぁ…」


テーブルに伏せるように倒れたルナは、小さくため息を吐いた後、店の魔道具を布巾で拭く作業へと入った。







「やっぱ…!はぁ…はぁ……ミルは強い、なあっ!」


「アキラこそ。また強くなってるし、速い。追い抜かれる日も近い、かな…?」


「いやいやそれは……」


打ち合っていると時折見せるミルの表情で、自分が強くなってると分かる。だけどまだまだミルやコルさんのいるステージには行けそうにない。凄いなぁ…ミルもコルさんも。やっぱり剣に選ばれた時点で俺とは大違いだよな。


「どうしたの…?黙り込んで…」


「…え?あ、いやいや何でもないよ!それよりミルも強くなってるよね?」


「ボクもアキラに負けてられないから。それに聖剣の使い方も覚えなくちゃいけないし……後ちょっとで上手く行きそうなんだけど…」


ミルは聖剣を見つめながらそう小さくため息を吐いた。どうやら向こうも向こうで悩んでいるらしい。強さや鍛練に限界は無いからな、悩んで当然だ。


「大分暗くなってきたけどどうする…?宿に戻る?」


「そうだな、明日に控えて今日は体を休ませよう」


時計台を見れば、もう少しで巳刻の裏が終わり羊刻の裏になる時間。既に公園は薄暗くなっていた。

宿へと向かう途中で、俺はソルに頼んでいた魔道具が気になり、ちょっとだけ様子を見に行った。


「ソル、いるか───って何だっ!?」


「爆発…?」


店の扉を開けると同時に奥の工房から爆発音がした。一瞬扉に爆弾でも仕掛けてるのかと思ったが、どうやら違うらしい。


「おい…ソル…?」


「ゴホッ…!ゴホッ………何だ?まだ頼まれてた物は出来てないぞ」


奥の工房へと恐る恐るミルと向かうと、顔に煤のような汚れをつけたソルは、窓を開けて換気していた。


「いやその……大丈夫か…?」


「問題無い。ただ魔道具が耐えきれず爆発しただけだ」


「どこが問題無いんだよ!大惨事じゃねぇか!」


「ホントに大丈夫…?怪我とかしてない…?」


俺とミルの心配を余所に、ソルは布巾で顔の汚れを落としている。見たところ怪我は無さそうだけだ……やっぱ頼んだ物が物だけに、作るのは難しそうだ。


「安心しろ、俺はプロの魔道具職人だ。大体は既に理解している。明日の朝までには必ず完成させる」


「まさか徹夜か?頼んだ物があれば凄く助かるが……無理はしないでくれよ?」


「ああ」


俺の言葉に小さく頷いたソルは、再び魔道具作りを再開した。なるべく徹夜はやめておいた方がいいんだけどなぁ……仕事パフォーマンスが落ちるし、何より体に悪いし。


「邪魔になっちゃ悪いから俺達は帰るな」


「ああ、気を付けて帰れよ。それと……」


「ん?何だ?」


「明日は……その…、頼んだぞ…!」


「…!ふふっ、ああ任せろ!」


俺はソルに向かってサムずアップをして笑う。それに対してソルは自分か言った事を恥ずかしそうに後悔している。乙女かお前は。


そして今度こそ本当に店を出だ俺達は、寄り道せずに宿へと向かう。


「ねぇ、ソルに何を頼んだの…?」


「んー?まぁ言ってしまえば遠距離武器だよ。ほら、俺近距離特化じゃん?」


「アキラは……剣士なんだからそれでいいんじゃないの…?」


「うっ…!まぁそうなんだけどさ……なんなこうっ!……………………あ、あるじゃん?」


「言葉が見付からなかったの…?」


「う、うぅ…!」


あまり俺を苛めないでぇ…!いやホント勘弁してください!何でもしませんけど許してください!

これ以上恥ずかしい思いをしない為に、俺は口をチャックして宿へと歩く。その間ミルは隣でクスクスと笑っていた。可愛いんだけど……ただただ恥ずかしかったです。


─────────────


そして翌日の早朝。俺とミルは急いでソルとルナの元へと急ぐ。何時から2人になるか分からないが、速いに越したことはないだろう。


「ソル!!ルナは!?」


「いら…しゃい……ど、どうしたのっ…?」


バンッ!という音が出るほど強く開けて店に入ったが、ルナはいつも通りお店の掃除をしていた。どうやらまだ仕掛けてきていないようだ。


「朝っぱらから騒がしいぞ、アキラ。こっちは徹夜だったんだから静かにしてくれ。まぁ…気持ちは分かるがな」


「おお…!ソル!」


店の奥にある扉からソルが姿を現す。朝にソルの姿を見るのは新鮮だ。


「良かった……2人共無事で…」


「ああ……だが安心は出来ない。今日は2人を護ろう」


小声でそう言うと、ミルはコクりと頷く。

狙われるのは何もルナだけじゃない。ソルの可能性だってある。

俺とミルはいつでも戦えるように気を張っていると、、


「そうだ、先に渡しとかないな……アキラ、ホラよ。頼まれてた物だ」


「おおっと!?」


ソルは雑に頼んでいた魔道具を投げ渡してきた。俺は慌てて受け取って、その魔道具を満面の笑みで見つめる。


「アキラ、これはなに…?」


「やっぱミルも気になるか?これは─────」







「あら~随分賑やかねぇ」


──ドクッ……


嫌な心臓の音と共に本能が警鐘を鳴らす。鼻腔をくすぐる甘い匂い、その声だけで気持ちよくなれる声。


「色欲の悪魔…!!」


「あら~!また会ったわねぇ♡──クソガキ」


和やかな笑みから一転、薄水色髪の魔女は俺を真顔で見つめる。


「シッ…!!」


「ハアッ!!」


すぐさま細剣を抜剣した俺とミルは、色欲の悪魔へと斬り掛かる。

だが斬った筈の色欲の悪魔は、ピンクの煙となって消える。


「あはっ♡朝から元気だねぇ~。ルナちゃんもそう思わない?」


「え、えっ…?どういう事…ですかっ!?エリーンさんっ…!」


いつの間にか色欲の悪魔はルナの隣におり、腰に手を回している。


「姉さんから手を離せ!!───グッ…!?」


近くにいたソルも腰に佩剣している剣で斬り掛かるが、またしても煙のように消える色欲の悪魔。


「ルナがいない!!」


その煙が張れると、色欲の悪魔と共にルナの姿まで消えていた。

すると混乱状態の中、背後から甘い声がした。


「じゃあルナちゃんは貰っていくから。バイバ~イ」


色欲の悪魔は背後にある店の扉から出ながら俺達に手を振った。


「逃がすか!!────!!!!」


すぐに後を追って外に出るが、外の様子を見た俺は冷や汗を浮かべて急いで店の中へと駆け込んだ。


「ミルッ!![氷晶(ひょうしょう)]を!!速く!!」


「っ…!!」


ミルが聖剣を振るい、結晶のバリアを作る中、俺は[氷冠(ひょうかん)]で氷塊を生み出して壁を作る。


氷塊と結晶のバリアが出来た瞬間、眩い光の後に激しい地響きと業火に包まれ、【太陽と月の交差】は完全に焼失した。

今回は勝てるとか以前に生き残れるのか……作者である私にも分かりません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ