序章:転生準備を始めよう
初めての小説です、よろしくお願い致します。
「なぁ、異世界転生物の小説って読んでる?」
小学3年生の頃、仲が良かった友達に聞かれた[異世界転生]
その頃俺は小説なんて異世界物?に限らず見たこともなかった。そんなの見るなら外でドロケイした方が楽しかったし。
だから俺は首を横に振る。
「マジで?見てみろよ、面白いぞ?」
あんまり興味は無かったが、俺は帰ったら見てみると適当にそう言ってその日は解散となった。
帰宅し、ランドセルを下ろしてベッドに寝っ転がる。そして体を伸ばしてスマホを開いた。
「そうだ、何だっけ…異世界転生…?だったか」
適当に異世界転生物を調べる。すると一番上にあるサイトに目が止まった。
「小説家に…なろう…?これが有名なのか?」
別に大して興味は無かった。ただ明日の話のネタにでもなればと思い適当に画面をタップした。
そして俺は…異世界転生物にハマった。
「・・・・・・はっ!も、もう19時!?」
見ている内に、あと1話、あと1話。気付いたらそんな時間になっていた。マジかよ…っと頭を掻いていると、親に晩御飯だと呼ばれ、階段を降りてご飯を食べる。そして風呂から出たらすぐに小説の続きを見る。
それから1年後。現在4年生。
あれから一体何作品の異世界転生物を見たか…。ハマりすぎて他のサイトにも浮気したりした。面白いからね、仕方ないね。
そして最近困った考えが浮かんで来てしまった。それは…
「俺も…転生してぇぇぇぇぇ!!」
そう、俺も転生したいぞ案件。あっ今叫んだせいで母さんに怒られた…。ま、まぁそれはさておき、転生したすぎて妄想ばかり俺はしている。俺だったらこういう能力を貰う、こんなセリフ言う!とかね。俺に異世界転生物をおすすめした友達も若干引くほど酷いものだ。
「よし、俺も準備しよう…!」
そして始まる異世界転生しちゃおうぜ☆計画。
ニ○ニ○動画とか見てると、[は?]が多いと感じた。…まぁそれは…主人公に…ね?問題と言うか…さ?あるわけで…
要するに借り物の力で得意になるから嫌われると俺は判断した。だから俺は…
「筋トレだ、筋トレ!!」
目指すは着痩せしていて、脱いだら凄いんですって体。その為に今までやらなかった上体起こしや、腕立て伏せを日々繰り返す。
筋トレし続けまた1年後。俺は5年生となり、筋肉もついている。嘘みたいだろ…うっすらシックスなんだぜ…?
今思うと小学生が筋肉あるってそこそこキモいと感じた。
そして新たな発見。
体術や剣術って…必要じゃね?と気が付く。俺が少し前に見た小説だと、路地裏で3人のチンピラに絡まれて、主人公がカッコよく殴ったはいいが、刃物出されて負けるというのを見てしまった。
そんなダサいのは正直嫌だ…。なので…
「父さん、母さん、俺剣道と空手習いたい!!」
「…なぁに突然…そんな事習いたがる子だったかしら?それに危ないし…ねぇ、貴方?」
反対の母。まぁ最初は反対だよな、脈略も無く突然習い事したいだなんて言い出したら。
「そうだ、空手なんて危ない。やるなら極真空手にしなさい」
「貴方?」
少しずれてるなぁって今は思う。あの頃は父さんに許可を貰ったのが嬉しくて気にしなかったしな。
そして中学3年生の春…。俺は15歳。
結局空手じゃなくて極真をやる事になった俺は、か・な・り!強くなったと思う。それこそ何度か表彰されるくらいには。
…まぁ、何の苦労も無くここまでこれた訳じゃないし、真剣にやって来たから妥当だと思う。一体何度打撲やら骨折やら鼻血を出したことか…中学の頃のいい想い出だけどさ。
そこから更に時は流れ…高校2年生、17歳。
この頃からだな、おかしいと感じたのは。
「何で…転生しない…?」
そう、テンプレの高校生時に転生というイベントが発生しない事を悩んでいた。中3から今の高2年まで約2年、剣道も始めた。まぁこっちはアニメの主人公のように主将になるとか無かったし、表彰もされなかったが、楽しかったよ。強くなるのは勿論だが、心が鍛えられたから何の問題も無い。
そして……13年後。
俺は…30歳の車の整備士となっていた。今でも異世界転生物は見ている。危険物取り扱い免許も取って、そこそこいい暮らしはしてるよ。そこそこ楽しい。
「…って違うっ!そうじゃない!!」
いやおかしいだろ!俺30歳よ!?今年で31!おせぇーって!いやね?確かにおっさんが転生するのもあるし、転移だってあった。
でも俺は山奥で剣を作る技術は無いし、宝くじで40億だって当たってない。そして何より社畜で疲労しきっているという訳でもない。
「何でだぁーー!!無職か!?無職じゃ無いからなのかーーーぁ!?」
部屋で子供のようにバタバタする俺。見ていて情けない…。子供のまま大人になったようだな…
「何でですか神様!?勉学だって精進したし、人助けで徳だって積みましたよ!!?」
ベッドに飛び込み俺は枕に顔を当てる。頭の中では転生転生…
頭のおかしい大人になってしまったな、と客観的に思う。もう手遅れだけど。
「街に出て…通り魔に刺されればスライムになれるかな…?」
もう末期だよな、これ…。何でここまで転生に取り付かれているのやら…はぁ…自分で自分が嫌になる。
「折角頑張って来たのに…な…」
あぁ…この後か。俺が死ぬのは
漸く追い付いた。走馬灯って結構長いようで短いのな。
この後俺は睡魔を感じ、目を閉じてそのまま死んでしまう。いや、多分死ぬ。最近胸が痛いし、変な倦怠感はあるとは思っていたが…まさかこんな呆気ないとはな。…下手に痛く死ぬよりはマシだけど。
にしてもいつになったらこの幽体離脱は終わるのだろうか。
もう既に俺のつまんねぇ人生は見終えたのだが、一向に終わらない。もしかして…幽霊にでもなったのだろうか。
『いいえ、違いますよ』
っ!な、何だ!?頭に声が!って…わぁー凄いテンプレ展開ぃ……そしてめっちゃ可愛い声だ。声優さん頑張ってますね。
『酷いですよ…』
あっすいません。
『全く……あっ!私だーれだ!!』
神でしょ?
『うへっ…!?な、何で分かったのです!?』
いや、テンプレ~で草ァー。マジで神様なのかよ。ありきたり過ぎて驚きもしないわ。という訳で、お前さんは死んでしまった展開ですか?
『うぬぬ…!もう少し敬意を持った対応をですね…!』
ならそう敬意を持てるような事でもしてください。話しそれからですよ。
まっ、ホントは神じゃ無い可能性もあるけどさ。悪魔とか精霊とか?いや待てよ…?俺のイマジナリーフレンズとかの可能性も…
『…なんかネガティブ?情報と違うですね…』
情報?何の話ですか?
『いや、神への願い事で貴方が世界で一番反応し、一番五月蝿かったんですよ』
あぁ…転生転生~!って感じの頃ね。
すいませんね、五月蝿くて。
『いえ、別に…他の部署なので』
へぇー、神界にも部署ってあるんだ。
『むっ!鼻をほじりながら対応しないでくださいよ!』
はぁ…んな事より『んな事より!?』俺に何の用です?いま期待値大です。
『ふっふっふっ!聞いて驚け!』
転生、ですか?
『な、何故それを!?まさかエスパー!?』
死後、神、そうきたらほぼほぼ一択ですよ。伊達に10年以上この展開のモノを読み漁ってないのでね。
『そ、そうですか……』
若干声のテンションが低い気がする。しかしすぐに咳払いをして調子を取り戻す自称神。【幼女戦記】のように、俺はこいつを存在Xと呼ぼうかな。
『聞こえてますよー』
さいですか…。本当に転生、出来るんですか?
『ええ、モチのロンですっ!さぁ!心から叫ぶのです!転生したいとっ!』
───────天道 明星さん────────
俺は…
「転生してぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
俺は転生への扉を開いた。
だがこの頃の俺はまだ知らない。
異世界で、なろう主人公の格好をした一般人になるなんて事を知るよしもない。
読んでいただき、ありがとうございます。
なろうの全てをリスペクトしてるので、ネタ的意味で入れてきますが、お許しください。