最後のひとかけら ~ひとりじゃない~
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あの日は、夜から嵐になるって天気予報でやっていた。
その日は当直で夜勤業務をしていると緊急搬送が入った。
若い男女が二組運ばれて来た。
一組のほうの男女は軽傷だったが、もう一組の男女は重傷で絶望的状況だった。
しかも女性の方のほうは、妊婦さんだった。
男性のほうは意識もなく手の施しようがなかったが、女性のほうは微かに意識があった。
しかし、母体か子供かどちらかを犠牲にしなくてはいけない状況だった。
私は、母体が助かるような処置をしようとすると女性が私を手を握り「この子たちだけは、このお腹の子達は助けてください」と言った。
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「この子たち?」
僕は、そう聞き返した。
すると、本当の父の手紙に「家族思い兄妹思いな子」という文があったことを思い出した。
「まさか?!双子か?」と僕が言うと
「そうだ!君は天涯孤独じゃあない。」
「血を分けた家族がいる!」
「妹だ!」
「そしてあの時、彼女は最後に私にこう言った。」院長はそのときのことを語った。
「この子たちをよろしくお願いします」
「当時私は、結婚していたが子宝に恵まれずにいた。」
「君には、本当にすまないと思っている。」
「神川さんが君たちを引き取ると言ったときに、私は双子の片方をあづけた。」
「つまり、龍之介くん・・・君だ。」
そして院長は、僕の前へ膝をつき頭を下げた。
「すまない。君たち兄妹を引き離したのは私だ。」
「数年前・・・神川さんに電話で聞いたよ・・・君に真実を話したと」
「そのころから何度も・・・何度も・・・なんども思ったんだ。」
「今すぐに、君のところへ行き真実を伝えようと・・・」
「でも、できなかった・・・あの子があんまりに愛らしくて・・・かわいらしくて
あと少し・・・あと少し・・・としている内に、こんなに時が過ぎてしまった。」
「先日、神川さんと話してようやく決心がついた。その日の内に娘にも話した」
必死で謝る院長の姿を見ていると、怒りは不思議とわかなかった。
感じたのは、心がぐちゃぐちゃになったことだけだった。
次に、僕は妹のことを聞いた。
なんでも今は、医者を目指して医大に通っているらしい。
今週末に帰って来るそうなので、そのとき会うことになった。
写真を見るかと聞かれたが、僕はそれを断り今日は帰ることにした。
帰る途中、最寄り駅の一駅前で下りることにした。
少し歩きたかったからだと思う。
歩いていると、いろんなことを思い出していた。
24年前のこと・・・9年前のこと・・・そして夢の少女のこと・・・父のこと・・・母のこと・・
兄たちのこと・・・そして・・・妹のことを考えていた。
そうすると、無意識に突然に・・・涙があふれていた。
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「すまなかった、お前から家族を奪ったのは・・・私だ」
「君は、天涯孤独じゃない」
「血を分けた家族がいる!」
など、いろいろな言葉が頭を駆け巡っていた
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「僕は、一人じゃない・・・僕は・・もう・・・ひとりじゃあないぞ-ーーーーー」
僕は、空に向かってそう叫んでいた。
次回はいよいよ最終回です
初めて生き別れの兄妹が会う
そして何を思う
がんばって書きますのでご期待ください!!!