4話
「なあ、奈白。」
「なんだよ。」
昼食の購買パンをほおばりながら呼んできた真人に目線を合わさず答える。
「漆原さんちょっと変わってるよな。」
思い当たる節がなく、不思議そうな顔をしてまさとに目線を合わせる。
「いや、体育の時いっつもジャージ着てるだろ?汗かいてるのに。」
「-漆原さんの話してるの?」
「え、ああ。--なんだ、柏田か。」
突然話に入ってきた彼女は柏田 瑞希。持久走の時に真人とペアだった人だ。真人繋がりで奈白とも喋るようになり、よく3人で喋っている。
「あの子昼放課の時もどっか行っちゃうよね。前にお昼誘ったけど「遠慮しとくわ。」って断られちゃった。」
「お前幼なじみなんだろ?なんか知らないのか?」
「いや、幼なじみっていっても何年も前の話だしな、わからんな。」
奈白も何回も下校の時に聞いているのだが、黒音ははぐらかすばかりで何も答えてはくれない。お昼も誘ったが、断られてしまった。
1日の授業が終わり、空が少し色づく頃、彼女は奈白を下校に誘う。
「奈白くん、行きましょ。」
「おう。」
それを奈白はいつも通りに二つ返事で了解する。
「来週からテスト週間に入るけど勉強してるの?」
「やべ、全然できてないわ。」
「あら、残念ね。補習で夏休みは潰れるわね。」
小悪魔っぽく笑いながらからかってくる。しかし、全くぐうの音も出ない程現実を突きつけられてしまった。
「そ、そういう黒音はどうなんだよ?」
「私は大丈夫よ、予習復習しっかりやってるから。」
「へ、へー。」
仕返しで聞いたつもりが更に自分の傷を抉ることになった。
「あ、そういえばさ」
「なんで昼放課の時いつもどっか行くんだ?」
勉強の話ではバツが悪くなったため、昼に真人達と話していた事を思い出し、話を変えようと聞いてみる。
「他クラスの子と食べるためよ。」
「そ、そうか。」
おそらく嘘だろう。つい1ヶ月前に転校してきたばかりで、クラスにも友達がいない黒音が他のクラスで友達をつくっているとは考えにくい。
「・・・・・」
それから2人は一言も話さずに、家路に着いた。