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主人公は、俺じゃない  作者: りんご丸
第一章:嘘つきの強襲
16/16

彼らは集った

1日は120時間なので隔日投稿です。

(訳:投稿が遅れて申し訳ございませんでしたぁ!!リアルの忙しさも解消されそうなんで、隔日更新(真)をするよう頑張ります)

「ボクの名前はニーナ。はじめまして」


 まさか再会すると思っていなかったボクっ娘のあいさつに、俺はとっさに返事が出来なかった。

 唖然として、思わず目の前のボクっ子を凝視してしまう。





 最初に会ったときはその出会い方の唐突さとボクっ娘実在の衝撃で気が付かなかったが、よく見るとボクっ娘ことニーナもこれまた美人と言える容姿をした少女だった。

 身長は大体百五十センチ代前半、大体ミームと同じぐらいといったところだろうか。

 淡い水色の髪の毛はショートほどの長さに切られており、くりくりした目は大きく開かれている。その下には、整った形の鼻と淡い桜色の唇がさりげなく配置されていた。

 顔のパーツや髪型、小柄な体など、全体的にいわゆる元気なボクっ娘といった見た目だ。

 どこかあどけなさを含んだ活発さと言えばいいのだろうか。

 しかしそんな見た目とは裏腹に、ニーナ本人の立ち居振る舞いは落ち着いており、大人びた印象を受ける。


 つまるところニーナは、見た目と雰囲気がミスマッチしているにもかかわらず、それが妙にしっくりきているというなんとも不思議な状態を体現しているのだ。

 ボクっ娘はどんな属性とも親和する最強の属性だと思っていたが、異世界に来てそれが実証されたということになる。

 この状況を俺だけしか知らないのがもったいない。連絡手段さえ持っていれば、全国ボクっ娘協会に報告したのに。




 さて、そんな美少女ニーナが目の前にいるわけだが、いったん状況を整理しよう。

 俺達は剣聖護衛隊の残りの二人に会いに行くという話だったはずだ。

 そこで、クラウスがメンバーらしき相手に声をかけた。

 その相手が、何の因果か少し前にあった美少女ボクっ娘のニーナだった。


 うん。

 何度考えてみても間違っていない。つまり、これが表すことは……


「あんたも剣聖護衛隊のメンバーってことなのか?」


「そうだね。ボクも、これから君たちと一緒に旅をさせてもらう仲間だよ」


 なるほど。

 なんで相も変わらずクラウスの周りに集まるのは美少女ばかりなんだとか、類は友を呼ぶのかチクショウとか、じゃあクラウスの友である俺は逆説的にイケメン!? とかいろいろ言いたいことはあるが、どうやらやはり、ニーナは剣聖護衛隊のメンバーらしい。

 そこでふと、嫌な予感がした。

 ……まさかそんなことはないはずだ。というか、あってほしくない。

 だが、可能性はある。運命は時に非情だ。

 俺はもう三時間も散歩させられるのは嫌なんだがな。……考えていても始まらない。確認してみるか。


「なあ、もう一人ってもしかして……」


「……私」


「ギャアァァア!?」


 俺の予感は的中し、もう一人――――ミームが姿を現した。

 それも馬車の下から、首だけ出す形で。


「怖っ!? なんだお前怖っ!?  なんでそんなとこにいるんだよ!! 生首かと思ったじゃねえか!!」


「……驚くかな、と思って」


「驚かせ方が猟奇的すぎだろ!? ……確かに驚いたけど、そもそも驚かせる必要ないよな? 言っとくけど俺達ほぼ初対面だよ? 多分どこの部族でもこんなあいさつはしねえよ?」

 

 パッと見殺人現場以外の何ものでもない。


 ここは村の入り口なので、周りが普通程度に見えるほどには明かりがある。

 しかし、そうは言っても今は夜なのだ。

 夜に無表情の生首が馬車の下からコンニチハとか、C級ホラーもいいとこだろう。


「……っつーか、そっから出てきてくれ。生首もどきと会話とか、話しづらいことこの上ねえよ」


「……わかった」

 

 そう言うと、ミームは馬車の下から出てきた。

 ……出てきたが、意味が分からない。


 俺の目がおかしくなければ、今こいつは明らかに物理法則を無視していた。

 直立のまま寝転がった状態と言えばいいのだろうか。

 その姿勢のままミームは手足を全く動かさず、スルリと、まるでベルトコンベアに乗っているかのような平行移動で馬車の下から出てきていた。


 眼を擦ってみる。


 そうだよな。流石にそれはないよな。

 いくらミームがいろいろ頭のおかしい奴だからって、物理法則までおかしくさせるのはありえないはずだ。

 よーし。眼を開く、眼を開くぞ。どんな動きをしてても絶対にツッコまないからな! ……なんで俺は目を開くだけでこんな決意をしてんだ。


 眼を開くと、そこには寝っ転がった直立姿勢のまま無表情で地面の上を高速移動するミームの姿が――――


「動き気持ち悪っ!?」


 滅茶苦茶気持ち悪い動きだった。

 学校で見たらまず間違いなく、『地面を滑るマネキン』とかいう名前で七不思議の一つになっていただろう。

 黒のコートがなびいているのか、カサカサという音すら聞こえてくる。


 無表情美少女が足元をカサカサ高速移動してるってどんな状況だよ。

 人類史上初だろこんな体験したの。


「やめっ! ちょっ! キモッ!! とにかくキモッ!!」


 俺の叫びを聞いてもミームは止まらない。

 おかしいぞ。こいつ一応可愛い見た目してるはずなのに、黒いコートも相まって超巨大なGにしか見えねえ。

 生首の次はGとか、グロ方面に変幻自在すぎだろ。間違っても美少女がもってちゃいけないようなレパートリーだよ。

 何が悲しくてこんな奇妙体験アンビリーバボーしなきゃいけねえんだ。


「なんで馬車の下から出るだけでこんな惨状になるんだよ!! 頭のおかしい行動しないと死ぬ病気にでもかかってんのか!!」


「……驚くかな、と思って」


「驚くっつーかただ純粋に気持ちわりいわ!!」


 そんな会話をしている間にも、ミームのスピードはどんどん上がっていく。

 動きが早すぎるせいか、いつのまにか残像が見えてきた。

 ミームが数人に増えたように錯覚する。

 一人でこれなのに、こいつが増えたら地球終わるな。


「……こ、これは、なかなか個性的で面白い方ですね」


 いつの間にか隣にいたリリーが、顔を引きつらせながらそう言った。


「これが個性的で済むなら世の中から犯罪は消える気がするぞ……」


 俺がそう言い終わると同時に、残像のミーム全員が唐突にこっちを向いた。

 ツギハオマエダ!! とでも言いだしそうな光景に思わずぎょっとする。


 きゃっ、と小さな悲鳴が聞こえた気がした。おそらく、リリーが声を上げたのだろう。

 腹黒なのに上げる悲鳴は可愛いんだな、と思ったが、それも当然かもしれない。

 控えめに言って怖すぎる。


 そんなホラー映像から目をそらそうとした俺だったが、そこであることに気が付いた。

 よく見ると、ミームの残像の表情が今までと違ったのだ。

 まあ、相変わらず顔自体は無表情なのだが、今までのただの無表情とは違う。

 具体的にどこが変わっているのかは言い表せないが、なんとなくドヤ顔しているのが伝わってくる。

 つまり、無表情のままドヤ顔するという、意味が分からない謎の器用さを発揮しているのだ。


 俺がドヤ顔に対してそんな考察をしていると、ミームの残像全員が一斉に口を開いた。


「「「……すごいでしょ?」」」


「うるせえ!! あとその顔なんか腹立つからやめろ!!」


 ツッコミしておいてなんだが、実は今俺の精神状態が結構やばい。


 俺は、Gが大の苦手だ。

 小さいころ、怖がりまくってた母親の悲鳴を聞いているうちに、いつの間にか俺もダメになっていた。

 真夏の白昼に、部屋に出没したGとエアコンもつけずに三時間決闘するぐらいには苦手である。

 つまり、ミームだとわかっていて尚且つ顔が見えていても、超巨大なGに囲まれているような気がするこの状況はなかなか精神にクルものがあるのだ。


「やめっ、ちょっ……やめろおおおお!!!」


 異世界に来てから何度目かわからない、俺の絶叫が轟いた。




※※※※※※※※※※※※※※※※




「……どうやら、君はミームとよっぽど相性がいいみたいだね。こんなに生き生きしてるミーム、久しぶりに見たよ。ボクともども、これからよろしくね」


「よろしくしたくねえよ……この先ずっとこんなにツッコミしなきゃいけないのかよ……寿命縮まるよ……」


 ミームがようやく普通に立ち上がったところで、事態を静観していたニーナが微笑みながらそう言った。

 ……っていうかニーナとかミームとか名前ごちゃごちゃになりそうだな。今のうちにちゃんと覚えておこう。

 えーっと、ボクっ娘のほうがニーナで、やばい方がミームか。

 ボクナ、ヤバミ(僕な、ヤバみ)で覚えようかな。……我ながら適当過ぎてひどい。

 ヤバみってなんだよ。あれか? 最近の若者言葉のヤバみが深いってやつか? ……これはひどい。


「ニーナもミームも久しぶりだね。元気にしてたかい?」


「……久しぶり」


「ボクたちは見ての通り元気だぜ。クラウスこそ久しぶり。そっちも元気みたいだね」


「ああ、おかげさまでね。……あの人は元気にしているかい? 君たちがここに来たってことは、顔を見せる必要もないってことなんだろうけど」


「ご名答。こっちはいいからさっさと王都でやること済ませてこい、だってさ。まあ、元気にしてるから大丈夫だよ。足も、普通に生活する分には問題ないしね」


「そうか……僕としては挨拶ぐらいしたかったんだけどな……まあ、あの人らしいか」


「そういう几帳面なとこ、小さい頃から変わらないよね。あの人とは大違いだ」


「僕が几帳面というより、君たちがおおらかすぎる気がするんだけどね」


 そう言ってクラウスは、何やら複雑そうな顔で苦笑した。


 会話の様子を見る限り、どうやらクラウスは小さい頃から二人と面識があるようだ。

 まあ、ミームもニーナも見た目は一八歳俺達と前後ってとこだから、大体俺達と同い年ぐらいだしな……あれ? 小さい頃からの知り合いって半分幼馴染みたいなもんだよな? やっぱりクラウスの周りには美少女ばっかいるじゃねえか。末代まで呪ってやるぞこら。


「三人とも知り合いだったんだな」


「ああ、彼女たちとは縁あって、小さいころから時々会ってるんだ。……忘れてるかもしれないけど、ノルマンも小さい頃に一度だけ会ったことあるんだよ?」


「え!? まじで!?」


 会ったことあるのか。ノルマン、お前も末代まで呪う対象にしてやろうか? いや、でも流石にそれはやりすぎか。

 多分クラウスの二次作用的なので会っただけだろう。

 ノルマン自体普通の奴だしな。実家とかもいたって普通だし、別に顔も普通だし、特殊な点があるとすれば、ちょっと中二病で引きこもりなだけで……呪い以前に、こいつが末代になるような気がしてきた。


「ん? ひょっとして、ボクに『かっこいい言葉教えてくれ』って言ってたあの男の子か? 大きくなったんだね。見た目が変わってて全然気が付かなかったよ」


「なんで近所のおばさん目線なんだよ。ほとんど同い年だろニーナ。っていうかガキの頃から中二病の兆しが見えてるじゃねえか……危うく黒歴史で悶えるところだったぞ」


「ボクが教えてあげたら、なんか目を輝かせて色々走り書きしてたよ。『せっていしゅう』とか書いてあったっけ?」


「前言撤回!! かんっぜんに中二病患者が一冊は持ってる黒歴史ノートだこれ!!」


 小さい頃から黒歴史ノート書いてるとか、どんだけ人生黒歴史なんだよ!!

 ノルマンの過去が完全に俺を殺しに来てる!! やめろぉ!! 俺はもう自分のでもない黒歴史で悶えるのは嫌なんだよ!! というか自分の黒歴史で悶えるのも嫌だ!!



 小さい頃の黒歴史という想定外の角度から来た一撃で、危うく叫びたくなる黒歴史ヒステリック・ヒストリーに囚われかけた俺だが、そこで我に返った。それもそのはず。なぜなら――――――



 ――――――大気をつんざくような轟音が、鼓膜を震わせたのだ。


「なんだ!?」


 とっさに身構えて辺りを見渡す。

 雷鳴のようだったが、おそらく違うだろう。

 夜と靄でわかりづらいが、天候は変わっていないはずだ。それに、雨も降ってきていない。

 だが、だとすればどこかに、今の轟音を発生させた何かがいるはずだ。でひょっとすれば魔物の咆哮という可能性もある。

 ――――――まずい。

 完全に気を抜いていた。視界の悪い今の状況では、何がいても近くに来るまでわからない。

 クラウスならやられることはないだろうが、俺を含めて他の奴らはちがう。剣聖護衛隊に入るほどだから、俺よりもできる部類なのかもしれないが、状況が状況だ。

 この見えづらいなか、魔物に奇襲されて無傷で済むのは難しいのではないだろうか。

 だとすれば、今は何よりも索敵に注意を向けるべきだ。いや、しかし――――――



 俺が考えを張り巡らせていると、何かがチョン、チョンと肩を触った。


「――――――ッ!?」


 魔物かと思いとっさに振り返ったが、それも取り越し苦労だった。

 どうやら、相変わらず無表情のミームが呼んでいたようだ。


「どうした? 今の音の正体を探らねえと―――」


「……今の、私のお腹の音」


「ああ、お前のお腹の音なのか。それはわかったから今は…………は?」


「…………」


「……え? お腹の音? 今のって、今の轟音だよ? お腹の音って、意味わかんねえじゃん」


「……これを見て」


 言われるがままに、ミームの指がさす先を見るとそこには――――――ピシャッゴロゴロ、とやや控えめな音で鳴るお腹があった。


 お腹があった。


 お腹があった。


「イヤ意味わかんねえよ!?」


 思わず大声でツッコんでいた。


「お腹の音って何!? 今の音明らかにお腹が出しちゃいけない音だろ!? 世界のどこに雷と同等の音を出せる胃が存在するんだよ!?」


「……ごめん。我慢できなかった」


「我慢の爆発の仕方おかしいだろ!?」


 待て待て、落ち着け。ここでまたミームのペースに乗るわけにはいかない。

 落ち着いて、落ち着いて対応するんだ。


「……なんだよ、今日ご飯食べてなかったりしたのか?」


「……さっきの高速移動で頑張ったせいでお腹すいた」


「バカなの!? ただひたすらにバカなの!?」


「ミームは元々よく食べるからね。ボクと一緒にいるときも、よくこういうことあるんだよ」


「いや、よくあっちゃダメだろ!? ……っていうかなんだよ! 無口・頭おかしいの次は食いしん坊キャラって! ミーム一人でどれだけとんでもない属性抱え込んでんの? 属性の火薬庫かよ」


「まあまあノルマン、そこらへんにしておきなよ」


「そうですよ。女の子のお腹の音に過剰反応して、あまつさえ謝ってる女の子を責めるなんて、紳士の風上にも置けません」


「あれのどこが女の子のお腹の音なんだよ!? あんな人類を超越した音を出す奴にも紳士でいられるほど、俺は人間ができてねえんだよ!!」


「……超越……照れる」


「ほめてねえ!! あとその無表情ドヤ顔やめろ!!」




※※※※※※※※※※※※※※※※




「……リリーは二人とも初めましてだし、一応ちゃんと自己紹介しておくことにしようか」


 収拾がつかなくなった状況をまとめようとしたのか、クラウスがそんな提案をしてきた。


 何をいまさら、と思ったが、確かにリリーは初対面だし、よく考えると俺はニーナに自己紹介をしていない。

 それはつまり、ニーナ目線では今のところ、正体不明の男がツッコミまくってるという状況になっているわけだ。

 ……やべえ、死にたい。また叫びたくなる黒歴史ヒステリック・ヒストリーに囚われそうだ。


「そうだね。と言っても、ボク達はこれから一緒に旅をするんだし、あんまりカタいのは無しにしよう。ボクの名前はニーナ。よろしくね」


 クラウスの提案に最初に同意を示したのは、ミームだった。

 

「そうですね。……初めまして。私の名前はリリー・ミュラーです。これからよろしくお願いします」


「……私の名前はミーム。よろしく」


「俺の名前はノルマン・タリフレアだ。多分この中じゃ一番普通の人間だけど、足を引っ張らないように頑張るからよろしく頼む……あと、もう少し平和に過ごせるように頼む」


「そうだね、これからちゃんと仲間になるんだ。僕も改めてしておこう。僕の名前はクラウス・ディエスブルグ。ようやく全員揃ったね。……これから晴れて君たちは、剣聖護衛隊になってともに過ごすことになる。よろしく、皆!」


 ニーナの後に、リリー、ミーム、俺、クラウスと続く。


 こうして、剣聖のクラウスと、俺達剣聖護衛隊の四人がようやく全員揃ったのだった。


そういえば、こういうことしたことなかったのでやってみます。


感想やポイント評価をして頂けると、私が跳ねて喜びます。

私を跳ねさせたいという方は、是非とも感想とポイント評価をしてみてください。

跳ねます。

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