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千年地獄の呪われ王  作者: 第八のコジカ
戯曲版『千年地獄の呪われ王』
6/45

戯曲版 『千年地獄の呪われ王』 前編

こちらはライトノベル版の『千年地獄の呪われ王』のプロトタイプとも言うべき、15年ほど前に書き上げた演劇の戯曲です。


ラノベ版と内容はかなり変わってくるんですが、主要なキャラクターの設定などはおおよそ同じです。


キャラたちが自由にワチャワチャ動き回っている姿を楽しんでいただければと思い、今回ここに掲載させて頂きます。


ネタバレ、と言えばネタバレですが、ラノベ本編はこれを読んでもらっても全然OKなくらいの仕上がりにしていきますので、これはkれで楽しんで頂ければ(^^)/

 《時》

 現代より千年あまり先の世。またはパラレルワールド。


 《場》

 72の部族がひしめくマガハラの都。千年の長きに渡って続く戦乱により、荒廃した地獄都市。周りは砂漠や固い岩に囲まれた土地ばかり。都市の中央に聳え立つは、かつての機械文明を象徴するかのような高層ビルが幾重にも積み重なって出来た巨大な城。その名を『奈落城』という。


 《人》 

 トキヲ    男・20歳   王の魂の化身の一人。

 ジュウベエ  男・26歳   サキカゼ一族の若き頭領。剣豪。王の魂の化身の一人。

 ナラカ    女・24歳   ヒ族の姫君にして頭領。一族一の刀の使い手。王の魂の化身の一人。


 ムシハミ   男・年齢不詳  真眼教の大教祖。奈落城にてマガハラの都を支配する。

 ミタマ    女・25歳   真眼教の巫女。

 アラダマ   女・25歳   真眼教の巫女。ミタマとは双子。

 イミベ    女・33歳   真眼教の司教。

 カバネマル  男・30歳   ムシハミの近衛兵。大槍の使い手。


 イサナ    女・30歳   かつて王に仕えた宰相の末裔。アマツチ族。

 ハクト    女・21歳   サキカゼ一族の若き娘。ジュウベエとは異母兄妹。


 ウガチ    男・78歳   乞食。


 他    ムシハミの兵たち マガハラの人々



 《第零場》


 ――開演ベルが鳴り響く――

 世界を闇と静寂が支配する。客席の観客たちに聞こえるのは、自らの鼓動と、空間を共にする他の観客達の呼吸の音だけである。

 ―刹那に斬撃音、三つ。

 直後に鋭い雷光。暗闇の中に斬った者と、斬られた者のシルエットが浮かび上がる。遅れて雷鳴、一つ。

 薄闇の中、斬られた男が胸から夥しい血を流して倒れる。

 ここはマガハラの都の南に位置する、ヒンノムの谷。無数の死体が転がっているのが見える。

 不意に雲が切れ、月光刺す。そこに立つ者の姿を幻想的に浮かび上がらせる。逆光で表情は見えないが、女であることは分る。

 女の名は ナラカ。ヒ族の若き長である。

 ナラカ、男を斬った刀をそのままに言葉を発する。


 ナラカ 「…その日、またいつものように戦があった」


 慌しく、先ほど斬られた男の仲間と思しき者たちが4~5人、抜き身を手に駆け来てナラカを取り囲む。


 ナラカ 「…たくさん死んだ。たくさん、たくさん…数えきれないほど」


 ナラカ、静かに男たちを一瞥する。

 間合いをはかり、斬りかかる男たち。その太刀をかわし、いなすナラカ。

 男たちに悲しげな口調で語りかける。


 ナラカ 「やめなさい。ゆえなきノロイは受けたくない。我が一族は、戦を好むにあらず」


 男の一人が、叫びながら斬りかかる。

 ナラカ、その太刀筋を紙一重で見切り、横一文字に斬り殺す。(M『風と星と血と涙と』 C・I)


 ナラカ 「我らはただ、逝きたる魂がために…謳うのみ」


 ナラカ、鎮魂歌を謳いだす。

 寂しげな、しかし強い意志に満ちた歌声が、そこここに横たわる死人を慰めるように響き渡る。

 男たち、たじろぎつつもナラカを囲む。


 ナラカ


 「風と星と血と涙と共に

  命の歌を謳おう

  君と僕の握った手と刃

  空高くかかげよう

  ここは地獄 ここは地の果て

  あらがう夢や 切ない希望も 闇に呑まれる

  さぁ闘え 自分を守るために 愛する人を守るために

  いつかきっと来る その日のためだけに 信じて生きよう 今日を」


 謳いながら、男たちと闘うナラカ。謳い終わりと同時に、最後の一人を斬り伏せる。


 ナラカ 「荒野にあまた転がる死人たちが、その胸の上に紅い華を咲かせている。…今日もまた、この谷底からのそ華を焼く煙が、魂と共に立ち昇ってゆく。空で…魂は現世への想いと混じりて『ノロイ』と化す…。…この都は『ノロイ』に満ちている。(口ずさむように)…風と星と血と涙と共に命の歌…!」


 ―ふと、人の気配を感じ、謳うのを止めるナラカ。

 何時の間にか、谷底に霧が立ち込めている。

 霧の一番濃い部分から、一人の少女が現れる。頭から白いローブを被り、顔は見えない。

 ナラカ、背中にその少女の気配を感じながら―


 ナラカ 「…そう。そしてアタシもその日……一人の少女を殺した。この手の刃で」


 出し抜けに荘厳な聖歌が聞こえてくる。

 何かを訴えかけるように、少女がナラカの背に手を伸ばす。…裾から覗く少女の腕は、腐りただれている。

 ゆっくりと伸ばした手を天へと伸ばす。もう片方の手も。空を仰ぐ少女。不意に脱力し、一回転して両手を左右に伸ばす。その動きは踊りのようであり、またそのポーズは

 十字架に磔られたようである。

 ナラカ、不意に振り向き少女の姿に絶句する。だが、次の瞬間、叫びながら、少女の身体に刀を突き立てる。

 少女の胸から、夥しい血が流れ出る。

 ナラカ、静かに言葉を口にする。


 ナラカ 「…切っ先で刻まれる赤い鼓動が、ドクドクと流れる歌を謳いあげる。傷口から噴き出す36℃のメロディが、『生きたい』という願いを叫んでいる。生きたい。生きたい。生きたい生きたい生きたい。だけどその願いはやがて、『死にたくない』という呪いに変わった」


 少女の手が、優しくナラカの頬をなでる。


 ナラカ 「………ごめんなさい。アタシにできるのは、こんなことだけ。……「許せ」なんて言わない。…アタシを呪いなさい。呪って、呪って、呪って…呪いなさい」


 ナラカ、少女の身体から刀を引き抜き振向く。

 頬についた少女の血が、ナラカの涙のようにも見える。

 少女の姿が、霧の中に掻き消える。


 ナラカ 「あの日アタシは、アタシの中の『幼さ』を確かに殺したのだ…」


 不意にトキヲが一人、言葉を発する。


 トキヲ 「だけどそこから!………そこから始まったわけじゃない」


 駆け寄る男。

 ナラカ、その男を見詰め―


 ナラカ 「……そう。そこから始まったわけじゃない」

 ジュウベエ 「ずっと前から続いていた」


 違う方向から、また別のジュウベエが姿を現し、言葉を口にする。


 ナラカ    「選びし道の始まりはいずこに?」

 ジュウベエ  「刃握ったその手の記憶に」

 トキヲ    「記憶の先が僕らの居場所に?」

 ナラカ    「なら行く先は刃の切っ先」

 ジュウベエ  「貫く者のみ掴めるモノ」

 トキヲ    「それが痛みを伴っても?」

 ナラ・ジュ  「なすべきゆえは刻まれし宿命さだめに」

 トキヲ    「奪うがゆえは?」

 ナラ・ジュ  「与えるために」

 トキヲ    「振り下ろすはなぜ?」

 ナラ・ジュ  「かがげるために」

 トキヲ    「なぎ倒すのは?」

 ナラ・ジュ  「抱きしめるため」

 トキヲ    「殺すことは?」

 ナラ・ジュ  「生きるために」

 トキヲ    「呪うことは?」

 ナラ・ジュ  「強くあるため」

 トキヲ    「呪われることは?」

 ナラ・ジュ  「もっと強くなるために」

 トキヲ    「その身に『ノロイ』を受けるがゆえは?」

 ナラ・ジュ  「愛する者を守るために」

 トキヲ    「………(かすれるように)お前の『ノロイ』で、僕らは『呪われの王』となる」

 ナラカ    「…聞こえますか?」

 ジュウベエ  「聞こえているか?」

 ナラカ    「アナタの耳に」

 ジュウベエ  「お前の耳に」

 ナラカ    「感じていますか?」

 ジュウベエ  「流れているのが」

 ナラカ    「アナタの心に」

 ジュウベエ  「その小さな胸に」

 トキヲ    「脈打つ流れが運ぶ想いを」

 ナラ・ジュ

 ・トキヲ  「カゼとホシとチとナミダと共に『イノチ』のウタを!」


 その言葉を合図に、死人たちが起き上がってくる。


 死人たちのダンスが始まる。



+++++++++++++++++++++++++++++++


 《第一場》


 マガハラの都を一望できる絶壁の上。草木一本生えていない岩の上を、乾いた風が吹き抜ける。

 切り立ったこの崖のてっぺんに、洞穴がある。

 その洞穴の前に立ち、乞食のウガチが眼下の街を眺めている。腰曲がり、長い杖をついている。かなりの老齢だ。


 ウガチ 「(歌って)ここは地獄。ここは地の果て。…ワシが歌うと不評なんじゃよ。ここはマガ王の魂さまようマガハラの都。かつては違う名で呼ばれてもいたようだが、その名は随分と前に忘れられてしまった。今このマガハラにあるのは、砂と乾いた風と『ノロイ』のみ。悪人はびこり、人心すさみ、花散り、草枯れ、病流行るわ掠め犯すわ殺し合う…。まことにろくでもない。そんな状態がかれこれ千年。いつしかこのマガハラは千年地獄と呼ばれるようになった」


 洞穴の中から、トキヲが飛び出してくる。


 トキヲ  「おじいさ~~~ん!おじいさん!おじいさん!おじいさん!おじいさん!」

 ウガチ  「あいにくワシは一人しかおらん。何回呼ばれても一回しか返事せんぞ」

 トキヲ  「僕はまた、女の子を刺し殺してしまいました!」

 ウガチ  「出し抜けに恐ろしいことを言うな。通り魔か君は?」

 トキヲ  「これでもう、一週間毎日ずっとです」

 ウガチ  「しかも連続犯。やっぱり性的な興奮を伴ったり…してるのか、それは?」

 トキヲ  「一週間、毎日毎日同じ女の子を刺し殺してばかり…」

 ウガチ  「病的だな。そういうのを世間一般では『ピチガイ』と言う」

 トキヲ  「僕はおかしくなってしまったんでしょうか?」

 ウガチ  「末期的じゃろうな」

 トキヲ  「どうすればこんな思いをせずに済むんでしょうか?」

 ウガチ  「人間あきらめが肝心だ」

 トキヲ  「毎日毎日…同じ女の子ばかり。…夢の中で」

 ウガチ  「夢のハナシだったのか!?」

 トキヲ  「はい。毎晩毎晩、同じ夢を」

 ウガチ  「そして毎朝毎朝、同じハナシを聴いてるワシもいいかげん覚えろやっ!…ってハナシじゃな」

 トキヲ  「ノリノリですね?」

 ウガチ  「芝居はノリが肝心じゃ」

 トキヲ  「芝居?」

 ウガチ  「…がぁ、お前さんのそのトラウマチックな夢も、お前さんの無くした「記憶」の欠片なのかも知れんな」

 トキヲ  「探して集めて合わせれば、パズルの絵ように僕の「過去」が組み上がるでしょうか?」

 ウガチ  「組みあがったら地獄絵図だったりしてな」

 トキヲ  「それでも探さなくては。無くしたのが僕自身なら、探すのもやっぱり僕自身です」

 ウガチ  「『自分探し』…か?」

 トキヲ  「はい」

 ウガチ  「頭の悪いOLみたいでハラの立つ響きじゃな、『自分探し』って」

 トキヲ  「OLとか言われても」

 ウガチ  「『故郷』の『音』と書いて『響き』。頭の悪い響きでも、耳を傾けてみたら案外お前さんの故郷のことが何かわかるかもな」

 トキヲ  「故郷…僕の帰る場所」

 ウガチ  「キズはもういいのか?」

 トキヲ  「はい。元々たいしたケガじゃありませんから」

 ウガチ  「そうか。しかしまぁこれも、『因果』っちゅうやつだな」

 トキヲ  「因果?」

 ウガチ  「谷底で死体と一緒に焼かれかけとったお前さんを助けた時、なんとなくそんな気はしとったよ」

 トキヲ  「どうして僕はそんな所にいたんでしょうか?」

 ウガチ  「それはこれから、お前さんの目で聴き、耳で見て知ればいいことだ」

 トキヲ  「……それって、不可能ってことですか!?」

 ウガチ  「そしてお前さん自身が『心』を決めたとき、道が開けるじゃろう」

 トキヲ  「心を決めれば、道が?それって……」

 ウガチ  「まとめる程の荷物もあるまい。すぐに出発しよう」

 トキヲ  「今から?」

 ウガチ  「都合が悪いか?」

 トキヲ  「いいえ。元より都合なんて持ち合わせてませんから」

 ウガチ  「では行こう。―と、その前にコレを渡しておこう」


 ウガチ、トキヲに小型の機械を投げ渡す。


 トキヲ  「コレは…テレビのリモコン?」

 ウガチ  「間違えた!こっちだ!」


 ウガチ、リモコンをひったくり、ケータイを渡す。


 トキヲ  「コレは、ケータイ電話!?」

 ウガチ  「残念。ケータイはケータイでも、『念』の力を使って話す『ケータイ念話』じゃ」

 トキヲ  「ケータイ念話?どうやって使うんですか?」

 ウガチ  「それは!…おいおい分かるだろう」

 トキヲ  「おじいさんも知らないんですね?」

 ウガチ  「やかましい!使い方なら知っとるわボケェ!」

 トキヲ  「いや、キレられても!?」

 ウガチ  「では、約束通り案内しよう。このマガハラの都を」

 トキヲ  「マガハラの都」

 ウガチ  「マガ王の「魂」と『ノロイ』さまよう千年地獄さ」


 ひときわ強く、乾いた風が崖の上に吹き荒れる。砂塵の向こうにあるマガハラの都を見つめる二人。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++



 《第二場》



 72の部族がひしめくこの都は現在、真眼教の大教祖ムシハミの支配下にある。

 都の中央に聳え立つ『奈落城』。かつてこの都を治めた『マガ王』が建てたこの城も、今では真眼教の総本山となっている。


 整備されていない道が迷路のように走り、大小のバラックが隙間なく建ち並ぶ。


 夕刻。道行く人の数は多い。が、活気づいているというわけではなく、人々は皆いちように俯きかげんで顔を隠し足早に通りすぎる。互いにかかわり合

 うのを避けるように。


 城の前の広場。真眼教幹部のイミベが、教祖ムシハミの「お触れ」を読み上げる。傍らには、同じく幹部のイサナと、近衛兵長のカバネマルが 


 大きな鎌槍を持って控えている。何事かと人々が足をとめる。


 カバネマル  「静まれ静まれ!静まり聴けぃ!」

 イミベ    「マガハラの都に生い茂げ暮らす民草たちよ、心正して聴きなさい。我らが真眼教 大教祖、ムシハミ様のお言葉です。(お触書をひろげ読み上げる)『隣国ミズホならびにヨモヒラと、

 わがマガハラの十年に渡る三すくみのデタントをついに崩す時がやってきた。―『カエル死に、ヘビ、ナメクジに食らわれる』。カエルとはミズホ、ヘビはヨモヒラ、ナメクジとは我がマガハラのことである。そしてそのカエルの王・アマデラが近く死ぬとのお告げ下れり。これを期に我が軍はミズホへと進軍、これを制圧、真眼教へと帰順せしめる。ついでヨモヒラをも。富国強兵。ついては戦準備のため『戦税』を現在の5%から32%にし、年金給付は一元化を待たずして廃止。そして各家庭より健康な男子を二名ずつ『戦人』として三日以内に奈落城へ登城させよ。」


 聴衆から、驚きと不満の声があがる。


 イミベ  「『しかる後の四日後。予言の儀式を執り行い、戦開戦の正式な日取りを決める。』…お喜びなさい民草たちよ。真眼教が、このマガハラが、ついに世の覇権を握るのです!」


 どよめきと不満の声。

 その声を掻き消すように、カバネマルが鎌槍を振り回して威嚇する。


 カバネマル  「黙れ黙れぃ!ムシハミ様のお触れに不服のある者は一歩前に出ろ!この場で戦勝祈願の人身御供にしてやる。このカバネマル様の刃でもってな」


 カバネマル、巧みに槍を振り回し見栄をきる。

 静まる聴衆。満足げに見回すカバネマル。


 イミベ  「では良いですね?三日以内にですよ」


 ―ところへ、ぼろ布をまとった男が一人、倒れるように進み出てひれ伏す。


 男      「お待ち下さい!お願いします!お待ち下さい!」

 カバネマル  「なんだ貴様!?」

 イサナ    「!」

 男      「お願いです!なにとぞ!なにとぞご慈悲を!」

 イミベ    「慈悲…だと?」

 男      「はい!」

 カバネマル  「一歩どころが三歩以上「ずずい」っと出たな…貴様、では三枚におろして…」

 イサナ    「(カバネマルの言葉を遮って)男よ、なにゆえ慈悲を願い出るのです?」

 男      「マガハラの民草のために!」

 イミベ    「草が草のために何ゆえ慈悲を乞う?」

 カバネマル  「植木鉢でも欲しいのか?」

 男      「おそれながら!草が青々と生い茂るには、土と水と太陽の光があれば事足ります」

 イサナ    「いかにもそれが自然の道理」

 男      「しかし戦となれば鉄と火を用います」

 イミベ    「いかにもそれが戦の道理。敵を倒すために必要なこと」

 男      「ですが、その鉄は土をえぐり火は草を燃やします!隣家を燃やす火は己の家をも燃やしかねせん!」

 イサナ    「ミズホのクニを燃やす火が、マガハラをも燃やすと?」

 男      「だけでなく!むやみな重税や徴兵は草を枯らせる『毒』となりましょう」

 イミベ    「ムシハミ様の治世を、『枯葉剤』とでも?」

 男      「少なくとも肥料ではありません」

 カバネマル  「なにぃ!?きさま、山菜ならまだしも炊き込み御飯にもできん雑草の分際でそのような無礼なもの言い!許さんぞ!?」


 カバネマル、男を殴り飛ばそうとする―よりも速くイミベが制するように言う。しぶしぶ拳を収めるカバネマル。


 イミベ    「カバネマル」

 カバネマル  「しかしイミベ様!」

 イミベ    「よい」

 カバネマル  「く。セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、スズナ、スズシロ、ホトケノザ。七草だ覚えておけ!」

 イサナ    「…それどういう捨て台詞なんですか?」

 イミベ    「男よ、お前の熱弁なかなかに面白く聴かせてもらった。が、小人の理屈で大国は動かせぬ。従うべきことを用意されるからこそ、お前たちは今日を暮らしてゆける」

 男      「しかしそこに正義は?」

 イミベ    「正義?」

 男      「従うに足る道理。信じ闘い守る『想い』」。

 イミベ    「『クニ破れて山河あり城春にして青草深し』…さかしまに考えれば、草が青く深くない方が、よりクニは栄えるということになる。そうは思わぬか?」

 男      「そんな…!」

 イミベ    「クニ栄えるは貴様ら民草のためではない。全てはムシハミ様のため。ならば枯れよ。枯草も肥料になろう。それがお前たちの『正義』だ。お前たちの屍の上に、赤く大きな花を咲かせてやろう」

 カバネマル  「なるほど。さすがはイミベ様。いらぬ雑草は刈り取り捨てるのがガーデニングの基本!さしずめこの都は、ムシハミ様のガーデンというわけですな!」

 イミベ    「絶妙に上手くない言い回しですよ、カバネマル」

 カバネマル  「ありがとうございます」

 男      「くっ…!」


 怒りにうち震える男の身体。


 男      「…ではどうあっても、草の願いは聞き届けて頂けないと?」

 カバネマル  「くどい!」

 イミベ    「草よ。出る杭は打たれ、伸びすぎた雑草は刈られる。これ以上の饒舌は、その舌の根と共に命の根をも危険にさらすことになるぞ?」

 イサナ    「……」

 男      「…分かりました。それでは…」

 カバネマル  「さっさと帰ってつぶ肥料でもかじるがいい!」

 男      「『コトバ』で願いが通らぬのなら…この手の刃で通しましょう!」

 カバネマル  「なにぃ!?」


 男、ぼろ布の下に隠していた刀を抜いてカバネマルに斬りかかる。

 腕を斬られつつも返すカバネマル。

 男、流れでイサナに斬りかかる。大振りな太刀を難なくかわすイサナ。

 ついでイミベに斬りかかる。かわしきれず、頬を一筋斬りつけられるイミベ。

 聴衆、叫び声を上げて散り散りに逃げてゆく。


 イミベ    「くっ…!」

 イサナ・カバネマル 「イミベ様!」

 イミベ    「心配ない。(と、憎憎しげに男を睨む)」

 男      「いいねぇ。いい眼だ。呪うか?オレを?オレに「力」を与えてくれるか?」

 イミベ    「『力』だと?」

 ジュウベエ  「お前の『ノロイ』、ありがたく頂戴するぜ?」

 イミベ    「お前まさか…?」

 カバネマル  「おのれよくもイミベ様を!なますに切り刻んで家庭菜園の肥料にしてくれる!」


 カバネマル、鋭く男に斬りかかる。応戦する男。

 だが本気になったカバネマルの斬撃をかわしきるのは至難の技だ。

 男、間合いを取り、右手に『念』を込める。


 男      「カゼよ集え我が刃に。疾風となりて全てを切り裂け」

 カバネマル  「死ねぃ!」

 男      「はぁ!」


 男、カバネマルが斬りかかるより早く、横薙ぎに一閃。

 鋭い風音が鳴り響き、カバネマルを弾き飛ばす。


 カバネマル  「ぐっ!なにぃ!?」

 イミベ    「その『力』…『カゼの念』か!?」

 イサナ    「『カゼの念』?ではまさか…!」


 男、右手の甲に刻まれた『マガ王の印』を高々と掲げる。


 イミベ    「その手の『いん』!?」

 イサナ    「マガ王の!」

 カバネマル  「きさま…サキカゼのジュウベエか!?」

 男      「その通り!」


 男、ぼろ布を脱ぎ顔を見せる。ぼろ布の下から身軽な、だが幾つもの修羅場をくぐり抜けたであろう戦装束を身につけた青年―サキカゼ一族の若き長・ジュウベエ―が姿を現す。


 ジュウベエ  「まーったく久方ぶりに都に出て来てみりゃぁ、頭の悪いお触ればっかり出しやがって!おまけにガーデニングだ七草だと…ホンッとバカばっかりだな真眼教は!」

 カバネマル  「なにぃ!?このイサナ殿のどこがバカだと言うのだ!?」

 ジュウベエ・イサナ  「アンタだよ!」

 カバネマル  「なっ!?」

 ジュウベエ  「ホンッとハラ立つわぁ…。(ぼやくように)」

 イミベ    「ムシハミ様に楯突く愚かな叛徒よ。今日という今日こそはお前のその首、ムシハミ様に献上してくれる」

 ジュウベエ  「へっ!誰がくれてやるかよ!この首は、べっぴん娘すがりつかせるためにあるんでね」

 イミベ    「二枚目きどりの『お笑い』が減らず口を!」

 カバネマル  「雑草の首にすがりつくなどはせいぜいアリかアブラムシ。キサマが相手と分れば、こちらも遠慮無くいかせてもらう!」

 ジュウベエ  「テメェみたいなバカ相手しても楽しくねぇけど…やろうってんなら容赦しねぇ!」

 カバネマル  「参る!」


 カバネマル、ジュウベエに斬りかかる。素早い攻防。

 イサナ、その間にこの場から姿を消す。

 ムシハミの兵らが抜き身の刀を持って駆けつけ、ジュウベエを囲む。


 イミベ    「はっはっはっは……。何にでもすぐ噛りつくはいいが、時にはそれがネコイラズだと疑ってみることも必要だぞ?愚かなネズミよ」

 ジュウベエ  「なにぃ!?誰が下水管の汚水をすするドブネズミだ!?」

 イミベ    「そこまでは言ってない!」

 ジュウベエ  「雑草だドブネズミだとホントに…何様だテメェ!?コラァ!?」

 イサナ    「ゲームイズオーヴァーよ!サキカゼ・ジュウベエ!」


 イサナがハクトを後ろ手に縛って現れる。ハクトはサキカゼの若き娘。ジュウベエの異母兄妹だ。


 ハクト    「ごめんなさいジュウベエ兄様!」

 ジュウベエ  「ハクト!?お前なんで!?」

 イサナ    「奈落城の周りをチョロチョロ嗅ぎ回っていたのを捕まえた。お前が今日このマガハラの都に姿を現すのも、この娘から聞き出していたのよ」

 カバネマル  「おぉ!さすがイサナ殿!バカの汚名返上ですな!」

 イサナ    「アナタは私になにか恨みでもあるんですか?」

 カバネマル  「はい?」

 ハクト    「兄様ごめんなさい!私、兄様の役に立とうと思って!でもフト見回したらドングリがいっぱい落ちてて!拾い集めるのにムチュウになってたら…つい!」

 ジュウベエ  「バカー!!つい……じゃねぇよ!どういう理由だ?どんぐり拾いって!?しかもあっさりとオレのこと喋ってんじゃねぇよ…このバカ!」

 ハクト    「バカバカ言わないでよ!だってこんなトゲトゲのいっぱいついたムチで『ピシッ!』とかやられて…喋らなきゃしょうがないじゃない!」

 ジュウベエ  「しょうがないのはお前の根性だ!」

 ハクト    「『根性』なんて乙女に必要ないもの!」

 イサナ    「あああーもう!うるさい!兄妹喧嘩は後でやりなさい!しかもくだらない」

 ハクト・ジュウベエ 「あ……はい」

 カバネマル  「さぁ、己の立場が判ったら大人しく刀を捨てろ、ジュウベエ」

 イミベ    「そしてお前の持つ『王の証』を渡すがよい」

 ジュウベエ  「『王の証』だと…?」

 イミベ    「しらばっくれるな、マガ王の化身よ。お前が三つに分けられた『王の証』の一つを持っていることなどは先刻承知。大人しく渡せばこの娘の命だけは助けてやる。逆らえば…」

 ジュウベエ  「逆らえば?」

 カバネマル  「知れたこと。聴くだけ野暮というものよ!」

 ハクト    「(槍を突きつけられ)ああぁっ!」

 ジュウベエ  「だろうな。あぁあ…まったく。バカ妹持つと苦労するわ」

 ハクト    「ダメ!ダメよ兄様!渡しちゃダメ!私を助けなきゃダメだけど渡しちゃダメ!私を無傷で引き渡すように持ちかけて尚かつ『王の証』も渡しちゃダメ!」

 イサナ    「人質として類稀なる才能を持ってるわねアナタ」

 ジュウベエ  「まったくお前は!………任せとけ


 ジュウベエ、刀を捨てる。


 カバネマル  「この八方塞がりの状況で、一体お前に何を任せろと言うのかな?」


 カバネマル、ムシハミ兵ら、ジュウベエをじりじりと追い詰める。


 ハクト    「兄様!」

 ジュウベエ  「確かに一見、八方塞がりかも知れねぇ…が、この指一本でその塞がりに穴あけることぐらい出来るんだぜ(と、人差し指をたてる)」

 カバネマル  「ほう。手品でも見せてくれるというのか?その指で

 ハクト    「手品!?マジ!?見たい!!」

 イサナ    「あぁもう!うるさい!。ちょっとは状況考えなさいアナタは!」

 イミベ    「気をつけなさいカバネマル。また『念』の力を使うかも知れませんよ?」

 カバネマル  「心得ましてございます。お任せを」


 カバネマル、ムシハミ兵らジュウベエに襲いかかる。

 かわすジュウベエ。カバネマルの懐に入り込み、眼前に立てた指を突きつけたじろがせる。


 カバネマル  「ぐっ!」


 ジュウベエ、再び斬りかかるカバネマルをいなし、間合をとる。


 カバネマル  「むっ!?カゼの念か!?」


 一斉に身構えるカバネマルら。

 高まる緊張感。

 ―おもむろにジュウベエ、腰の袋からケータイを取り出し、立てた指でもってすばやくボタンを押す。


 ジュウベエ  「もしもし?」

 全員     「おおーいっ!!(と、ツッコミ)」

 カバネマル  「ケータイかよ!?お前この状況下でケータイなのかよ!?」

 ジュウベエ  「もしもし?あぁオレオレ。いや、オレオレ詐欺じゃないよ。オレ。ジュウベエ。うん、そう、今やってる。ん、けっこうピンチ。ボチボチ配達よろしく。うん。じゃあな」


 ジュウベエ、ケータイをしまい向き直る。


 ジュウベエ  「あ。(気を取り直して構える)」

 カバネマル  「あ。……じゃない!場の緊張感100%無視しやがって…一言周りに断ってからかけろ!こういう時は!」

 イサナ    「いやいや。そういうことでもないでしょう?」

 カバネマル  「えぇ!?でも自分の心もマナーモードにしておかないと普段から!」

 イサナ    「何を言ってるんですかアナタは?」

 ジュウベエ  「見せろって言うから見せてやったんだろ?この指の力を!」

 イサナ    「指の力って…ただボタン押しただけじゃないこうやって。何事起こすのかとちょっと期待しちゃったわよ」

 ハクト    「本当よ!指先からハトとかウサギとかいっぱい出ると思ったのに!」

 イサナ    「そんな期待はしてない!どんな手品よ!?」

 ジュウベエ  「がっかりするのはまだ早い。このジュウベエ、ご婦人の期待には必ず応える男ですから」

 イサナ    「何ですって?」

 ハクト    「やっぱり出る!?ウサギ?ハト?…ウマとか?マジ!?ウマとか!?(大興奮)」

 カバネマル  「ええいっ!やかましい!ゴチャゴチャゴチャゴチャ下らんことを…このたわけがっ!」


 カバネマル、ハクトの首に刃を突きつける。


 ハクト    「いやあああああぁ!?」

 カバネマル  「しおらしい人質になって、お前を助けようとする男が手も足も出せずに嬲り殺される!そういう場面だろうが今は!」

 ハクト    「ううっ…兄様…ウマを…」

 ジュウベエ  「するってぇと、次の場面は人質とった怪人が、ヒーローにやられるってところか?」

 カバネマル  「誰が怪人だ!さぁ、今度こそ動くなよ?少しでも動けば、この娘の頭と胴体が一瞬にして分かれることになるぞ?」

 ハクト    「いやぁ!兄様!嬲り殺されて私のために!でもその前に手品は見せてぇ!」


 ムシハミ兵、じりじりとジュウベエに迫る。


 カバネマル  「やれいっ!」


 カバネマルの声に応じて、ムシハミ兵らが槍を振り上げる。

 ―ところへ、またもやおもむろに、インターホンの音が鳴る。何事かと見回す一同。

 ハイテンションなデリバリーメイドクリーニングスタッフの声が響く。


 メイド   「お待たせしました、ご主人様。デリバリーメイドクリーニングサービス『シルキ・アゲイン』より参りました」


 勢いよく、メイド服に身を包みメガネをかけた『萌えっ娘』が、モップを手にして飛び込んでくる。

 あぜんとする一同。


 メイド  「ココロを込めてお掃除させて………いやぁぁぁぁああああっ!?ものすごく場違いな状況下にものすごく場違いな格好とテンションで出てきちゃいました!?私!?いやぁぁあ!申し訳ありません!(90度お辞儀)申し訳ありません!(90度お辞儀)一人テンション違って申し訳ありません!」

 カバネマル  「な?なんだ、お前は!?」

 メイド    「え?あ、ですからデリバリーメイドクリーニングスタッフにございますけれども。ご主人様のご用命に従い、お部屋とココロのクリーニングにって…あああっ!申し訳ありません!(90度お辞儀)申し訳ありません!(90度お辞儀)でも、確かに先程なんでしたらお電話頂きまして!…あ、なんでしたら『萌え~』と言っていただいてかまいません!」

 カバネマル  「あ、いや…なんでもいいからさ、さっさと用件済ましてどっか行ってくれるかな?」

 メイド    「あ、はい。スイマセンご主人様」

 カバネマル  「いや、召抱えてはいないけれども」

 メイド    「ええと………うわぁ…ホント、テンション違う…間違ってる~……」


 メイドスタッフ、『テンション違った~』を連呼しながら固まった舞台を横切り、その場にいる者たちの顔を見回す。モップを手に右往左往。

 やがてイサナを見つけ―


 メイド    「あ」

 イサナ    「え?」


 メイドスタッフ、喜び勇んでイサナとハクトの元による。


 メイド    「お待たせしましたご主人様。何なりとお申しつけ下さいませ!(深々とお辞儀)」

 イサナ    「え?…えええぇえっ!?」

 カバネマル  「ちょっとイサナ殿!?」

 イサナ    「ええ?誤解です!」

 メイド    「ココロを込めてご奉仕させていただきます!何度『萌え~』と言っていただいてもかまいません!」

 イサナ   「言わないから。私、女だし。萌えないし」

 メイド   「えいっ!直筆お手紙攻撃!(と、小さな可愛らしい手紙を差し出す)」

 イサナ   「いらないから!」

 男性全員  「萌え~~~!!」

 イサナ   「言ってんじゃないわよ!アンタらはっ!?」

 ハクト   「とりあえずそれでは、書斎の整理から始めてもらおうかな?」

 イサナ   「何、ご主人ぶってんのよアンタ!?」

 ハクト   「え?」

 メイド   「はい!」

 イサナ   「『はい』じゃない!ああぁ~もうっ!………頼んでませんから!!デリバリーメイドスタッフなんて!!」

 メイド   「え?…えええぇっ!?じゃっ…まさか…?」

 イサナ   「はい。間違ってますアナタ。色々と」

 メイド   「(カターン…と、モップを取り落とし)…しまったぁ…またご奉仕先間違った…テンションだけじゃなくてご奉仕先まで間違った……萎え~~~…」

 イサナ   「アンタが『萎え』言うな」

 メイド   「あぁっ!もういいや!お詫びにコレ差し上げます。※(メイド口調やめる)」


 メイドスタッフ、何をお詫びに思ったか、頭飾りとエプロンを外して差し出す。


 イサナ   「いらないわよ!しかも何がもういいのか、コレのどこがお詫びなのか全然分らないから!」

 ハクト   「あ!じゃぁ私欲しい!」

 イサナ   「やかましいっ!」

 メイド   「そう仰らずに受け取って下さい。秋葉原持ってってもらえば、幾ばくかにはなりますから」

 イサナ   「いやいやいやいや……」


 イサナが眉間のしわを押さえている間に、ハクト頭飾りとエプロンを装着させてもらっている。


 イサナ   「…ってアンタ何着せてもっらてんのよ!?」

 ハクト   「(ノリノリで)何なりとお申しつけ下さったりしてみらるればご主人様!」

 イサナ   「敬語どころか日本語すらも危ういから」

 メイド   「本当に申し訳ござりました!」

 イサナ   「アンタもか!?」


 メイドスタッフ、深々とお辞儀して足早にその場を去ろうとする。

 手にしていたモップも邪魔になったので、兵士の一人に手渡す。戸惑う兵士。


 デリバリー  「スイマセンでした。(帰ろうとして振り返り)あっ!そうだそうだ、まだお渡しするものあったんです」

 イサナ    「いえ!もうホントけっこうですから!っていうか勘弁して下さい!…アンタ出てきてから全然ハナシ進んでないから…」

 デリバリー  「そう仰らないで受け取って下さい。大したもんじゃないですから…えっと…」


 ―と、メイドスタッフ、ジャケットの中をまさぐり―


 デリバリー  「こんなんです」

 イサナ    「えっ!?」

 デリバリー  「はぁっ!」


 メイドスタッフ、懐から短刀を取り出し、ハクトを縛ったロープを切る。

 そのスキを利用して、ジュウベエがムシハミ兵をいなす。

 メイドスタッフ、流れでイサナに斬りかかる。イサナ、ハクトから手を放し、攻撃をかわす。

 メイドスタッフ、その間に、ハクトを引き寄せ、ジュウベエと三人、一所に固まる。


 イサナ    「くっ!」

 カバネマル  「おのれキサマ!ただのデリバリーメイドクリーニングスタッフじゃないな!?」

 デリバリー  「今更言ってて恥ずかしくない?そういうセリフ」

 ジュウベエ  「ずいぶんと遅かったじゃねぇか?」

 デリバリー  「ごめんごめん。衣裳と小道具用意するのに手間取っちゃった」

 イミベ    「お前は…!」


 メイドスタッフ、右手の甲を高らかに掲げ、その手の『マガ王の印』を見せる。


 イミベ    「『マガ王の印』。…ヒ族のナラカ」

 ナラカ    「その通り!アンタら真眼教に弓引く者よ!」


 メイドスタッフ、メガネを外す。メガネの下から―ヒ族のナラカ―が姿を現す。



 ハクト    「ナラカ様!」

 ナラカ    「無事で何より。手荒でごめんね、ハクト」

 カバネマル  「くっ!見事な変装!まったく分らなかった…!」

 ナラカ    「いえいえ、メガネかけてただけですから。恥ずかしい格好もしてますけど」

 ハクト    「大丈夫ですナラカ様!萌え萌えです!私もコレ気に入りました!あ!汚したらイヤだからちょっとしまってきますね!(と、ハクトエプロンを片付けにはける)」

 ナラカ    「え?あ!ちょっとハクト!?(と、ハクトの後を追う。※舞台袖にて衣裳早がえ)」

 カバネマル  「むうっ!?逃がすかぁ!」


 カバネマル、兵ら、ナラカらの後を追おうと斬りかかる。


 ジュウベエ  「おおっと!」


 そのカバネマルらをジュウベエ一人で引き受ける。


 ところへ、使いこまれた戦装束に着替えたナラカがエプロン・頭飾りを片付けたハクトを連れて戻ってくる。流れるように白刃ひしめく只中に入りこみ、ジュウベエとの見事なコンビネーションで、カバネマルらをいなす。


 イサナ    「マガ王の三化身の二人までも一度に姿を現わすなんて…」

 カバネマル  「かえって誠に好都合!こやつらの持つ『王の証』とその首、そろえて献上すればムシハミ様もお喜びになる!」

 ジュウベエ  「だから言ってんだろ?この首はそんな安いもんじゃねぇんだよ!」

 ナラカ    「『王の証』もね。ヒ族の皆のために、アタシが次のマガ王になる!」

 ジュウベエ  「―か、どうかはまだ判んねぇけどな!このオレも一応、マガ王の座狙ってるからな」

 ナラカ    「ウルサイな!分かってるわよ」

 ジュウベエ  「主張するとこはしとかねぇとな!」

 イミベ    「愚かな。小族が二つ手を組んだところで、揺らぐような我らだと思うか?」

 ジュウベエ  「おっとっとっと!」

 ナラカ    「その小族に、『マガ王の化身』が二人いるってことをお忘れですか?」

 ジュウベエ  「あんたらの大教祖、ムシハミと同等の力を持つ二人がね!」

 イミベ    「……!」

 カバネマル  「雑草ごときが思い上がりおって…ムシハミ様と貴様らでは、シクラメンとヨモギほどの違いがある!ガーデニングをなめるな!」

 ナラカ    「全然わかんないのよ!アンタの喩えは!別にガーデニングなめてないし!」

 カバネマル  「一族も二族も関係ない!まとめて刈れば済むことだ!」

 ジュウベエ・ナラカ  「やれるもんならやってみな!」


 ジュウベエ&ナラカ、カバネマルとムシハミ兵ら、入り乱れての素早く激しい攻防。


 ナラカ    「心に燃えし赤き炎よ、刃と共に我を助けよ」


 ナラカ、ジュウベエがしたように『念』込める。

 ジュウベエが刀を振るたびにカゼが起こり、ナラカが振ればヒが起こり、辺りが赤くなる。

 ジュウベエ&ナラカ、ムシハミ兵らを斬り捨てる。


 カバネマル  「ぬうっ!『ヒ』の『念』か!?」

 ナラカ    「下手に触ると言葉のアヤでなく本当に火傷するわよ?」

 ジュウベエ  「さぁ、今日こそはその首、頂きましょうか?」

 ジュウベエ・ナラカ  「真眼教幹部・イミベ宣教長様」

 イミベ    「私の首?」

 ジュウベエ  「こっちもガキの使いじゃねぇんだ。オレらが手を組んだ挨拶するためだけに、ノコノコ姿現したわけじゃねぇぜ」

 ナラカ    「イキナリ大将の首よこせと言わないところが、奥ゆかしいでしょ?」

 ジュウベエ  「アンタはムシハミの前哨戦。宣戦布告の狼煙がわりに…」

 ジュウベエ・ナラカ  「アンタの血煙上げさせてもらう!」

 カバネマル  「させぬわ!!」


 斬りかかるジュウベエ&ナラカをカバネマルが一手に引き受け、イミベを守る。


 ジュウベエ  「ちっ!」

 ナラカ    「相変わらず鬱陶しい奴ね!」

 ハクト    「兄様!ナラカ様!私も戦います!」

 ジュウベエ  「やめとけ!相手は並じゃねぇぞ」

 ハクト    「私だって役に立ちたい!」

 ナラカ    「役立つ前に死んじゃったら元も子もないでしょ?」

 ハクト    「でも!」

 ジュウベエ・ナラカ  「はぁ!」


 ジュウベエ&ナラカとカバネマルの素早い攻防。

 次第に手数で圧倒し、カバネマルを追い詰める二人。


 カバネマル  「ぐっ!おのれ!」

 ジュウベエ  「くらえ!」

 ハクト    「いやああああああぁっ!」


 ジュウベエが一太刀浴びせようとするより一瞬早く、ハクトが奇声を発しながら突っ込んで行く。


 ハクト    「えいっ!」

 ジュウベエ  「あぶねっ!」


 ハクト、カバネマルよりもむしろジュウベエよりに刀を振り下ろしてしまう。

 

 ハクトの動きに気を取られたスキに、カバネマルがナラカとジュウベエを弾き飛ばす。

 一人残るハクト。


 カバネマルと目が合う。一瞬、間があって思い出したように斬りかかるハクト。あえなく弾かれる。


 ハクト    「…ん!やぁっ!…きゃぁああああっ!」


 ハクト、刀を上段に振り上げたまま、弾かれた勢いでジュウベエの元まで走りより、再び勢い良く刀を振り下ろす。


 ハクト    「…うぉりゃあ!はぁ!やぁっ!たぁっ!(そのまま数回鋭くジュウベエに斬りかかる)」

 ジュウベエ  「おいっ!?ちょっと待て!待てって!」

 ハクト    「やぁっ!」

 ジュウベエ  「あうっ!?」


 ハクト、ジュウベエの肛門を貫く。


 ジュウベエ  「…こら!(ハクトを小突く)」

 ハクト    「痛っ!…あれ?」

 ジュウベエ  「あれ?じゃねぇよこのバカ!オレの命狙ってどうすんだよ!?」

 ハクト    「ゴメンナサイ!くそぉ今度こそ!」

 ジュウベエ  「もういいから動くなお前は!すみっこで息だけしてろ!」

 ハクト    「そんな植物みたいな!?光合成なんてできない!」

 ナラカ    「アンタだったら出来るわよ。大丈夫」

 ハクト    「ホントですか!?よぉし!葉緑体よ…!」


 業を煮やしてカバネマルが斬りかかる。再び素早い攻防。隅っこで、うんうん唸りながら葉緑体に呼びかけなんとか光合成しようとするハクト。

 ハクト不在のおかげで、今度はうまくカバネマルをいなして一太刀ずつ浴びせるジュウベエ&ナラカ。

 カバネマルがひるんだスキに、目を見交わし、同時にイミベに斬りかかる二人。


 イミベ    「…!」

 ジュウベエ・ナラカ  「もらったぁ!!」

 イサナ    「イミベ様!」


 刀を避け、反射的にしゃがみ込むイミベ。

 ―鋭い金属と金属がぶつかり合う音。

 二人が勢い良く振り下ろした太刀は、イミベに達する10センチ手前でとまっている。


 イミベ    「…!?」

 ジュウベエ  「ぐっ…なんだ!?」

 ナラカ    「刀が…動かない!?」


 いっそう力を込める二人。だが刀は前には動かない。それどころか、なにか強い『力』でもって二人の刀が徐々にイミベから遠ざかってゆく。


 不意にその力が消え、前にのめる二人。次の瞬間、弾かれたように吹き飛ぶ二人。


 ジュ・ナラ  「うわぁあああっ!?」

 ハクト    「兄様!?(ジュウベエの元に駆け寄る)」

 イサナ    「…これは?イミベ様!(イミベを助け起こす)」

 ナラカ    「くっ…そぉ…」

 ジュウベエ  「何…だってんだぁ…?」


 立ち上がろうとした二人に再び衝撃がいくつも走る。強い『何か』が四方八方から二人の身体を滅多打ちにする。


 ジュウベエ  「ぐっ!」

 ナラカ    「きゃぁっ!」

 ハクト    「兄様!ナラカ様!?」


 羽虫の群が飛ぶ音が聞こえてくる。徐々にその音は大きく、とてつもない数の虫を思わせる音になる。


 ナラカ    「なに…?」

 ハクト    「…虫?」

 カバネマル  「おおっ!この聖なる音は!」

 イミ・イサ・カバネ  「ムシハミ様!!」


 一層強くなる羽音。―が、すぐにその音は消える。

 

 真眼教大教祖 ムシハミが現れる。傍らには真眼教の巫女 ミタマとアラダマの双子がいる。

 ひざまずき頭をたれる真眼教の一同。ムシハミの顔には怪しげな笑みが浮かんでいる。


 ジュウベエ  「テメェは…!」

 ナラカ    「まさか出てくるとはね…!」

 ムシハミ   「オン アビラ ジュオン ソンケン オン アビラ ジュオン ソンケン…」

 ミタマ    「『三つに分けられしマガ王の証』」

 アラダマ   「『一つは女が』」

 ミタマ    「『一つは男が』」

 アラダマ   「『残る一つは別の世界より来たりし者が授かる』」

 ミタ・アラ  「『分かれし証が再び一つに合わさる時』」

 ムシハミ   「『大いなるマガ王の力、解き放たれん』こんにちは!ジュウベエさん、ナラカさん。伝説が現実になる時が近付いてますね?ご機嫌いかがですか?」


 それまでの荘厳な出を、ぶち壊すようにフランクに話すムシハミ。


 ナラカ    「くっ…相変わらず緊張感のカケラもない」

 ジュウベエ  「あぁ。正直ハラ立つわ。もうちょっと教祖らしくしろってんだよ」

 ムシハミ   「いえいえそんな!教祖なんて言っても私、たいした者じゃないですから。もう下から、下からって感じで真眼教は。フランクな方向性で。ねぇミタマ。アラダマ。うふうふふ」

 ジュウベエ  「しかし教祖様直々のお出ましたぁ、随分と珍しいじゃねぇか?」

 ナラカ    「カビ臭い城の中に閉じこもってたんじゃぁ、息苦しくなるものね?」


 ジュウベエ、ナラカ立ち上がり刀を構える。―が、その手はいつになく力み汗ばんでいる。


 ムシハミ   「そうですね。たまには外の空気を吸うのも良いものですね。おかげであなたたち『お友達』にも会えたのですから」

 ジュウベエ  「けっ!勝手に友達呼ばわりするんじゃねぇや」

 ナラカ    「アタシの友達の選考基準は高いのよ」

 ハクト    「そうよ!キモイのよアナタ!!」

 ムシハミ   「キモイって言わないで下さい!それだけは許しませんよ!(ものすごくキレル)」

 ハクト    「ひっ!?」

 ムシハミ   「と、失礼。どうもすいません。取り乱しました。ですがその言葉だけはやめて下さい。深く傷つきます」

 ナラカ    「なんなんだか…」

 ムシハミ   「私達はこの世にたった三人しかいない『マガ王の化身』。それ!…仲良くしましょう」


 ムシハミ、右手の甲に刻まれた『マガ王の印』を眼前に掲げる。


 ミタマ    「同じ印」

 アラダマ   「三つに分かれた一つの魂」

 ジュウベエ  「やなこった!テメェみたいな奴とは仲良くできねぇよ!」

 ナラカ    「そういうこと!…気をつけてジュウベエ。アイツの『念』の力が何なのかわからない」

 ジュウベエ  「あぁ。相変わらずおかしな力使いやがる。飛ばしてゆくぞ、ナラカ!」

 ナラカ    「了解!」

 ハクト    「兄様!」

 ジュウベエ  「今度はチャチャ入れんな。守りきる自信ねぇぞ?」


 ジュウベエ、ナラカ、刀を構え直す。

 カバネマルが応じて構える。それをミタマ・アラダマが制し、ムシハミが前に出る。


 ムシハミ   「不思議なことなんて何も無いですから。ただ『真の眼』で見れば全てわかります。見えないのは、失礼ながらお二人の眼が未だ曇っているからですね。どうでしょう?つけるだけで『真の眼』を開けるヘッドギア型メガネってのがあるんですが…」

 ナラカ    「けっこうよ!アタシは、見たいものはちゃんと見えてる!」

 ジュウベエ  「自分の眼でな!」

 ムシハミ   「やれやれ。真の眼で見るとは、この両の眼で見るということだけではないんですよ?…仕方ありませんねぇ…」


 ムシハミ、斬りかかる二人をいなし静かに手を振る。

 ジュウベエ・ナラカ、またもや何かに弾かれて吹き飛ぶ。


 ジュウベエ  「ぐっ!『カゼ』よ!」


 ジュウベエ、『念』の力でカゼを伴って斬りかかる。

 ムシハミ、その太刀筋に合わせて手をかざす。すると、ジュウベエの攻撃は悉くムシハミから逸れる。


 ジュウベエ  「なにぃ!?」

 ムシハミ   「残念。アナタの『念』はカゼを裂くカマイタチのようなもの」


 カゼの一撃。かわすムシハミ。


 ムシハミ   「直線的な攻撃は軌道さえ見切れば当たることはありません」

 ナラカ    「スキあり!」


 ナラカ、一瞬のスキを突いてムシハミの背後から斬りかかる。―が、見切ってムシハミかわす。


 ムシハミ   「アナタの力も同じこと。いくらヒの『念』を振り撒こうと当たらなければただの花火と代わりません」

 ナラカ    「くそっ!」

 ムシハミ   「今度はこちらから参ります!」


 ムシハミ、ゆるりと両手を広げ、『念』を込める。その手で素早く空を切る。

 ―と、ジュウベエ・ナラカをあらゆる方向から衝撃が襲う。滅多打ちにされる二人。


 ハクト    「兄様!ナラカ様! 」

 ジュウベエ  「バカ!動くな!」

 ハクト    「このキモ教祖め!」

 ムシハミ   「うばぁっ!」

 ハクト    「きゃぁっ!」


 衝撃波がハクトの顔面をとらえる。弾け飛び、回転して倒れ気を失うハクト。


 ジュウベエ  「ハクト!」

 ムシハミ   「キモイという言葉は許さないと言ったでしょう?」

 ナラカ    「くそ…『念』の力さえ分かれば…!」

 ムシハミ   「何度来ようと同じ事です。真の眼で見ることを拒んでいる間は…ね?」

 ミタマ    「さぁ大人しく『王の証』を渡しなさい」

 アラダマ   「そして真眼教に帰順なさい」

 ミタマ・アラダマ  「さすれば命までは取りはせぬ」

 ムシハミ   「いかがでしょう?強情を張りつづけても事は進展しませんよ?素直に従って頂ければ痛いこともありませんし」

 ジュウベエ  「天地がひっくり返っても御免だね…」

 ナラカ    「次の『王』にはアタシがならなきゃいけないんだから…!」

 ムシハミ   「そうですか…では仕方ありませんね。………強情を張り続けて死ぬとなれば、お二人の私を呪う想いもさぞ強くなることでしょう。その想いが深く強いほどに、私はより強き『マガ王』となれる…ではしっかりと私を呪って死ぬがいい!」


 ムシハミ、手をかざす。ジュウベエ・ナラカ、打ちのめされその場に倒れ込む。

 

 不適に笑うムシハミ。目を伏せるイサナ。ムシハミ、カバネマルに目配せして、ジュウベエらに背を向ける。


 ジュウベエ  「くそぅ…!」

 ナラカ    「くっ…!」

 カバネマル  「終わりだな。苦しみ呪いながら死ねるように、少しずつその身体を刻んでやろう」

 ハクト    「にぃ…さま…」

 カバネマル  「心配するな。後からお前も送ってやる。…覚悟!」


 カバネマル、ジュウベエの首を切り落とそうと槍を振り上げる。

 ―そこへ男が一人飛び込んでくる。トキヲだ。

 ジュウベエの首に振り下ろされる寸前のところで、トキヲがカバネマルの槍を素手で受け止める。


 カバネマル  「なっ!?」


 槍を弾き、熟練された体さばきでカバネマルを翻弄し、一撃ケリを入れる。ジュウベエの刀を拾う。だが、なぜか目はうつろである。


 カバネマル  「ぐっ!なんだキサマはっ!?邪魔するなら…殺す!」


 怒り心頭。カバネマル、トキヲに斬りかかる。ミタマ・アラダマも懐剣を抜き構える。―が、トキヲはそれを軽々といなし、回転して遠心力のついた横薙ぎの一閃をムシハミに浴びせ掛ける。(この間に、ジュウベエ・ナラカはよけている)

 

 しかし、その攻撃もムシハミの不思議な力でもって片手で止められてしまう。

 一瞬、『場』が固まる。


 ムシハミ   「アナタは…?」


 トキヲ、斬りかかったときとは逆回転して間合いをとる。

 身構えるカバネマルら。


 トキヲ、おもむろに腰のホルダーから拳銃を抜き、構える。


 全員  「ん!?」


 たて続けに二発。ミタマ・アラダマの持つ懐剣めがけて発砲するトキヲ。

 ミタマ・アラダマ、懐剣を弾かれ、呆然とする。


 ミタ・アラ  「…え?」

 ジュウベエ  「なんだぁ、今の?」

 ナラカ    「『念』の力…?」


 トキヲ、ゆっくりと銃口をムシハミに向ける。


 カバネマル  「お下がりくださいムシハミ様!」


 トキヲ、引き金を引く。反射的に身構えたカバネマルの槍に当たり、槍ごと弾かれ尻餅をつくカバネマル。

 トキヲもう一度狙いをムシハミに合わせ、撃鉄ひく。


 イサナ    「…!」

 イミベ    「ムシハミ様!」


 ムシハミ、かばおうとしたイミベを制し、トキヲの方に歩み寄る。


 ムシハミ  「初めまして。このマガハラではお見かけしない方ですね。私はムシハミと申します。アナタはどなたですか?」


 トキヲ、無言で引き金を引こうとする。

 それより一瞬早く、ムシハミが手をかざし、力を使う。銃口を逸らされ、あらぬ方向に発砲するトキヲ。


 イミベ   「ムシハミ様!」

 ムシハミ  「問答無用で攻撃。これはまた随分と好戦的な方だ。しかも、面白い『念』を使いますね」


 トキヲ、刀を構える。応じて、カバネマルらも構える。


 イミベ    「…ムシハミ様!ここは一度…」

 ムシハミ   「退けと?この私に」

 イミベ    「はい!相手の『念』が未知のモノである以上、下手に事を構えるのは得策ではありません」

 カバネマル  「しかしこやつらをこのまま放っておくのは!」

 イミベ    「功を焦って、その命までも落としたいのですか、カバネマル?」

 カバネマル  「くっ!」

 ムシハミ   「…いいでしょう。ここはアナタの言葉に耳を貸しましょう、イミベ」

 イミベ    「ありがとうございます」

 ムシハミ   「突然現れたお方。せめてお教えて下さい。お名前は何と?」

 トキヲ    「………。(刀を構え直す)」

 ムシハミ   「黙して語らず。ストイックな態度ですね。嫌いじゃないですよ、そういうの。覚えておきます、アナタのこと」

 ミタマ・アラダマ  「その眼、その顔、その姿、覚えたぞ」

 カバネマル  「ジュウベエ!ナラカ!キサマらの首、この次はかならず刎ねてやるからな!楽しみにしておくが良い!」

 イサナ    「………」

 ムシハミ   「またお会いしましょうジュウベエさん、ナラカさん。そして『新たなお友達』も。ご機嫌よう。…オン アビラ ジュオン ソンケン マイラ!」

 ジュウベエ  「くっ!待てこらぁ!」


 ムシハミ、呪文を唱え両手を広げる。すると、羽虫の羽音が辺りをつつむ。ひるむジュウベエ。その間にムシハミら、消えている。


 ジュウベエ  「くそっ…!もうちょっとだったのに!」

 ナラカ    「負け惜しみ言ってんじゃないの」


 ムシハミを見送り、刀と銃を納めるトキヲ。

 ナラカ、立ち上がり、ハクトを抱え起こす。


 ナラカ    「ハクト!…ハクト!」

 ハクト    「…ん…葉緑体が!葉緑体がっ!」

 ナラカ    「良かった…何夢みてるかわからないけど」

 ジュウベエ  「すまねぇ。おかげで助かったぜ。しかしアンタは一体…?」


 トキヲ、ゆっくりと振り返る。やはり目は虚ろなままだ。


 ―おもむろにケータイの着信音が鳴る。(言い忘れたが、ケータイの着信音は、リアルなレベルが好ましい。客席のお客さんが一瞬ドキっとするような)

 

 トキヲ、ケータイを取り出す。


 ジュウベエ  「それは!?」

 ナラカ    「ケータイ?しかもそんなハッキリとした形…。あなたも念話を!?」


 トキヲ、ケータイから聞こえた何事かの言葉に反応して、その場にバッタリと倒れ込む。


 ナラカ    「なに!?」

 ジュウベエ  「おい!?どうしたイキナリ!?おいっ!?」


 ジュウベエ、トキヲを揺さぶるが反応はない。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


第三場へ続く

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