右脚無回転枠外シュート
あまりにも憂鬱なので文章を書こうと思った次第。才能がないのは薄々勘づいている。まだ誰かに小バカにされたりといった決定的な事態は免れているので、一縷の望みにかけている。そんな僕が、上手く取り繕っても才能のなさを益々露呈させることになりかねない。素直に、書きたいことを書くことにする。
僕が、中学生の時の話だ。
南アフリカワールドカップの熱狂さめやらぬ時期のこと。
クラスに学校に来なくなった生徒がいるということで、急遽クラス会議たるものが開かれた。
教壇の前に学年主任の先生が立ち、僕たちに質問を投げかけていた。それに順番に一人一人がこたえていく。
その質問が、「不登校の生徒が学校に来ることを僕たちは望むかあるいは望まないか」というものだった。
「マジか」と思った。質問の意味が、わからなかった。
そもそもなぜ不登校になったのか僕は知らない。先生もその時は何も言わなかった。正直どうでもよかった。
そんなことより僕は、すぐさま体育館に出向き南アフリカワールドカップを彷彿とさせる本田圭佑さながらの無回転シュートを敵陣のゴールネットにおみまいしたくてしかたがなかった。右脚全体が、それを望んでいた。震えていた。
右脚をなだめすかしている間に、僕に質問の順番がまわっきた。
僕は、先生の顔をサッカーボールに見立てて
「そんなことより、4年後のワールドカップを見据えて対策を練る方がよっぽど有意義でしょう。」と言った。
放課後、耳がちぎれんばかりの小言を烈火の如く浴びせられたため、耳が痛かった。
「ブブゼラか!」と一人でツッコミ、案外悪くないツッコミだと気付きニヤついた。