第四回 どのように書けば面白くなるのか。
では侍魂のように改行を多用して、結末をつければ面白くなるかと言えばそうではありません。小手先の技術ではないのです。
そもそもどういう場面で人間は笑うのでしょう? 喜劇を根本的に捉えてみましょう。さまざまな喜劇論が出版され、また、漫才、落語などがテレビでは放映されていますが、予想との落差が大きいと笑いが生じると僕は思っています。つまり読者はこのように予想するだろう、ということを踏まえて書かなければ面白いものとは言えないのです。そして面白くなければ他人は素人の小説など読みません。
これは喜劇ばかりではなく、小説全般に言えることです。例えばショートショートの神様、星新一は風刺的。しかし、それ以上に読者の予想をいい意味で裏切るのです。
そしてこれは普段から目を皿のようにして〈現実世界〉を眺めなければいけない、と思っています。そのための一番の近道は読書です。
よく四大元素という世界観がファンタジーで定番ですが、その多くはアリストテレスに由来しています。しかもアリストテレスはただ火、水、風、土を四大元素に指定したわけではありません。湿度、温度も考慮に入れているのです。「原理的に考えることこそが創作家にとっていちばん重要な資質」だと言いましたが、『形而上学』を読んだことはありますか?
アリストテレスが四大元素説を唱えている『形而上学』を紐解いてみると、むしろ哲学史のような印象を受けます。タレスなどの名だたるミレトス学派の名前が紹介されているのです。彼らは根本的に自然世界を、現実世界を見つめていました。
僕たち創作家が学ぶべきなのは表面的な知識ではなく、むしろ彼らの根本的に世界を見つめる姿勢です。そして独自の世界観が作られる時、真の意味で面白いものが産まれると信じています。