第一回 創作の基本は乱読にあり
少なくとも自作の小説を発表している人には、読書がいかに重要か解ったと思います。語彙力はもちろん、表現方法、構成力、人物造形、思想性など創作の全ての源が詰まっているのですから。
もちろんインターネット小説にも素晴らしい作品がありますが、その大多数は当然ながら素人です。素人の作品をいくら読んでも素人の域を出ません。趣味での執筆、作家同士の交流が目的なら大いに楽しみましょう。
しかし、読んで欲しいと少しでも思うのであれば、プロの作家の文章を読まなければいけません。したがって、「ワナビのための読書入門」を読むよりかはプロの創作論を読むことをお勧めします。
創作論は手軽なハウツー本から大江健三郎『新しい文学のために』(岩波書店)、大塚英志『キャラクター小説の作り方』等が出ています。しかし手軽なハウツー本はあまりお勧めしません。ここまで読んだなら解ると思いますが、手軽さこそが唾棄すべき敵です。
そのような点を踏まえれば
・高橋源一郎『一億三千万人のための小説教室』(岩波書店)
が群を抜いて秀でています。この本は身銭を切っても損はありません。鳴かず飛ばずのワナビが書いたこの創作論を閉じてAmazonへアクセスしましょう。さぁ! 今すぐに!
それでも僕の創作論を興味を持ったなら、乱読を勧めます。マンガ、新聞、エッセイ・評論、近代詩、俳句、短歌、女性週刊誌、挙句の果てにはスナック菓子の成分表示に至るまでできるだけ多くの活字を吸収するに越したことはありません。
活字だけではなく、音楽、絵画、映画などの芸術。そして多くの人との対話。つまり人生の全てが創作に活きてくるのです。
例えば原田マハの小説には絵画が、村上春樹の小説には音楽が、よく登場しています。そして独自の世界観を構築しているのです。
理解したらウィンドウを閉じて、図書館に行きましょう。可及的速やかに。
それでも僕の創作論を読みたいのなら、「乱読」を勧める理由は二つあります。
1)赤川次郎は600冊以上本を書いていますが、彼の作品ばかり読んでいては、赤川次郎と同じ作品しか生み出せません。異世界転生物ばかり読んでいても異世界転生物しか産まれません。
2)創作で行き詰まることもあるでしょう。具体的にどこで悩んでいるのか解れば、調べるなどをして対応策が立てられます。しかし、創作ではほとんどが言語化できません。ふとしたきっかけで悩みが解決することが大半です。
乱読し続けることでこのような創作の漠然とした行き詰まりへの解決への道筋を立てることができるのです。例えば中世を舞台に剣と魔法のファンタジーを書きたいなら、常日頃から中世の事情について調べたり、プロのファンタジー作品を読んだりすることが望ましいのです。




