お菓子を作りましょ♪
狐火さんが部下さんを連れてきた日の昼間、僕はとある疑問を持ちながらも、小人さん軍団と共にお菓子作りに励んでいた。
とある疑問とはですね……狐火さんは、食事の時もずっと狐の面をつけているのに、ご飯を食べれていることなの。でも、あの人にとっては……このぐらいは朝飯前なんだ。
だから、深く考えたところで、考えれば考えるほど……思考と言うアリ地獄に埋まっていくだけなんだよ。でも、それをわかっていたとしても……あの人は謎が多すぎて、気になってしまうんだ。
妖怪なのに、なんで警察で働いてるのとか……。
狐の面の下の顔は、どうなっているのとか……。
狐の面をつけているのに、どうして食事が出来てしまうんだろうとか……。
と、思ったりするけど、あえて聞こうとはしなかった。だって、聞いたところできっと……教えてくれないもの。「秘密」って、狐火さんに言われてしまえば、何故か納得してしまうし……きっと、一生知ることの出来ない疑問なんだろうって、僕はそう思ってる。
世の中には知らない方が良いこともあると、僕は聞いたことがある。だから、きっと……このことは知らない方が良いことなんだって割りきれるようになったんだよ。
「小人さんたち、料理はほんの少しでも分量を間違えると味が変わってしまいます。丁寧に、はかってくださいね」
と、僕がにこやかにそう言うと、小人さん軍団は歯を見せてニカッと笑ってから、働き者の蟻のように小人さん軍団は働く。彼らはとても働き者で丁寧な仕事ぶりだし、一生懸命になってお菓子の材料の分量をはかってくれた。
意外と、几帳面な小人さん軍団なのだ。真剣になって、お菓子作りに集中している。小人さん軍団は、とてもパティシエに向いているのかもしれない。
僕と小人さん軍団は、マスクをつけながらたくさんの種類のお菓子を作っていた。明日は、バレンタインデーだ。甘いものが大好きな妖怪たちが集まるかもしれないからね。
僕はそう考えながら、小人さん軍団に出来た順に冷蔵庫に入れるように指示をすると、一斉に敬礼をしてから、冷蔵庫に工夫していれていく。
そんな健気な小人さん軍団に、癒された後にティラミスを作り終わらせた。ティラミスはさすがに、運ばせるのは可哀想なので、僕が入れましたが。
「明日が楽しみなのです。たくさんお菓子を頬に、頬張りたいと思います」
「ボクたち、たくさんお手伝いしましたよ? 明日が楽しみなのですぅ!」
僕は、彼らのような……生き生きとした心に戻れたのは、何歳の頃だったか。……多分、妖怪さんたちが面倒を見てくれるようになってからすぐのことだったと僕は、思っている。
僕のことで、妖怪さんたちは陰陽師と言い争っていたんだ。でも、彼らは僕のために、敵対するはずの陰陽師に頭を下げた。その妖怪さんたちに、陰陽師たちは心が動いたのかはわからないけれど、お互いに条件を出しあって休戦してくれたのだ。その時、僕は凄く妖怪さんに大切にされているんだなって思った。
その後、すぐに僕は皆のために何が出来るんだろうって考えて、何かお礼がしたくて……料理もしたことないのに料理を皆に作ったんだ。
皆は、不味い不味いと言いながら笑顔で、全部残さずに食べてくれたんだ。その時、僕は皆に美味しい料理を食べさせてあげたいと思った。
だから僕は料理の勉強をしたし、僕の周りには、優しい妖怪しかいなかったけど……中には、人を喰らうヤツがいると聞いて、皆を悲しませないように自分の身を守るために旅人の魔法使いに弟子になって魔法を教わった。
そんなある日、現世と妖怪世界の境界線に穴があいた。だから、僕は師匠と協力をして……境界線に穴があいた場所に扉を創った。その扉を守る……そんなきっかけで、喫茶店を開きたいと妖怪さん皆には言ったけど、本当は皆の集う場所が作りたくて……喫茶店を開いたんだよ。
「小人さん軍団たち、ありがとうね。明日は名一杯、お菓子を皆で食べましょうね。」
「み〜ん〜なで、食べるお〜か〜しは美味しいの♪」
と、僕の言葉にピョンコピョンコと6センチくらいの小さな体で、小人さん軍団は全身で喜びを表現しながら、歌っていた。
「そうですね、皆で食べると……とても美味しいですよね、小人さん軍団」
ピョンコピョンコと跳ね回る小人さん軍団を微笑みながら、眺めて僕はそう言ったのだった……。