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水晶のかんざし

 はじめまして、町外れにある喫茶店『狐火』の店主の栗野時雨(くりのしぐれ)、20歳です。

 お客さんは、少ないものの一風『変わった』常連さんのおかげで、僕が食べていく程度は問題はないくらいの稼ぎは出来ている。

 まあ、この喫茶店の仕事は《表》上の仕事なので、売れなくとも《裏》の仕事は結構、儲かっているので問題は無いのだけど。

 と、考えているうちにドアが開くと同時に鳴り響く鈴の音を聞いて、僕は満面の笑みでお客さんを迎え入れる。


「ようこそいらっしゃいました。喫茶店『狐火』へ!! 席に案内致します」


 このお客さんは、人間の方のようだ……。迷いこんでしまったのか、それとも……。


「あ、あの! 狐火さんのご紹介で、来たのですが……栗野時雨さんで間違えありませんか……?」


 僕は、ニコリとお客さんへと怪しく微笑んでから、コクリと力強く頷いた後、僕は彼女にこう言った。


「はい、僕が栗野時雨です。間違えありません。ここでは、話しづらいでしょうから……店の奥へとお入りになって下さい」


 僕は、そう言ってから一度喫茶店の外に出て、openとなっていた看板をcloseに変えてから、お客さんを客間へと案内した。


「狐火さんも、たまには顔出しに来てくれても良いでしょうに……」


 と、僕は蚊の鳴くような小さな声でそう呟きながら……。



 お客さんを客間へと案内したと同時に、客間に住み着いている小人さん軍団が彼女に、『どんな飲み物が好き?』と可愛らしく首を傾げながら、聞いていた。小人さんのあまりの可愛さに、僕はそのうちの1人をつまんで、手のひらに乗っけて小人さんを人差し指で撫でまくる。

 僕に撫でられている小人さん軍団の1人はふにゃぁ〜、はにゃぁ〜……と言いながら、大人しく僕に撫でられていた。

 僕がその小人さんを撫でているうちに、お客さんにお茶を入れ終わったのか、小人さん軍団は僕がいる時の定位置についた。

 僕はそれを合図に、微笑ましそうに、にこやかに笑うお客さんにどのような用事で来られたのかを確かめるために、彼女に話をきりだした。


「あの、今回はどのようなご依頼でここにこられたのでしょうか……? それと、お名前とご年齢をお聞きしても?」

「は、はい! 私は、木月早月、15歳です。これを……見て欲しいのです」


 と、僕の質問にどもりながらもそう答えてから、鞄の中から何かを探している、依頼人の早月さま。

 僕はそんな早月さまを慌てさせないように、にこやかに営業スマイルをしながら彼女が何かを出すのを待っていた。

 数分後……、彼女は鞄の中から今回の依頼品を取り出して、僕と小人さん軍団の目の前に差し出した。僕は、手のひらサイズの桐箱を開くとそこには……


「ほう……、思わず見惚れてしまうほどの綺麗な水晶のかんざしですね」

「そうなんです、そうなんですが……でも、そのかんざし、人を選ぶんです。私とか母がつけるといつの間にか、たんすに戻っているんです」

「それで、このかんざしがなんか怖いから引き取って欲しいと言うこと……ですか?」


 と、僕が聞くと早月さまは横に数回、首をふってからこう言った。


「多分……私と母ではない、誰かにつけて欲しい人がいるから……きっと、その桐箱に戻っているんだと思うから……、私からの依頼は『その子』が求めている人が現れるまで預かっていて欲しいと言うことなんですが……」


 と、僕は彼女の言葉に妖しく微笑んでから、僕は早月さまにこう言った。


「……あなたが、もう一度、この喫茶店に導かれることを……お祈り致しております。もし、その時が訪れた時に、このかんざしはお返し致しましょう」


「えっ?」


 驚いたような声を早月さまが出した瞬間に、僕は妖しく微笑んでいた笑顔から、にこやかに微笑む笑顔に戻してから、囁くような小さな声でこう言った。


「あなたがここに来るのは、まだ早かったようです。『かんざし』に関わる記憶だけを眠らせて、現世へと戻りなさい……」


 子守唄を歌うような心地のよい声で、僕は早月さまの額を人差し指で数回、つっついた。その後、すぐに早月さまは眠りにつくように意識を失った。


「あなたがまた、ここに導かれるのはいつの日のことになるのでしょうか?」


 と、僕は囁くような小さな声でそう呟いた後、意識を失った早月さまを右腕に座らせるように抱えた。

 その後に、僕が左手を天井に向かってあげると、控えめに輝く扉が現れた。そのまま、左手で霊力で鍵を造り出す。

 天井に向かってあげていた、左手を下へとおろしてから、控えめに輝く扉に鍵を差し込んだ。


 ガチャリと鍵が開いた音がした後に、ゆっくりと扉を僕は開いた。その後、すぐに僕はその扉の中に意識を失ったままの早月さまを入れて、扉を閉めると同時に『扉』と『鍵』は早月さまとともに消えた。


「さて、ここからの仕事はあなたの出番ですよ、狐火さん」


 僕は妖しい笑顔を浮かべて、水晶のかんざしが入っている桐箱を持ちながら、小人さん軍団がいる客間から去っていった。




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