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一五〇七日目
母よ、妹に可愛いを連呼されました。
我の兄としての威厳が崩れかけております。
しばらく、人化の術は使いません。
それは、今日の朝のことだった。
いつものように街へ向かう前、最後に念を押しているときに思いついたのである。
むしろ我が人化して街へ行けばいいのではないか?
確かに十分な経験をつんだ竜とはいえないが、我に母は譲りの知識がある。
町へ向かうヒトを呼びとめ人化の術を試みた。
術は問題なく働いたのだが想像以上に視界が低かった。
ん?ヒトよ、なぜ目を輝かせている?なぜ両の手を突き出しこちらに駆け寄ってくる?
そして、
『カワイ~!なにこれっ?これホントお兄ちゃん!?可愛い!!』
『うわっ、髪の毛サラッサラ、ほっぺぷにぷに~!』
抱き上げられ、撫で回され、抱きしめられ。
へとへとになった我の手を引き、ヒトと共に街中に入ったのだが、出会う人出会う人に撫でられ、抱き上げられ、ヒトはその度我を弟だと紹介し可愛い可愛いと……。
そして冒頭へと戻る。