十五夜
今日はお月見なので書いてみました~
稚拙ですが良かったら読んでください~
俺の名前はギン、竜だ。
しかもただの竜じゃ無い。世界に一匹だけだった始祖竜なのだ!とはいっても今は四匹いるけどね。
俺達始祖竜四兄弟!!
一番上はにーちゃん、名前はまだない。
俺達が正式な名前じゃ無いのに自分だけ名づけることはできない、なんて言ってかたくなに名を考えようともしない。
二番目はねーちゃん、名前はヒト。
人間のように見えるけど竜だ。生まれてすぐに人化の術を使ってにーちゃんを驚かせたらしい。ま、それから竜の姿に戻れないらしいけど。
三番目は俺。
名前はそのまんま銀色の竜だからギン。正式な名前はもっとましになるように祈っている。
四番目はニジ、俺の妹。
一見白い鱗が角度を変えると何色もの光を放つ。俺が唯一兄貴風を吹かせることができるヤツ。
今日は週に一度の休みの日。
俺は丘の上から飛ぶ練習をしていたけど、それにも飽きて地面の上にでろーんと寝そべっていた。
大きくなれば自然と飛べるようになるらしいけど、最近街に買い物に行くようになったねーちゃんの自慢を聞くたびにうらやましくなる。
さて、もっかいやって見ようかな、絶対に早く飛べるようになってやる。
落ちても怪我をしないだろう丁度良い高さの丘に登りきると、ニジが切り株に座って魔術の練習をしているのが見えた。
ニジと俺は同じ日に産まれた。一応俺が兄貴だけど数時間の差でしかないし、体の大きさも同じくらいだ。鱗だって暗いところだと同じような白色に見える。
にーちゃんは体も大きいし、狩りもうまいし、いろいろなことを教えてくれるし、いつも俺達を守ってくれている。
ねーちゃんは人間の姿でヨワッチイけど、おいしいご飯を作ってくれるし、兄ちゃんが知らないようなことも知ってるし、おっかないけど優しいし、あの手で頭を撫でてもらうとほっかりする。
んじゃ俺は?
俺はちゃんとニジの兄貴をしているのだろうか。
『ただいま~』
「今帰った」
今日が五年に一度の双子月の日だと知ったとたんにーちゃんを急かして街に行っていたねーちゃん達が帰ってきた。
「おかえり~」
「お帰りなさーい」
わらわらと駆け寄るとねーちゃんがにっこりと笑った。あれ?なんかやな予感。
「ギン、ニジ、ススキ」
「すすき?」
俺が聞き返すとねーちゃんは地面にガリガリと絵を描き始めた。
なんか、棒?にひょんひょんと何本も糸みたいなのが飛び出て房になっている。
「とってこーい!」
「多分川の近くに生えてる草だ、二匹とも、頼めるか?」
「とってこいないと、ばんめし、なし」
「えぇ!?」
「んな横暴な!」
『十、九、八……』
ねーちゃんの『カウントダウン』が始まり俺達は慌てて川へと向かった
「にーちゃん、ねーちゃん何やってんの?」
「何でも、月を見るときの風習だそうだ」
白く、丸いものを葉っぱの上に山にして、俺達が採ってきたすすき?を飾っている。
『これは月見団子でウサギにお供えするんだよ』
「……ウサギにあげる団子?らしい」
「え、俺たち食べれないの?」
あの後、雲一つ無い夜空に輝く双子月を眺め、一匹づつにーちゃんの背に乗って空を飛び、団子を食べてから皆は眠りについた。
俺は一人、切り株に座って魔術の練習をしている。
集中して、風を集めて……。
ひゅおう!!
「わぷっ!?」
制御が甘かったのか、集めた風は俺の手を離れて小さな竜巻へと変わり、周囲の草を巻き上げた。
「くそう、もう一回」
せめてニジには負けたくない。
浅い考えだとは思うけど、常にニジの前にいることで兄貴っぽくなりたいと思う。
その日、五年に一度の夜。
つたない風の魔術を練習する小さな竜とそれを丘の上から見守る兄竜を、双子月が優しく照らしていた。




