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一三五二〇日目

 母よ、我が住処の付近が最近騒がしくなってまいりました。

 人化の術を使い一番近い人間の街に行ってみたところ、リストルと言う名の国が人間の住む土地を広げるために国土調査とやらをしているそうです。

 正直見つかると面倒なことになりそうですがヒトが戻るまではここを動かないと決めているので、どうしたものかと思案中です。




「おい、君、大丈夫か?」

 ゆすぶられてはっと目を覚ます。

 我にしては珍しく深い眠りに入っていたようだ。

 起き上がると、いかつい顔をして魔力を付与した鉄製の鎧をまとった男達が我の周りを囲んでいた。

「良かった、目を覚ましたか」

 張り詰めていた空気を和らげる男達。

「こちらイジューの森探索三班、倒れていたエルフと思しき少年を保護しました」

 一人が魔道銀製の箱に向かってなにやら話している。

 そいつはちらりと我を見てから、

「はい、見たところ怪我は無いようです」

 どうやらエルフと思しき少年とは我のことで間違いは無いようだ。

 人化した我は深い緑の髪をしているので間違えるのも分からなくは無いが耳は別に長くないぞ?

 街から戻った後に竜に戻るのを忘れていたのは失態だったか?

 いや、竜の姿だったら大騒ぎだろうからこれはこれでよいのか。

「君、お父さんとお母さんは?」

「母は我達を産んですぐ亡くなった。父は知らぬ」

「それは……」

「気にするな、過ぎたことだ」




 この森に三〇年以上住んでいることを伝えると、納得して男達は去っていった。

 近いうちにまた来るらしい、戸籍が云々と言っていた。

 見つかったらどうしようかと悩んでいたはずなのだが、存外あっさりしていたな。

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