第2章〜望編〜最終話〜新たなる旅立ち〜
第1話が掲載されてから1ヶ月ちょっと。希編の最終話になります。読んでいただけると嬉しいです。
11月15日金曜日13時頃。バイト中だったボクの携帯電話が鳴った。
「奥、バイト中はマナーモードにしとかなあかんやろ。まぁ今は作業も落ち着いてるから出てもいいよ。」
「もしもし。」
「浩一くんか?希の容態が急変した。」
「えっ!?マジですか?ちょっと待ってくださいね。・・・課長!前話した彼女の容態が急変したんですけど。」
「わかった。すぐに行ってやれ。昼からはなんとかするから。」
「ありがとうございます。・・・もしもし。じゃあ今から向かいます。」
「今そっちに車で向かってるから。5分くらいで着くと思う。だから店の前で待っといてくれ。」
「分かりました。お願いします。」
その後、職場の他の人に事情を説明して了解をとってから着替えて外に出ると、すでに親父さんが来ていた。
すぐに車に乗り、病院に向かうことにした。
親父さんも仕事を早退して病院に向かう途中にボクを拾ってくれたらしい。
「希ちゃん、そんなに悪かったんですか?」
「決して良くは無かったみたいだけど、そんなすぐに急変するとは思えなかったんだが・・・。」
親父さんも動揺してるみたいだ。
ボク達が店を出てから20分位で病院に到着した。
ボクは希ちゃんの容態を確認するために病院の中を走り(看護婦さん達に怒られながら)病室に飛込んだ。
が、しかし遅かったみたいだ。病室の中では望ちゃんとおふくろさんが泣いていた。
「ついさっき息を引き取った所よ。」
2002年11月15日13時10分。
希ちゃんは16年という短い生涯を終えた。
あまりにも早すぎる死だった。
この時、ボクは希ちゃんに抱きつき、人前にも関わらず泣いた。
人前で涙を見せたのはすごく久しぶりだったようなきがする。
その時、病名も聞いたはずなんだが、気が動転していて記憶に残ってなかった。
それからどれくらい時間がたっただろう。
親父さん達は色々と手続きがあるらしいので、ボクは望ちゃんを家まで送っていく事にした。
帰りのバスは2人とも無言で気まずい雰囲気だった。
何か話さなきゃ、と思っても、何を話せばいいか分からない。
そんな状態が望ちゃんの家まで続いた。
そして、家まで望ちゃんを送り届け、ボクは帰りのバスがあるうちに帰ろうとした。しかし、
「え?お兄ちゃん帰っちゃうの?私、独りじゃ怖いよ。」
望ちゃんも身近な人を亡くしたのが余程ショックだったのだろう、独りは慣れているはずなのにすごく寂しそうだった。
「今日は泊まっていこうよ。」
まぁ明日はバイトが休みだから別に良いんだけど。
一応確認のためにおふくろさんに電話をかけてみた。そして、
「明日バイトが休みならなるべく望のそばにいてあげて。独りだとこっちも不安だから。お願いね。」
という答えが返ってきた。すぐにボクの家に電話をかけて、事情を説明した。
「後はバイト先の課長にも電話しなきゃな。」
土日の連休は難しいだろう。
しかし事情が事情だけに課長も許してくれるだろう。でもそれを望ちゃんが遮った。
「ちょっと待って。」
「???」
ボクは何で止められたか分からなかった。
「前からお姉ちゃんがお兄ちゃんのバイトを優先させて欲しいって言ってた。だから急変するまで連絡しなかったの。だからバイトがあるときはそっちを優先させて。」
「でも・・・。」
「これはお姉ちゃんの遺言なの。だから叶えてあげて。」
そこまで言われたらバイトを優先させないわけにはいかなかった。
「うん、分かった。そこまで言われたらバイトを優先させないわけにはいかないだろ。明日は休みだから問題ないけど日曜はバイトだからバイトに行くよ。」
それが希ちゃんの遺志なら仕方がない。
そんなわけでボクは土曜日の通夜にはでたが日曜日の告別式には出なかった。
しかし、今思えば希ちゃんの遺志といっても、これで良かったのだろうか。
そこだけが疑問に残っている。
いや、良かったんだろう、それでボクは希ちゃんの遺志を果たしたのだから。
それからは3ヶ月に1回。
春と秋の彼岸、盆と年末年始のバイトが休みの日には墓参りに行っている。
墓参りだからと言って休みを取るような事をしていない。
それは希ちゃんを裏切る事になるから。
悲しい別れにはなったけど、これだけ言えるだろう。
〜きっと良かったんだろう、ボク達は巡り会えて。
〜
〜第1章希編〜終わり。
これにて希編終了です。これまで不自然な部分の多いであろう素人の小説を読んでいただきありがとうございました。そしてこれからも望編、また次の小説と頑張っていきますんでよろしくお願い致します。次は望編第1話です。気長にお待ち下さい。