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厄災日記  作者: LOOK Circle


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発動!【雷号作戦】

挿絵(By みてみん)

 爆発は、夜明け前に起きた。


 訓練施設の外縁部。

 空が白く裂け、次の瞬間——地面が跳ね上がった。


「――空襲だッ!!」


 警報が鳴り響く。

 遅れて、二発、三発。

 爆風が建物を揺らし、ガラスが砕け散る。


 イザ・マクシムは床に叩きつけられ、耳鳴りの中で息を呑んだ。


「ターニャ!」


「ここ!生きてる!」


 二人は瓦礫の隙間から這い出した。

 外では、炎と煙。

 守備部隊の詰所が直撃を受け、担架が次々と運ばれていく。


 ——死者、負傷者、多数。


 一般部隊だけではない。

 一部の戦闘兵も、完全に不意を突かれた。


「……訓練所を狙うなんて」


 ターニャが呟く。


 それは、宣戦布告に等しかった。


---


 その日のうちに、帝国軍は結論を出した。


 更なる攻撃は必至。


 敵は、海から来る。


 即応会議の末、発令されたのは

 帝国陸海軍合同作戦。


 作戦名——

 《雷号らいごう迎撃作戦》。


 敵主力、

 蒼洋連合王国・第十八連合艦隊を叩く。


---


 出撃前。

 観測艦《白日》艦内。


「観測兵、準備!」


 イザとターニャは、通信区画に座っていた。


「まさか初陣が海になるとはね」


「……でも、前線よりはマシかも」


「フラグ立てないで」


 二人は短く笑った。


 だが、艦が動き出した瞬間、空気は一変する。


 低く響くエンジン音。

 甲板を叩く波。

 ここは、戦場だ。


---


「敵艦影、北東三五!距離二万!」


 無線が走る。


「第一砲戦配置、維持せよ!」


「雷号作戦、フェーズツー移行!」


 イザは震える指で双眼装置を操作した。


「……見えた。敵艦隊、展開中」


 画面の向こうに、黒い影。

 十八隻規模。

 整然とした陣形。


「——撃て!」


 帝国艦隊の主砲が火を噴いた。


 轟音。

 海面が盛り上がり、遠方で爆炎が咲く。


「命中確認!敵巡洋艦一、損傷!」


「第二斉射、続け!」


 イザの耳に、無線越しの叫びが流れ込む。


『こちら第三戦隊、被弾!だが航行可能!』


『敵雷撃隊、接近中!迎撃急げ!』


 ターニャが叫ぶ。


「右舷、敵駆逐艦!距離詰めてる!」


「伝える、今!」


 イザは必死に報告を叩き込んだ。


「敵艦隊、散開開始!損害中程度!」


 戦闘は、長くは続かなかった。


 敵も、完全な奇襲ではなかった。

 互いに決定打を欠き、海は煙に覆われる。


「雷号作戦、フェーズ終了。

 各艦、後退せよ」


 無線が静かになる。


---


 帰投後。


「……勝った、の?」


 イザが呟く。


「勝ちじゃないわ」


 ターニャは、海を見つめたまま答えた。


「でも、負けでもない」


 敵艦隊に与えた損害は——**中程度**。

 だが、帝国は見せた。


 やられっぱなしでは終わらない、と。


「これが……戦争」


 イザは、初めて実感した。


 陸でも、空でも、海でも。

 命は、等しく軽い。


 そして、戦争終わらせなければ、帰れない。


 少女二人は、静かな海の上で、

 本当の意味で“初陣”を終えた。

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